2005年05月03日
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マジンガーZへの「愛」の表明? ファン側がねじ曲げて進む「子供指向」!?

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

 アニメブーム終末論として書いている一連の文書の中で、マジンガーZという名前は1つの方向性を象徴する名前として使ってきました。(詳細は個々の文書を参照)。

 つまり、これらの文書中で定義した「大人指向」「子供指向」という分類における「子供指向」という傾向の代名詞として使ってしまったところがあります。

 しかし、作品というのは、それほどあっさりと特定の傾向に分類できるものではありません。

 子供指向の特徴として、以下のような項目を示しました。

  • 子供が努力することなく特権的なヒーローの座に着く
  • 日本や地球を巻き込んだ戦いであるにもかかわらず、極少人数の私的な闘争に収束する
  • 私的な闘争に収束する結果、社会や組織の存在感やリアリティが大きく後退する

 このうち、最初の項目がマジンガーZに当てはまることは言うまでもありません。主人公である兜甲児は血筋によって巨大ロボット マジンガーZを使う特権的な権利を手に入れます。

 しかし、2番目と3番目の項目に関しては、必ずしもそうではないという面があります。むしろ、ファンがこれらの項目を成立する方向に作品の公的なイメージをねじ曲げていった、と解釈することすら可能であるように思えます。

 ……というような話を以下に書きます。

お断り §

 ここで取り上げるマジンガーZとは、1972年より放映さたTVアニメ作品を示すものとします。派生作品に登場する同名ロボットや、ゲーム等に登場する同名ロボットは把握し切れていないので、これは対象に含めないとします。

 また、ここに書かれた内容は、本放送当時にリアルタイムで見た記憶等をベースにしているので間違いがあるかもしれません。何か発見された場合はご一報下さい。

マジンガーZのクイズ §

 まず、マジンガーZに関するクイズを2つ出します。

  • 第1問 ボスボロットを作ったのは誰か?
  • 第2問 マジンガーZは光子力研究所のどこから発進するか?

 最近は、情報も流通しているので正解者が多いかもしれませんが、放送当時から比較的近い最近まで、以下のような答が多く聞かれたような気がします。

  • 第1問 答: ボス
  • 第2問 答: プール

 私の記憶に間違いがなければ、正解は以下のようになります。

  • 第1問 答: 三博士
  • 第2問 答: 汚水処理場

 実は、マジンガーZに対する私の感じる憤りの一部は、マジンガーZという作品というよりは、マジンガーZを見るファン側の態度にあります。つまり、いかに作品が作中で様々な情報を語りかけようとも、その多くが多数のファンを素通りしていて、受け止められていないと言うことに、理不尽さを感じていたと言うことです。

組織のリアリティを描くマジンガーZの誠意 §

 マジンガーZという作品の基本的な枠組みは、世界征服を企むドクターヘルの野望を、正義のロボット、マジンガーZが阻止するという形になります。

 しかし、そのような状況は、ドクターヘルとマジンガーZだけいれば成立するものではありません。ドクターヘルが世界征服を企みうるためには、ミケーネ帝国の遺産を独占的に手中に収めることが必要とされます。一方、マジンガーZが戦うためには、操縦者の兜甲児が存在するだけでは不足であり、彼をバックアップする組織と施設としての光子力研究所が必要とされます。

 光子力研究所は、その名の通り「光子力」と呼ばれる科学技術を研究するための施設であり、けして戦闘要塞ではありません。

 (それに対して、続編グレート マジンガーの基地になる施設は科学「要塞」研究所と呼ばれ、戦闘を意識した施設であることを示します)

 従って、光子力研究所には、科学技術研究施設に相応の施設と組織が存在します。

 そのことを象徴的に示すのが、三博士であったり、汚水処理場であったりします。

 光子力研究所の代表者と思われる弓教授は、科学者というよりも管理職的な業務を多数こなしていると考えられます。そして、その下にいる三博士が、実際の研究や開発に従事していると考えられます。その結果として、ボスボロットを作らせるために弓教授ではなく三博士を誘拐する選択肢がリアリティを持つと言えます。

 また、光子力研究所が科学技術研究施設であるとすれば、そこに娯楽スポーツ施設としてのプールが存在すべき必然性が何ら存在しないことが分かると思います。しかし、ジャポニウムという新物質を扱っている施設であるらしいと考えれば、物質を反応させたり精錬したりする際に廃液が生じ、それを処理するための汚水処理場を自前で持つという状況は十分にあり得ます。つまり、この作品の「誠意ある設定」上のリアリティから考えれば、プールとは解釈し得ないのです。

ファンの意識の中で縮退する組織の存在感 §

 しかし、ファンの多くは、リアリティを支えるこれらの情報を全て素通りさせているかのように見えます。

 つまり、光子力研究所とは弓さんの「お家」であり、弓教授は何でも作ってくれる魔法の人。巨大ロボット、アフロダイAまで持っているぐらいのリッチな家だから、当然自家用プールがあって当たり前。

 そして、ロボットの存在感が限りなく玩具に一致する結果として、ロボットとはまるでプラスチックモデルを作るように手軽に作れるものに見えてきます。それゆえに、ボス達が自力でボスボロットを作った、という解釈に何ら矛盾を感じなくなります。

 このような世界観で作品を見続けることで、いかに作中に様々な情報が詰め込まれようともそれらの存在感は希薄化し、そのようにして見ているファンの意識の中で、作中の社会や組織の存在感やリアリティは大きく縮退していきます。

 つまり、マジンガーZという作品の公的なイメージは、現実にそうである以上に視聴者によって「子供指向」的な方向に偏らされていることが考えられます。

余談: マジンガーZへの「愛」 §

 マジンガーZとは、私が好きではない傾向を象徴する名前ではありますが、では「愛」が全く無いのかと言われればそうでもありません。

 等身大の飛行メカであるホバーパイルダーは自分も欲しいと思ったし、マジンガーが圧倒的にボロ負けしている状況から、ジェットスクランダー等の登場によって鮮やかに逆転していくカタルシスの爽快感は、当時の自分としては嫌いではありませんでした。

 むしろ、マジンガーZへの苛立ちがどこから来るのかと言えば、その一部は間違いなく作品そのものというよりはファンにあると言って良いと思います。つまり、ファンであるはずの者達がいかにマジンガーZをきちんと見ていないか、という点にあるということです。マジンガーZはプールから発進すると思い込んで、何の疑問も持たない者がいかに多いことか。前田建設 ファンタジー営業部のおかげで、だいぶ誤解が解けたようですが……。もっとも、マジンガーZは汚物を被って発進するという別の誤解が蔓延し始めているようで、ちょっと頭が痛いところですが。

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