鞄の中に放り込んで、移動中に読むようにしていましたが、やっと読み終わりました。
というのは不正確で、移動中でもこれを読んでいないケースも多く、かつ、後半部分は自宅で寝る前に読み切りました。
なかなか上手く行かないものですね。
男が金をつかうもの3つ §
一番良かったのは以下のところです。
p151より
水柿君、今までいろいろなものに凝って、お金を浪費してきたけれど、どういうわけか、飲む、打つ、買うの三つだけはしなかった。つまり、男が金を使うものといったら、酒、ギャンブル、女、の三つと世間ではもっぱらの評判なのに、彼はそれらには見向きもしない。
「僕はまだ、飛行機と機関車だけだから、空と陸しかやってないけど、普通はこれにボートが加わるんだよな」なんて話していたことがある。
彼に言わせると、男が金を使うものは、陸、海、空の三つのようだ。もちろん、模型の話である。
そうそう。やはり、男は陸、海、空を外せませんね。
模型といえば、シャーマン、ワイルドキャット、ジープ空母は何はさておき買っているわけだし。ああ、そうだ。高価なピンセットを買ったらジープ空母の単装機銃の組み立てがスムーズにできるか試してみなくては。下高井戸の古書店で買ったハセガワの1/72のF4Fも寝かせておくのはもったいないし。それ以前に、SWEETの1/144のFM2を作らねばならんか。
名文だよ! §
言葉で遊び倒す内容でありながら、実は最後だけ名文で閉めているのが「このやろ、上手く書きやがって」という好ましい意味での驚きですね。
最後の1行を引用します。
p254
箸を刺すまでもなく、空も、いい感じだった。
空に箸を刺すわけがないのに、こういう表現をさらっと書いて締められるのは、ある意味で物書きの端くれから見て羨望を感じるところです。
これは実話だろうか? §
おそらく事実の断片をまぶすことで事実と倒錯させることを意図した小説であって、森氏が小説家になる経緯などはこの通りではないでしょう。根拠はないですが、そう思います。特に、最初の本が出るあたりの描写は、異様に密度が薄くなっていて、フィクション性の高さを感じさせます。いや、私が勝手に感じるだけで、そう判断した確実な根拠などはありませんが。
でもまあ、面白いからOKです。