最終兵器彼女 1紀伊國屋書店
Written By: 川俣 晶
意外にも面白かったので、一言メモっておきましょう。
セカイ系といえば、小さな箱庭のような世界で、個人の意志が社会を経ずして世界の運命に直結していくような作品を示すようです。
そして、この作品は、そのようなパターンを忠実に踏襲しているかのように見えます。
小さな街、身近な限られた登場人物達、そして身近な彼女が最終兵器であるという「世界の運命へのダイレクトな直結」等々。
しかし、そのような印象は、少なくともこの1巻においては誤りだということが良く分かりました。
直接的な絵としては描かれていないものの、社会は確実に主人公と彼女を包み込み、拘束しています。そのことは、二人の言動から強くにじみ出てきます。
たとえば、顔も出てこない自衛隊の人や追跡者などは、決定的に異質な他者の存在を示します。顔が見えないがゆえに、形のない抑圧はよりいっそう強調されます。
そして、社会の抑圧こそが、二人のラブロマンスを盛り上げます。
現実問題として、おかしな部分、突っ込み所は多いのですが、それを差し置いても面白い傑作でしょう。
そのうちに、最後まで読んでみたいと思いました。
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