いや~、これは面白いですね。
しかし、売れない小説だと思います。
それにも関わらず、こういう小説を書いてくれる情熱は希有なものがあって、素晴らしいですね。
3次元の土地勘を要する §
この作品の面白いところは、昭和初期の視点で明治の怪奇現象を振り返るという形を取っていることです。
つまり、読者の視点と、登場人物の視点と、登場人物が見ている事件の当事者の視点が全て違うのです。つまり、「大ざっぱな昔」という印象だけでは作品を読み切れません。昭和初期と明治ではどう違うのかという歴史的な土地勘が必要とされます。
更に、大東京三十五区という舞台を把握するためには、地図の広がりに対応する2次元的な土地勘も要求されます。
つまり、合計して3次元的な土地勘です。
これだけの土地勘は、普段から東京の昔に触れていないと、なかなか難しいかもしれません。
私は、都内の歴史資料館巡りなどをしているのでだいたいのところは分かったつもりですが、それでも早稲田方面はよく知らない場所であって、完全に分かったとも言い難いところです。
しかし、分かった範囲だけでも面白いですね。
作品構成的な面白さ §
この作品は、昭和初期の視点で明治の怪奇現象を振り返るという形を取っていますが、実はこの構造が最後にひっくり返ります。(ネタバレになるので曖昧に書きます)
これがまた面白いですね。
しかも、全ての怪異が合理的に解決できたかとおもいきや、最後の最後で裏切られます。
いや~、面白いですね。