凄く面白い!
こんなに面白い本を読んだのは久しぶりかも!
金子隆一という人が持つ、安定感と安心感はやはり突出しています。
学者以外が書くサイエンスに関する本で、これほど安定感と安心感を持って読める本を書ける人は滅多にいないのでは?
ちなみに、正確さや客観性については私には評価できないので分かりません。
ただ、「私の本に書かれたことは正しい。だから信じなさい」という論調ではなく、「英語の論文を読んで当たり前」という主張を行っていることは、紛れもなく安定感と安心感をもたらしてくれます。なぜかといえば、自著に関する正確さや客観性について読者が検証する手段を提供しているわけですから。
更に言えば、「英語の論文を読んで当たり前」というのは、情報分野の世界で標準技術仕様は「英語の仕様書を読んで当たり前」という主張とも重なります。したり顔で語る解説書が間違っていることは珍しくないし、仕様書の日本語訳に誤訳が多く含まれるのも「よくあること」です。ある技術について「何が正しい」と主張したければ、英語の仕様書を読んで当たり前です。しかし、それを実践せずにしたり顔で語る人が大多数です。本書に出てくる恐竜の現状とも重なるのかもしれません。
別の側面から言えば、歴史ミーハー趣味の領域でも似たようなことは言えます。一般向けの歴史番組や書籍などを読んでも、それはほとんど意味がないですね。やはり、研修者本人が書いた学術書や、郷土歴史資料館のような施設が出す論集のようなものを読まないと本質的に面白くありません。さすがに論文を取り寄せる……ということまではやっていませんが、そこまでは言えます。
そういう意味で、ベースとなる部分の説得力がずっと高いと感じられたのが本書です。
更に、ビジネス的なセンスの重要性を語るのも良いですね。ろくなリサーチもしないで恐竜ビジネスを企画することのおかしさは、いわゆるIT業界でも同じパターンがよく見られます。いやほんとに、漠然としたイメージに乗せられて、あたかも「マスターベーションを発見して世界の神秘に触れたと思い込んだ男子中学生のように」素晴らしいアイデアを語って協力を求めてくる困った人はいますよ。それが「うん十年前」に既に試みられて惨敗したという話をして、すごすごと引き上げてくれればまだ良い方。悪ければ人の話は聞きません。
それはさておき。
私自身は恐竜にはさほど関心はありません。
ミーハーレベルで言えば、もっと古いいわゆるバージェス・モンスターのような古生物群が好きですが、最近では三葉虫にも心引かれるものがあります。
この本が良いのは、そういった生き物を含む地球規模の生物史の中に恐竜を位置づけるという視点があることですね。
そういう視点で見ると、確かに恐竜は面白いと感じられます。
特に、最後に書かれた「恐竜は存在せず、地上に降りた鳥の一部だ」という視点は魅力がありますね。
とりあえず、書き続けると長くなるので感想はここでおしまい!