並木通りアオバ自転車店は、的確なフェティッシュ感を描いた表紙につられて買って、途中から読み始めたものです。
その感覚は、リニューアルされた新シリーズでも健在。
いきなり、ハイレグっぽいラインで裁断された超ミニスカートというRQコスチュームを見せつけられてクラクラしました。
そして、それによって励まされるのはヨレヨレのサラリーマン達というのも泣かせる良い話です。
というのが最大のポイント。
時をかけるアオバ §
もう1つ、さりげなく濃いポイントは「時をかけるアオバ」。
自転車が主要なアイテムとなる細田版「時をかける少女」という映画が存在することからすれば、当然それがネタになることは考えられることです。
そして、この映画が基本的に過去の作品群の上に成立している以上、大林版や少年ドラマシリーズ版への言及は、濃い人であれば必ずあり得ます。
ところが、この作品が言及する「過去の作品」は、それらではありません。
そもそも、「時をかける少女」ですらありません。
ハインラインの「夏への扉」です。
しかも、アオバちゃんが最後に手に取るのは、早川の銀背です。
早川の銀背とは、現在も続いている早川書房のSF文庫のことではなく、それ以前に存在した早川のSFシリーズを意味します。文庫版よりもやや大きいサイズです。
おそらく、今時の「自称濃いマニア」でも存在そのものを知らない人も多いでしょう。知っていても、現物は見たことはない……という人もけっこういるのではないかと思います。
(ちなみに、私は現物を何回か見ていますが、実際に読んだことはない……と思います。永福図書館の大人の方の部屋にあったのですよね……。子供だから児童室に通っていたので、指をくわえて見ていただけでした)
つまり…… §
この作者は半端ではなく濃いマニアックさを持っているのでしょう。
しかし、その濃さは、今時のオタクの平均水準を圧倒的に超えてしまっているために、理解されざる立場に押しやられていると言えるのかもしれません。
まあそういう意味では、宮崎駿や押井守と同じような立場と言えますが。
そもそも描くのが難しい自転車をテーマにした漫画を描けるという時点で、抜きん出たマニアックさを持っている証明になっているとも言えますね。
しかし、あまりに当たり前の「自転車」という題材をテーマにしているがゆえに、当たり前の漫画として読み流されてしまうリスクも高いと思います。
実は、「万人に開かれた通好み」という特異的な特徴を持つ作品といえるかも。