「猫とネギま!と声優さん」さんの「魔法先生ネギま!」第3期はDVD付き限定版コミックスで(OPはハピマテ、原作準拠で制作シャフト、声優も全員続投、映画化の可能性も!)を読んで驚きました。
というのは、ネギま!の良いアニメが見られる可能性を示すと同時に、現在のアニメの閉塞状況へのクールな対処方法になっている可能性が読み取れたからです。
ちょっと最近引っかかっていた話題なので、これを機会に書きます。
お断り §
厳密な裏付けや数字の根拠抜きで、思ったことを書いただけの文章です。
内容を信じてはいけません。
思うところがあれば自分で確認!
アニメの閉塞状況とは? §
DVDが売れないために採算が厳しくなったことを示します。
なぜDVDが売れないのか、というと、TV放送を録画して自分でDVDに焼いてしまう人達が増えたことと、録画しなくてもいつでもネット経由で見られることが主要因と思います。
当然、DVDが売れなければアニメは滅びます。(スポンサーがDVDを売るメーカーなら、DVDが売れないとスポンサー料も出ない)
このような問題に対処するために、TV放送では画質を落とす、額縁放送にする、テロップを被せる等の方策が取られています。
自力では美麗なDVDを作れないようにして、DVDを買わせたいわけですね。そうしないと採算割れて路頭に迷うから。
しかし、そのような背景について考えることもなく、「額縁放送はけしからん」的な意見も多く、状況は閉塞していると感じます。
歴史を振り返る §
このような状況を理解するためには、簡単に歴史を振り返る必要があります。
当初、アニメとはTV放送のスポンサーの存在によって制作資金を得て維持されていたものです。主要なスポンサーは玩具メーカーであり、CMで宣伝される玩具が売れることによって、製作コストは回収されていました。
しかし、このようなやり方では「30分の玩具CM」としてのアニメが主流になります。必然的に、視聴者が見たいアニメとは乖離します。特に「非幼児」層においてこの乖離が顕著になります。そこで出てきたのが、OVAというジャンルです。スポンサーではなく見たい人がお金を払うシステムであれば、見たい人が見たいアニメが制作されることになります。このジャンルは、TVアニメよりも長い期間とより多くのコストを掛けられるために、より高品質の作品が得られるという特徴もあります。
ちなみに、この時代はまだDVDではなくLD(レーザーディスク)が主流です。
次に、OVAを売るためにTVアニメを制作するというスタイルが出現します。このスタイルにおいてTVアニメが担った役割は、作品の認知度をアップし、OVAを買わせることにあります。
ところが、ここで奇妙なねじれが生じていきます。OVAのLDよりも、TVアニメのLDの方が売れるという現象が起こるようになったのです。
ここで、TVアニメの役割が再び変質します。TVアニメは、売りたい別の商品を宣伝する手段ではなく、売りたい商品そのものをアピールする手段となったわけです。
このあたりで、LDからDVDへの世代交代が起こりますが、この時期にはこのようなタイプのアニメDVDが飛ぶように売れていました。
より具体的に言えば、以下の特徴を持つアニメDVDが売れていたのです。
- 既に無料でTV放送されたアニメが収録されている
- LDなら1枚4話程度収録だったのにDVDでは1枚2話程度になって割高になった
念のために補足しておくと、この時期、私は明らかにアニメDVDは高すぎると思っていましたが、当時高すぎるという批判はほとんど聞きませんでした。私は、高すぎると思ってほとんどアニメDVDは買わないでLDを持ち続けましたが、周囲の多数派はLDを売り払ってDVDを買い続けていました。
さて、このような背景から、主にオタク向けのアニメのビジネスモデルは以下のような形になったと考えられます。
- 地域限定で深夜帯等でTVアニメとして放送する
- TVアニメではDVDを宣伝する (同作品や、同じ会社の別アニメ等)
- マニアはTV放送されたものと同じでも買う (あるいは若干のオマケを付けて買わせる)
- 放送されなかった地域では話題のアニメへの興味からDVDが購入されると期待
一応、これが1つの完成形のビジネスモデルと思って良いと思います。
しかし、このモデルは、書き込み可能なDVDとブロードバンドのネットワークの普及で崩壊します。
以下のような状況が進行したからです。
- 録画したアニメが即座にネット経由で流通することで地域限定性が消失した。放送されていない地域でDVDが売れることは必ずしも期待できない
- TV放送の録画を美麗なDVDに仕立てることが容易に可能になった。美麗なメニュー画面も容易に作成できるし、カラープリンタの性能アップによりDVD表面への印刷も美麗にできるし、ジャケットも綺麗に作れる。素材も画像をキャプチャすればすぐ手に入る
- アニメの放送本数が極端に増大し、アニメDVD購入に対するコスト負担が限界を超え、DVDを買わない方策が求められた (ただし、これは正当な理由とは言い難い。お金が足りなければ、もっと働いて稼ぐか、あるいは我慢するのが常識的な態度)
これに対処する方策は2種類考えられます。
1つは、DVDを買わないという選択はアニメを滅ぼす悪い方法であるとして、ファン達が正規DVDを買い支えて収支を維持させる方法です。
しかし、実際にはDVDを買わないことを正当化する意見が大多数であるように見えます。
とすれば、もう1つの方策を取るしかありません。
つまり、TV放送の質を落として、満足のいくDVDを個人制作させない、ネット流通させない、といった対処を取るしかありません。
しかし、これはアニメファンの怒りを引き起こしているだけ、とも見えます。
結局、どちらも納得できない矛盾が継続しており、状況は閉塞しているように見えます。
DVD付き限定版コミックスは打開策になるか? §
このような閉塞打開するには、システムそのものを組み替えるしかないでしょう。
つまり、売りたいアニメをTV放送することが売り上げアップにつながる、という過去の経験則が成立しなくなった以上、TV放送に依存しないモデルを再構築する必要があるわけです。
しかし、単純にOVAにしてもさほど数は見込めません。OVAの流通経路は、さほど多数の人の目に触れないからです。
では、どのような流通経路なら多くの人の目に触れるのか?
ここで1つの事例を紹介します。
日本にはファインモールドというマニアックなプラスチックモデルのメーカーがあります。マイナーな旧時代の軍用機や戦車をモデル化する他、紅の豚のサボイアやカーチス、スターウォーズのXウィングなどもモデル化しています。
このメーカーが最新の技術でモデル化した画期的な1/72 零戦21型のキットがありました。しかし、凝りすぎて高価なキットになるだけでなく、大手メーカーのライバル製品も多数あります。発売しても売れないことは明らかです。それ以前に、そもそも手に取ってみてもらう機会が少ないため、何が違うのかが実感として伝わらない可能性も大きいものでした。
そこで、月刊モデルグラフィックスという模型雑誌と連動して、2ヶ月連続でキットを雑誌とワンセットで売るという方策が取られました。その結果として、以下のメリットが生じたようです。
- 製造数を増やすことができ、コストダウンが達成された
- 多くの人が見る本屋の雑誌コーナーに並ぶことで、模型店に並ぶよりも多くの人の目に付く機会を得た
実際、このキットがビジネス的に成功したのかどうかは知りませんが、マスを見込める商品であれば書籍流通を経由してアプローチするのは「あり」だと思いました。
ちなみに、講談社の「昭和の鉄道模型をつくる」も、本格的な鉄道模型を書籍流通経由で売るということで成功していると思います。
というわけで。
このような背景を元に考えると、実はTVアニメにしないで、DVD付き限定版コミックスという形でアニメ展開を行うのは、なかなか良いアイデアではないかと思うわけです。いやむしろ、他人が作ったビジネスモデルでしか商売できないアニメ関係者よりも、遙かにクールで切れ味が良いと思います。
というわけで、DVD付き限定版コミックスは、ちょっと期待して注目してみたいと思います。
ってか、久々に「買うぜ!」と思ったアニメDVDかも。