自宅のオーディオは生前の父のささやかな趣味の産物でした。最初はビクターの製品(一体型の初期のステレオ製品)、次は山水のコンポでした。
この時のコンポの中で最初に故障してダメになったのがカセットデッキ。未だに現役なのが(もはやほとんど出番のない)レコードプレイヤーとAM/FMチューナーです。
さて、カセットデッキについては、当時大学生だった私が大学生協のフェア(都心の会場でやっていたと記憶)に行き、普通のフルサイズのステレオカセットデッキを買ってきて交換しました。もう記憶はあやふやですが、TEACの普通のカセットデッキだったはずです。しかし、それも故障。その後、父が自分でカセットデッキを置き換える製品をヨドバシで買ってきました。(私には何の相談もない。そういう人だった)
ところが、買ってきたのはTEAC AD-500というカセットデッキとCDプレイヤーが一体になった特殊なものでした。当時の自宅のコンポには、CDも再生できるLDプレイヤーが接続されていて、特にCDプレイヤーを追加する必然性はなかったはずです。しかし、不明の理由により父はそのような特殊な機器を買ってきました。
そして、それから更に10年の歳月が流れ、このAD-500も動作が怪しくなってきました。特に、カセットデッキのEJECTが押せなくなり、テープが取り出せなくなった事件は致命的です。蓋を開いてデッキのメカ部分のあちこちのねじをゆるめてテープは救出でき、その後も何事もなかったように動いてはいますが、必要なときに動かないリスクはかなり重いものです。
というわけで、様々な対策を検討しました。その間の紆余曲折の話は飛ばします。
最終的にTEAC CD RECORDER/CASSETTE DECK CC-222SLMKIIをAmazonでオーダーして購入するという結論に至りました。
数日前に到着していましたが時間が無く、昨日やっと箱から出して置き換えました。
とりあえず、第1印象を書いておきます。
ラックマウントのプロ用機材だ! §
民生用デバイスではありません。3Uのラックマウント仕様です。しかし、実際には普通のコンポの左右にラックマウント用の金具が最初から付いているというだけの話です。この金具は邪魔なので外してしまいました。
ユーザー登録 §
オーディオ機器のユーザー登録をWebで行うのは新鮮。なにせ、かなり長い間自分でオーディオ機器を買うことは無かったので。時代の変化を肌で感じます。
入出力 §
CDとカセットは別系統が基本設計。再生系は1つの端子にどちらの音でも出せる設定があるけれど、録音系は完全に別。しかし、もともとCDへの録音が存在しないデバイスが入っていたので、アンプからのラインは入力1系統、出力1系統分だけ。とりあえず、カセット側のみ接続。しかし、当面はこれで良いはず。なぜなら、カセットからCDへの録音は外部配線無しでできるから。
Phono入力 §
レコードプレイヤー対応としてはナイスな仕様。もっとも、うちはわざわざPhono入力のあるアンプを設置しているので、直接的な恩恵はないけれど……。
カセット吸い上げデバイスとして §
カセットのCDへの吸い上げデバイスとしては、素人が手軽に実行できる範囲内では、もしかして最強レベル?
基本手順は以下の通りです。
- 再生したい側を手前にカセットを入れる
- ブランクのCDメディア(R/RW)を入れる
- ダビングボタンを押す
- 自動的にテープが巻き戻されて再生と録音が始まる
- テープかCDメディアのどちらかが終わったら終了
- 追記する場合は更に繰り返す
- ファイナライズボタンを押す
- Yesを示すためにダイヤルを押し込む
- ファイナライズ終了を待つ
この手順の素晴らしい点は以下の通りです。
- 1つの機器内で完結し、トラブルが起こりにくい
- 再生や録音開始のタイミングは全て機器側が自動的に調整してくれるので狂わない
- オーディオのブランドのけして安くはない(高くもないが)機器であり、音質的な不安が少ない (素人が機材をかき集めて接続して行うよりは良い音質を期待できる)
- レベル調整の設定がスルー(デフォルト)なら、とりあえずありのまま入ってくれると期待できる
- ファイナライズしなければいくらでも追加できる (短いテープも効率的に取り込める)
- カセットはオートリバースなので、C-60テープ1本をCD-R1枚に一気にまとめられる
- 間違うこともあるけれど、適当に上手くトラックを切ってくれるので扱いやすい
- 基本的に、ファイナライズまで含めてもボタンを3回押すだけの手間 (メディアの出し入れに押す回数は含めないとして)
- 作業時間のほとんどは放置で構わない
- もちろん、再生停止のタイミングやレベル調整など、手動で凝りたいと思えばいくらでも凝ることができる
つまり、要約すると以下の2点です。
- 驚くほど手間が掛からない
- 音質、安定性、確実性などの期待レベルが高い
正直、カセットを吸い上げてCDにする……ぐらいの話なら、過去にも不可能ではありませんでした。というか、やれば簡単。
それにも関わらず作業が進んでいなかったのは、「手間が掛かりすぎる」「確実性に不安が残る」という2点が引っかかったからです。
この機器はその2点をクリアしたという意味で、実にナイスな印象です。
感想 §
カセット資産の多くは、肉声などの個人的な音資産とテレビ等からの録音です。個人的な音資産については、まさに「どこにも売っていない」ために貴重です。しかし、テレビからの録音も、仮に音源が残っていたとしても、テレビで流れていた音は、やはり生の貴重な歴史資料であり、大きな価値を含む可能性があります。
しかし、CDに焼いてしまえば、どこでも再生できるし、そのままリッピングして簡単にHDDに保存できます。CDの複製も、高速かつ簡単です。
ここまで来れば、音資産の保全は1つのゴールに達したと見なせます。もちろん100%の安全にはまだまだ遠いのですが、個人的にはゴールと見なして良いでしょう。そのゴールまでの手間が大幅に削減されたのは、極めてナイスです。
もちろん、けっこうな値段のものであり、それだけの金額に見合うか……という疑問はあり得ますが、家族で金を出し合って買うとすれば納得のできる水準です。
余談 §
テスト的にCDに複製したテープに、小学生時代の友達2人が漫才のようなことをする音声が含まれていました。トラックが寸断されてしまうので普通に取り込んでも上手く扱えず、全トラックを一括でリッピングしてから当該ヶ所を切り出しました。
こういう作業は過去にやったことがないので調べてみたところ、使い慣れたやたら古いCDexとCool Edit 96で処理できることが分かりました。CDexで複数トラックにまたがる音声データを1本のWAVファイルに落とし、Cool Edit 96で切り出して、もう1回CDexでWAVファイルをエンコードしてWMAファイルのできあがりです。
それにしても、今時Cool Edit 96を使うとは。しかも、Windows 7の64bit版上で。起動時にヘルプのウィンドウも一緒に開いてしまった以外は動いてくれるし。とりあえず、WAVEの切り出し程度なら、十分だし。