ハイパーウェポン二〇〇九のこと §
ハイパーウェポン二〇〇九はほとんど小林誠さんとヤマトの本である。
これを小林誠さんのサイン入りで手に入れたのだから幸福というしかありません。まあ、お仕事モードで黙々とサインしている小林さんにミーハーモードで話しかけても迷惑だから、サインだけ頂いて帰りましたけど。
やはり、小林さんは特に復活編を楽しんだヤマトファンとしては無視できない人物です。
特に、「さらば」の時代に映画公開前にメカデザインだけでたっぷり楽しめた時代を彷彿させる本だという点もポイントが高いと言えます。つまり、そういう意味でやはりヤマトの後継者です。「メカデザイナー」がヒーローだった時代の後継者でしょう。
そう思うと、設定の中にスーパーアンドロメダ級という明らかに「古き良きさらば時代」との連動性を意識させる設定があることも偶然ではないでしょう。
コスモゼロはなぜ21型か §
というわけで本題ですが。
コスモゼロが21型であることについての説明もこの本には入っています。
- 折りたたみ機構が主な追加である
- 艦載機を意識させる21型とした
ところが、この説明は不完全です。というのは、松本零士先生デザインのコスモゼロ52型が艦載機ではない、ということではないし、イメージソースとなった零戦五二型が艦載機ではない、ということでもないからです。
というわけで、別にミリタリーマニアではないが、それでもいろいろ語れることがあることに気付きました。
つまりこの場合、重要なことは以下のように解釈することだったわけです。
- 折りたたみ機構があるから、21型。無いのは52型
- 折りたたみ機構が艦載機を意識させる (艦載機である、という意味ではない。意識させやすいだけ)
これはコスモゼロのイメージソースの零戦に対応します。そもそも零戦には翼端の折りたたみ機構が存在するサブタイプと、存在しないサブタイプがあります。そして、五二型とは翼端を短くして性能向上を目指した関係上、折りたたみ機構がありません。従って、折りたたみ機構を追加したコスモゼロのために新しいサブタイプを探すとすれば、サブタイプの種類は限定されます。そして、五二より大きな数字を持つサブタイプに折りたたみ機構は存在しないので、その方向性は絶たれます。では、数字の大小に関係なく、折りたたみ機構と人気のあるサブタイプは何かといえば、やはり二一です。
実際、二一型と五二型は零戦ファンの間でもどちらが好きかで解釈が分かれるようで、2大主要サブタイプと言えるでしょう。従って、まず松本先生のコスモゼロの設定に「零式宇宙戦闘機五二型」とあらゆるサブタイプを飛ばしていきなり五二と書かれることも分かると同時に、「真珠湾などで栄光の勝利を日本にもたらした機体は二一型」という異論が常にあり得ることになります。
つまり、主人公が乗るヒーローメカだと思えば、ここで21型と名付けるのは妥当と言うことになります。もともと時代遅れのロートル機体を真田さんが気を利かせて搭載しただけなら、コスモゼロが残っているだけで感動ものであり、52型より若い型番を持つ21型が今更ヤマトに乗っていてもおかしくないことになります。
たとえば、今更8bit PCを探したら本当はFM-77AVが欲しかったのに、出てきたのはもっと古いFM-7だった、というような話ですね。
どうでもいいけど、零戦も話題が尽きないなあ。飴色論争の他にサブタイプを調べたら一二型実在論争もあるの? 宮崎駿の新作も零戦のルーツともいうべき九試一号機だし。
オマケ §
「ハヤト、おまえは零戦(ゼロセン)が好きだな」
「だってかっこいいじゃないですか、零戦(レイセン)。特に二一型とか」
「そうかねえ。オレは五二型の方が強いと思うけど。いやむしろ紫電改とか震電の方がもっと強いと思うぞ」
「でも栄光の勝利を掴んだのは二一型でしょ! 紫電改も戦局挽回に寄与しなかったし」
「へいへい。そこまで零戦が好きかね。おまえのことは、今度からゼロ戦ハヤトと呼んでやることにするよ」
「それじゃ、カイさんは、さしずめ紫電カイですね」
「じゃあ、アムロはどうしようか」
「アムロ・零（レイ）ってことで」
オマケ2 §
というわけで、ハイパーウェポン二〇〇九を見てハッと気付いたことがあります。
この本はほとんど小林誠さんとヤマトの本ですが、最後の少しだけギャラクティカ(新)を紹介するページがあって、そこにある対談に小林誠さんも入っています。
つまり、ヤマト復活編をギャラクティカと絡めて見てしまう行為は必ずしも間違っていなかったのか!
ついでに、ブルーノアが2520への過渡期のデザインだったことも意図されていたようです。2520の時点で既に。
ブルーノアといえば、よく見るとシナノの収納位置も正確に図示してあって。艦首艦艇部です。ということは、コスモハウンドよりも旧ブルーノアのシイラの位置に近いわけです。というか、ブルーノアにあったシイラの抜けた箇所を覆う無理のあるギミックを排除すればシナノの収納方法になるのかも。
って、急に気付きましたが、シイラとシナノって、どちらも「シ」で始まって似ている部分がある! (「シ」の指令じゃないぞ)
……さて、新旧ギャラクティカと新旧ブルーノアの話題が入り交じってしまって、もうてんやわや。
それにしても、救命艇がいいデザインだと思ったらこれもコスモパルサーのバリエーション機。平和が続くと軍事予算も減って、無駄の少ない運営が求められるわけです。だから、ガミラス戦役に負けそうになった恨みでいろいろ作った「さらば」時代と違って、復活編の時代はSUSが出てくるまで軍事予算が削られた時代です。SUS戦役が終われば銀河100年戦争まで平和が続くことになるし。とすれば、復活編の小型機体は全てコスモパルサーのバリエーション機になり、ブルーノアも放棄しないで回収して復旧し、300年間使うわけですね。自爆しても原型が残っているヤマトも修復して使おうという話が通るほど予算が足りないわけですね。まあ、もともと移民用の船を建造して予算が足りないという話もあるでしょうが。
