はたと気付きました。
スターシャとは以下のような存在です。
- 地球に救いの手を差し伸べる神秘の美女
- 惑星イスカンダルの女王
- ガミラスのやり方に最後まで賛同しない
- 古代守との劇的な愛を成就する
- 戦争に終止符を打つために、愛する娘と夫を逃がしてからイスカンダルを自爆させた女
とすれば、以下のように思えるかもしれません。
しかし、本当にそれで解釈は正しいのでしょうか?
以下のような特徴も、やはりスターシャです。
- 放射能除去装置を自力で取りに来いという試練を与えた
- 異次元空洞以外では具体的な援助もしない
- 近くまで来ると多少誘導はしてくれる程度でしかない。あとは自力で
- ガミラスのすぐ近くにいて、デスラーの求愛をはね除け、イスカンダルの独立を保っていた
- 隣がガミラスだとは、当初地球に教えない
- 惚れた男をイスカンダルに確保してガミラスに返さなかった
- サーシャ(初代)をわざわざ死の危険がある地球に派遣した
- 言うことを聞かないだだっこ(デスラーのことだ)を黙らせるために、嘘を付いたり、自爆することもいとわない
つまり、以下のような解釈も可能でしょう。
- 組織的な戦闘としての戦争は好きではない
- しかし、戦いそのものが嫌いというわけではない
- 戦いをくぐり抜けて何かを勝ち取る、という方法論は大好きである
- 嘘などを駆使した搦め手の戦いがむしろ得意である
- 愛とは戦って勝ち取るものである (恩や美貌を武器に守のハートもゲットだ!)
- 闘争への勝利は大好きである。その好きなもののために、つい自分も命を差し出してしまうもありだ
つまり、スターシャは好戦的で過激であり、むしろ「男性的」であり、デスラーの愛を受け入れるよりも、デスラーと別の方法論を打ち立てて競い合ってしまうライバル的な関係だと思った方が良いのかも。それにも関わらず、スターシャを美の女神のようにあがめ奉ってしまったデスラーはどこかで間違っていたという可能性も。
一方で、デスラーが可愛いと思う相手がスターシャから古代に変わるのは当然ということになります。そう思って見ると、実はスターシャと古代進は似ています。古代守に可愛がられた、という経歴も似ています。好戦的だが繊細、命を大事にしないかと思えば命を大切にするという特徴も似ています。
実はそう思ってみると §
あれだけ地球を愛し、地球のために死ぬことすら厭わない古代守をイスカンダルに引き留めていたスターシャの「威力」も異常な水準であると言えます。ともかく、守は冥王星で実質的に死んでいて、イスカンダルではカットされた「真田出撃」で死を厭わぬ決死の出撃を行っていて、「永遠に」ではためらわず身を挺して藤堂長官を逃がしています。そういう守なのに、なぜか「スターシャへの愛に生きる男」として地球に返さないあたりが、スターシャなりの行動なのかも。つまり、「他人を思いやる穏健な女性」ではなく、他人の都合よりも自分を優先する女性であり、この場合の自分は「生存」ではなく「勝利」です。既に死を受け入れたイスカンダル人らしく、もはや命はさほど重要ではありませんが、美しく散ることにはこだわりがあるようです。
もちろん「愛」ゆえに、という解釈はあり得ますが、スターシャの場合は愛も武器なのかも。
ちなみに本当に守が大事なら、自分から地球に同行するはずです。イスカンダルは死ぬゆく星なので、そこに居座っていてもどのみち新しい星のイブにはなれないのです。それでも守を引き留めて子供も作ったのは、星の寿命のスケールと人間の寿命のスケールは違っていて、数世代程度の人間は生きて住めると思ってのことでしょう。数世代先、住めなくなったら子孫が移住すればいいだけの話です。それはスターシャの問題ではなく子孫の問題です。守や娘が死ぬまでイスカンダルで生きていくことぐらいは問題なかったはずです。更に、自分がイスカンダルで死ぬこともささやかな望みでしょう。
とすると、以下の3つの条件が出てきます。
- 守や娘は自然に死ぬまで生きられる
- スターシャはイスカンダルで死にたい
- デスラーはどうでもいい (活躍させたくない)
すると、何と「新たなる旅立ち」のラストが必然的に導き出されてしまいます。スターシャはイスカンダルごと死に、寿命がたっぷり残っている守と娘が生き延び、デスラーは「死んで勝とう」という見せ場を突然スターシャに奪われます。
そのあとで、地球のために死にたがる守が死んで、娘も母を見習って「死んで勝利を掴む」ことは皮肉ではありますが。(ここは、親の心子知らず、かもしれないが、まあよくあることだ。そういう意味でリアルな展開であって、矛盾とは言えないだろう)
更に余談 §
イスカンダルには、放射能除去装置の他にも凄い機械がいくらでもあったはずです。しかし、それらを使えるように整備しておくという発想がありません。放射能除去装置も完全品ではなく、組み立てる必要がありました。つまり、スターシャは凄い道具は使わず「嘘などを駆使した搦め手の戦いがむしろ得意である」という特徴を持つわけです。とすれば、これは旧ルパンの最終回ですね。ルパンIII世がご先祖の残した凄い道具の数々を披露したが、全て崩壊し、ルパンは「そんなものは要らない」と言い切ってしまいます。ちょっとした知恵1つで状況を切り抜けてしまってこそのルパンということですね。清掃車に電波発信機を投げ込むとか。スターシャも同じです。そして、膨大な警官隊で戦おうとする銭形がデスラーに対応します。
とすれば、守のポジションは次元あたりに対応することになるのかも。スターシャは頼れる仲間が少数だけいればよく、大部隊は必要としていないわけです。