2010年05月23日
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「第1空母へ、ガミラスファイター発進!」と「ドロスはよくやっている」の差は何か?

Written By: トーノZERO連絡先

 1つ気付いたことがあります。

 ドメル艦隊の空母には固有の名前がありません。「第1~第3空母と戦闘空母」です。艦載機にも固有の名前がありません。たとえば「ワイルドキャット」のような固有の名前がありません。「ガミラスファイター」も、要するにガミラスの戦闘機でしかありません。

 ドリルミサイルも単に機能を名前にしているだけで、搭載している機体も重爆撃機としか呼ばれません。

 これに対して、ガ○ダムにはほとんど固有名詞があります。空母にはドロスという名前があって、搭載されている機体はザクでありゲルググという名前を持ちます。

 実は、そいう意味でヤマトは驚くほど固有名詞が希薄です。名前が付いた宇宙艦の数は極めて希少です。膨大な数の宇宙艦が出てくる「さらば」ですら、固有名詞を貰っている艦はごく僅かです。ヤマト、アンドロメダ、ゆうなぎぐらいかも。古代が乗っていた護衛艦にも名前が付いていません。搭載機はさすがにデスバ・テーター等の名前をいろいろもらっていますが、作中で名前はほとんど出てきません。コスモタイガーも単座と三座に固有の愛称が存在しないし。

 考え見れば「イセリナ恋のあと」とか「ククルス・ドアンの島」とか、あまり主要ではない脇役にもみんな名前があって、説明無しに「ドロスはよくやっている」などと言ってしまうガ○ダムと比較して、ヤマトは重要な役割を持っていたはずのディンギルの少年すら名前を貰っていません。

この差は何だろう? §

 映画を何本も見ていて気付きましたが、ぶらっと来て予備知識もなく映画を見ていく観客が、複雑な設定や多数の固有名詞を覚えられるはずがありません。ですから、まず固有名詞をできるだけ削って最小限に落とし込んでいく作業が映画には必要とされます。これが「劇場型」で、ヤマトはこれにあたります。

 一方で、映像作品であっても、映像に入らないドラマがいくつもその世界では進行していて、たまたまカメラが切り取ったものだけを見せると思えば、「その人物が自然に発声する固有名詞は、観客が知っている、覚えられるに関係なく言うのが自然」とも考えられます。これが「設定型」です。そういう意味でガ○ダムは「設定型」でしょう。

 では、「劇場型」と「設定型」のどちらが良いのでしょうか?

 実際に最近映画を見ていて思いますが、「劇場型」の方が良いと思います。

 なぜかといえば、実際に予備知識もなくぶらっと映画を見ている私の立場から言えば、「劇場型」には入っていけるが、「設定型」には入っていけないと感じるからです。つまり、間口の広さの差です。コアなファン層を持つ作品は「設定型」で良いのかも知れませんが、それは間口を狭めることになってしまいます。

オマケ §

「それで何が言いたいわけ?」

「うん。だからさ、ドメル艦隊というのは、多数のミサイルがヤマトの左右から襲うという映像の迫力でいいってことさ」

「つまり?」

「リアリティからいえば、特定の1空母に1機種なんてことはない。色を付けて区別するということもしない。艦長が搭載機に乗り込んで飛んでいったりもしない」

「うん」

「だから、本当は第1波、第2波と戦爆連合の攻撃部隊がヤマトを波状攻撃していてしかるべきなのだ」

「そうだね」

「でも、そうなっていないのは劇場型ってことだ。過剰に複雑な設定を入れようとしていない」

「なるほど」

「でも、映像には量の迫力があって見応えがあるからそれでいいのだ」

「うん。客は覚えることが少ないからすぐに入って行けて、映像で圧倒されればそれでいいわけだね」

「目の肥えた今時の客は圧倒されないだろうけどね」

「いやー、でも目の前にドリルミサイル装備の重爆撃機がワープアウトしてくる迫力とかも、なかなかのものだったと思うよ」

「ドメルが勝利を確信した瞬間だろうね」

「女性形で語られるフネの穴に、ずぶっと挿入して」

「言い方が嫌らしいよ」

「入れてしまえば勝ちという感じだろう。入れた後で、スポッと抜かれて拒絶されるとは思ってもいないドメルだったのだろう。いくら外から抑えても中から押し出すことまでは抑止できない」

「おいおい」

「だから復活編でも、特に重要なフネ以外は名前をもらってない。ヤマト、ブルーノア、輸送船ゆきぐらいかな」

「登場人物は多いけどね」

「それは、みんなで動かす巨大艦というテーマの宿命みたいなものだね。でも、それでも固有名詞は刈り込まれている」

「というと?」

「ほら。だって戦闘機隊のパイロットとヤマトのパイロットが同一人物だったり、もう1人のパイロットが船医だったりするでしょう」

「なるほど。そういう意味では人数は減らされているね」

「あと、双子がいるっていうのも、覚えることを減らす工夫の1つだと思うよ」

「おかげで、太助には複数の部下がいるってムードが出せているしね」

「そうやって、多いように見えるが固有名詞を減らしていることの効能なんだろう。そこが、ひたすらザクなんちゃら型と呼んで設定が増えていくガ○ダムとの差なんだろう」

「ザクマリン型とか言われてももうワケがワカラン」

「マリンだったら海のブルーになるんですとか言って見せろよ」

「それってただのバルディオス……」

「話をヤマトに戻そうか。さすがに、いくらジェミーが色っぽいコスチュームでもそれで話を閉めたらまずい」

「で、結論としては?」

「フィクションとしてのリアリティとは、事実に即していることでも架空の事実に即していることでも、設定書に即していることでもない。観客が受け取った情報をもっともらしいと思えることにあるわけだ」

「うん」

「そこで、観客が受容できないぐらい多くの情報を投げても受容できない。どれほど正しいことを言っても、受け止められなかった情報からリアリティは感じられない。そもそも情報が届いていないわけだからね」

「それで?」

「だから、ドメル艦隊はあれで良かったのだ。戦闘機がいて、急降下爆撃機がいて、攻撃機がいて、とても空母に乗りそうもない大型爆撃機をホーネット上のB-25のように乗せて最後に出てくるというだけでいい」

「それでいいわけだ」

「戦闘空母にホーネットとかグラーフ・ツェッペリンのような名前を付けるべきではなかったも、といえる」

「余談だけど、よく考えると装甲と砲戦力のある中途半端な空母っていう点で、グラーフ・ツェッペリンと似てるのかもね。今、気付いたけど」

「でも、人気が高いんだぞ、戦闘空母は。新たなる旅立ちのデスラー艦が戦闘空母になっちゃうぐらい」

「やっぱり、飛行甲板がひっくり返ると砲塔が出てくるギミックにみんな驚いたのかな?」

「あれじゃ、甲板の下に艦載機を搭載できないけどね」

「実際は無理だけど、実現したら最強かもね」

「かなり無理だけどね」

「でも、あれは良かったよ。映像一発で戦闘空母がどういう存在かを分からせてくれる。理屈じゃないし、アニメ誌にリークされた設定書でもない。テレビを見ている人が誰でも一目で分かる」

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