たまたま見知ってのけぞった話です。
まさか!
今更ヤマトの本が出るというのか!
しかも、冬に来るであろう実写版の本ではなく、第1シリーズがメインとは!
ちなみに、以下の経歴を見てピンと来ました。
★超ど級「ヤマト」マニア・伊藤秀明の戦歴
1975年 私設ファンクラフ「ヤマト・アソシエイション」編集下っ端
1977年 月刊OUT6月号「ヤマト特集」編集下っ端
1977年 雑誌用セル画イラストレーター兼編集者として活躍
1983年 ラポート刊ヤマト大事典・編集
1984年 「サンダーバード」商品収集&研究に没頭、関連本編集で活躍
1999年 劇場版「ヤマト」5作品DVD解説ライナーノーツ・編集
2000年 「宇宙戦艦ヤマト」DVDメモリアル・ボックス64ページ解説書編集
2008年 1/700プラモ付きTV「ヤマト」DVDボックス・24ページ解説書編集
実は、この『2000年 「宇宙戦艦ヤマト」DVDメモリアル・ボックス64ページ解説書編集』の凄さに圧倒されて、ヤマトを見る視線が変わりました。第2話の軍艦マーチ問題の件も見事にクリアになったし、長島の引退試合と重なる可能性があったという記述もこの解説書です。実は、本編なんぞ昔のLDボックスで見ても大差なく、この解説書こそが本当に意味があり、研究の最先端成果が披露される場だったのではないかと思います。
だから、本当は「もう持っている」などと思わずにこういうアイテムは買うべきだ……とは思うものの、なかなか先立つものがねえ。
そういう意味で今回の本は、あくまで比較的高い本であっても、まだしも資料として買える範疇なのが有り難いところ。DVDとか模型のようなあっても持てあますオマケが無いのが良いですね。
今回は、あくまで松本サイドが主役であり、ヤマト全体を語るには不十分という懸念はあるにせよ、それでも「現場にいた人物」の証言や資料は素晴らしい価値があると思います。
オマケ §
「というわけで、のけぞったわけだが」
「これは凄いね。本当に出たら、ヤマトしったかぶりの自称マニアなんか、追いつけない場所に研究の最前線が行ってしまうかも」
「でも、これって本当に採算が取れるのだろうか」
「けっこう値段も高いね」
「いや、想定されるビジネス規模を考えれば高くはない。ヤマトブームの時代にうじゃうじゃ出てきたムック本とは規模が違いすぎると思う。むしろ専門書の採算ラインを考えれば高くない」
「でも高いよ」
「そうだ。でも高いんだよ。子供に金がかかってしょうがないパパとママが青春を語るために買えるような本じゃない」
「じゃあ、結局ミスマッチなのかな」
「そもそも企画そのものが猛烈に時代とミスマッチしていると思う」
「じゃあ、この本は失敗?」
「いや。実はさ。この本はもう売れる売れないに意味がないのだと思う」
「というと?」
「ヤマトに何らかの決着をつけないと先に進めないという人たちがいるのだと思う。出す方も買う方も、そういう人がやっているのだろうと思う」
「たとえば?」
「分かりやすい例は宮川彬良さん。交響組曲を再現して自分で指揮棒を振って演奏しないと先に進めなかったようだ。しかし、その後はNHKなどでも大活躍だ」
「そうか。右も左も分からない子供のうちからヤマト現象に巻き込まれて無意識レベルですり込まれてしまったから、決着は不可避ということか」
「そういう意味ではこちらも同じだね」
「そんなもんかい?」
「そんなもんだ。そもそもオータムマガジンで延々とヤマトの話を書いているのも、そういうことだ」
「それで、決着は付きそうなの?」
「実は、決着は付けられるかもしれない……という気がしてきた」
「ほほう。それはどういうこと? 決着は付かないと思っていたのに、それが変わったということ?」
「そうだ。死ぬまでただのヤマトファンという気もしていたが、もしかしたらそうじゃないかもしれない」
「というと?」
「納得が欲しいのであって、納得したら終わってしまうのかもしれない」
「納得?」
「表現としてのヤマトは子供の頃に見たが、納得はできなかった。しかし、徐々に納得の糸口が見えてきた」
「というと?」
「社会現象としてのヤマトは、社会を理解することで始めて解釈できるようになる。だから、侍ジャイアンツの後番組であるとか、長島の引退と時期が重なるという認識を得て始めて納得に向かえる面があるわけだ」
「そんなことで納得しちゃえるの?」
「納得は個人の心情の問題だからな」
「心情か」
「ちなみに、1つ気づいた。長島は王と一緒にON砲と呼ばれていた。そのあとは、長島を張本に置き換えてOH砲と呼ばれた」
「それで?」
「実は、波動砲をHADOH-HOと表記すると、張本のHAと、王のOHを含むのだ」
「ええっ!?」
「このあたりは別に誰も意図していないネーミングと思うが、そこに時代の空気という何かが横たわっているのかもしれない」
「そうか。その空気が見えると納得に至るのかもしれない、ということだね」
「うん。公式設定で何が正しいとかいう話はもうどうでもいいんだ。ヤマトを作っていた生身のスタッフがどういう空気を感じていたかこそが重要なんだ」
「そうか。だから、もはや歴史の領域なんだ」
「うん。だから、手法としてはもはや歴史研究なんだよ」
「作品と時代は切り離せないってことだね」
「だからさ。誰でも気軽に録画できる今の時代にもうヤマトは分からない」
「見る方も真剣さが違ったからね」
「見る方も真剣なら作る方にも影響するだろうしね」
「そうなるともう同じような作品は出来てこないかもね」
「でも録音はできたんだ」
「そこで、芳醇な音楽世界が花開く下地があったわけだね」
「うん。だけど、もうそういう時代も終わってしまった」
「音楽だけ突出する時代ももう終わったと」
「もはや、iPodですら、ただの音楽プレイヤーではありませんと宣伝される時代だ」
「音楽の立場が軽いね」
「であるからこそ、現代の常識では把握できないヤマトの時代を把握し直す必要があるわけだ」
どうでもいい余談 §
「ちなみに、どうでもいい余談を言うとだな」
「うん」
「DVDとかLDで嬉しい衝撃というのは、やはり凄くいいオマケが付いてきたときだ」
「問題のヤマトDVD以外というと、具体的には?」
「ヤマトの第1シリーズのLDボックスには、実は余った時間に残っていた音楽の音源素材を収録してあった。もちろん映像はない。しかし、凄くいいオマケだった。後からCDでまとまって出たから今ではあまり意味はないんだが」
「なるほど。LDなのに映像無しか」
「それから、スペース1999第1シリーズのLDボックス4個分割版」
「それは何がいいんだい?」
「日本ではエピソード順が並び替えてあるのだが、本来の話数と日本での話数が分かるようになっていた。それを見て、日本語版のスタッフが、いかに熱心に作品を再構成したのかが分かる。地球製宇宙船と出会う話を手前に持ってきて、ブラックホールを通過して未知の宇宙に出てしまう話をその後に移動させたのは、辻褄合わせとしてはよく出来ている。しかも、日本版では人類創世の秘密的なエピソードが最終回になってはまっていたが、実はこれも本来は中間の何の変哲もないエピソードなんだ」
「なるほど」
「しかし、後から出たDVDボックスのスペース1999にはそういう資料的な価値が無く、がっかりしてしまった。まあ、そのあとでしっかりしたボックスが再発売になっているのだが、さすがにそこまでは金銭的に買えなかった。スペース1999は第2シーズンまでDVDボックスを買ってもうすっからかんだ。こんなことなら、イマイチの第2シーズンは買わずにおけば良かったかもしれない。でもまあ、第2シーズンはLDでも出なかったし、やはり買わないのは無理か」
「第2シーズンになぜ入れ込むの?」
「関西では放送されたのに、関東ではなかなか放送されなかった恨みがあるからだ」
「幻のトロン・ミランの逆だね」
「うん、逆のパターンも実はあるってことだ。他に地方差といえば、ヤマトがハイジの裏番組ではなかった地方がうらやましいとかね」
「やはり話題がヤマトに戻るか」
「ちなみに、スペース1999のLD全部買って今井のイーグルもらえるはずだったのに、なぜかもらったのはクラウドベース。どーなってるの? まあ大人の事情があるだろうことは容易に想像できるけど」
「クラウドベース?」
「女性だけの戦闘機隊がいる空中空母だな。いやだから、今更女の子を並べるような萌え作品見てもつまらないわけだよ。すごい昔のネタだから」
「昔ねえ」
「そうか。だから、ヤマトなんだ。追跡戦闘車が疾走するような時代の空気があってこそ、やはりヤマトなんだろうな」
「ガ○ダムがビームサーベルでぶった切るような空気とはまた違うということだね」
「分かったぞ。だから伊藤秀明さんのヤマト経歴にもサンダーバードが出てくるんだ」
「同じゲリー・アンダーソン特撮だしね」
「そういう意味で、おそらく伊藤秀明さんと私は同じ時代の空気を吸っているよ。こちらもサンダーバード嫌いじゃないしね。ってか凄い研究者も多いから何も語ってはいないが、語ると止まらないぞ。なにせ、LDではTVシリーズのボックス2つに、劇場版のボックスまで買ったし。まあLDは手放しちゃったけど」
「ってかLDとかいう話題が多すぎるぞ」
「しょうがない。そういう時代を生きてきたからな」
「でも分かってきたぞ。スペース1999って言ってるのは、どちらかと言えばサンダーバードだと凄い研究者が既にいるからだろう?」
「そういう面も否定はできない。が、それはそれとして、やはりスペース1999は特に好きだな。もちろん第1シーズンね」
「そうなの?」
「うん。だって、ヤマトはネタが当たってもぜんぜん避けようと思わないもん。むしろ声援を送っちゃう」
「業が深いね」
「そうさ。そこから抜け出すことが目的であって、素晴らしい研究成果を自分の手で出したい、なんて思ってないからさ」
余談第2シーズン §
「書き込む前に念のためチェックしてのけぞった」
「なに?」
「伊藤秀明さん。ここで話題にしたスペース1999のLDボックスの解説の文章にも参加してる」
「なんと」
「ぜんぜんそういう意図はなくて、ただの例としてLDのスペース1999を話題として出したんだけど、実は参加してた。メインのライターじゃないようだけど、重要な情報を書いてくれている。しかも記名記事として」
「つまりなに?」
「世界はつながっていたんだよ。最初から。世界はどこまで行っても終わりがないが、一回りして同じ場所に戻ってくるんだ」