「今日は8月6日だから核核とマスコミもうるさいね」
「まあしょうがない。問題としては現在進行形だからね」
「しかし、核廃絶の最悪のシナリオってなんだか分かるかい?」
「さて、核廃絶に口先だけ賛成して実際は捨てようとしない国ばかりという状況かい?」
「いいや。実際に核廃絶が達成できたあとの話だ」
「それじゃ未来はバラ色じゃないか?」
「そうとも言い切れないね」
「それはなぜだい?」
「核兵器は兵器として特別だと思うかい?」
「特別じゃないかな。人類を滅ぼせるし、放射能も怖い。放射能の後遺症も怖い」
「いやちょっと待て。多数の兵士が1人1人殺してまわれば人類抹殺はできるし、やばい後遺症が残る兵器が核兵器だけというわけでもない」
「1人1人殺してまわるなんて、気が遠くなるね」
「でも実際にそれは可能なんだ」
「金が掛かりすぎる。机上の空論だろう」
「いや問題はそこにある」
「というと?」
「いいかい。核兵器が価値を持つのは実は破壊力の大きさではない」
「ええ?」
「核兵器は同等の破壊力を通常兵器で揃えるよりも安上がりなんだ」
「値段の問題になるのか?」
「そうだよ。そして、核兵器を廃絶したからと言って、様々な国際的な対立構造が消えるわけではない。いがみあう国家が急に仲良しになるわけではない」
「まあ、そうだね」
「そういう場合、脅威は変わらないのに核兵器という安い兵器は無くなってしまう。さあ、次はどうなる?」
「相手も核を廃絶したら脅威は減るのではないの?」
「核を廃絶すると、核の力でやっと均衡を保っていた小国は逆に脅威が増えるんだよ」
「じゃあ、次はどうなるの?」
「安い核兵器という選択肢を失った国家は、高い通常戦力を整備せざるを得なくなる。国家財政は軍事予算に圧迫され、しょうがないから増税だ」
「そうか。それが最悪のシナリオか」
「だからさ。安易に核廃絶なんて言っちゃだめなんだよ」
「そうか。今と同じ世界が核抜きで成立するわけではないんだね」
「それこそ、核廃絶が大増税や第3次世界大戦や大量虐殺の引き金になりかねない」
「じゃあ、どうすればいいんだい?」
「少なくとも核の廃絶を絶対視しないことが重要だ。ゴールは有事の惨劇と平時の損失を無くすことにある。核の廃絶とは、そのための手段の1つに過ぎない。手段だけにこだわるとゴールを見失う」
「でも、日本人は唯一の核被爆国だと言って、核の廃絶を絶対視してるような気がするな」
「使用された側だから、核兵器だけは……という気持ちは分かるが、それだけで全ての問題は解決しない」
「じゃあ核兵器を持てば解決するの?」
「解決するわけがない。難しい問題を山ほど連れてくるが、それを上手く捌けるかは分からない」
「どっちに転んでもダメじゃん」
「だから、核兵器というのは問題の核心ではないのだよ」
「つまり、たとえ核でも核心じゃないわけか。って、結局オチはただのダジャレかい」
「暑いからな。暑気払いに寒いダジャレを一発」
「やれやれ」