「というわけで、ヤマトの2話には戦艦大和」
「回想シーンだね」
「あれは最初に見て凄いと思った」
「というと?」
「実は大和が凄いと思った訳じゃない」
「ええっ? いきなりそれかい」
「まず、駆逐艦。駆逐艦って、艦首の甲板は高いけど、艦橋から後ろは低いんだ。典型的な日本海軍の駆逐艦はそうなってる。そして、その甲板が低くなっているところがきちんと描いてあった。大和を描くだけでなく、駆逐艦もいい加減に手抜きしてないんだよ」
「なるほど」
「あとは敵機」
「機銃をバリバリ撃つと敵がドカーンと爆発するような安易な絵はない。急降下爆撃機も雷撃機もきちんと描き分けられている。急降下爆撃機は急降下して雷撃機はちゃんと超低空を飛行して魚雷を落とすんだ。新たなる旅立ちにもそれに近い描写があるけど、こっちはもっとストレートだ。しかも第2話だ」
「それがそんなに凄い話なの?」
「そうさ。当時の普通のアニメ特撮の水準から見れば破格の描写だろう」
「そうか、普通はせいぜい頑張って大和の資料を集めて描きましたってレベルだけど」
「うん。駆逐艦や敵機まできちんと描いている。やはり破格だよ」
「なるほど」
「そういえばあれだよ。いきなり対空用電探敵編隊を発見!って叫ぶじゃない。あれもクラクラするね?」
「というと?」
「電探なんだよ。レーダーじゃなくて電探なんだよ」
「そうか。普通はレーダーって言っちゃうけどこれは英語だよね」
「日本海軍の呼称は電探だったし、ウォーターラインシリーズとか作ってると組み立て説明書にはっきり電探と書いてある。レーダーとは書いてなかったと思う。まあ、旧日本海軍の軍艦に限るけど」
「そうか」
「まあ問題もある回想だけどさ。でも、それを差し引いても凄かったよ」
「結局大和沈むしね」
「アメリカ軍パイロットの敬礼を受けつつね」
「やはり敗北から目をそむけないのがやはり第1歩だね」
「そういう意味で、ヤマトってのはいかにして負けるのかという負け方を描き続けた作品だとも言える。確かに表面的にヤマトは勝っているように見えるが、表面的に勝っているだけでいつも大きな何かを失っているんだ」
オマケ §
「実は別件でDVDを再生してついでにこのシーンを見た」
「それで?」
「実は今まで気づかなかったけど、秋月型が描き分けられていることを発見した」
「え?」
「秋月型ってのは、長10センチ高角砲連装4基計8門を搭載した対空用の駆逐艦で、水雷戦隊を構成する昔ながらの雪風のような駆逐艦とははっきりと形が違うんだ」
「つまりどういうこと?」
「大和最後の出撃では、護衛の駆逐艦にどちらもいたわけだ。そして、描き分けられているということは、実は大和のみならず、護衛の駆逐艦にまで丁寧な愛情を注いでいたことになる」
「マニアックということ?」
「いや、これは愛だね」
「愛か」
「ヤマトだから愛だよ」
「そ、そうか……」
「というわけで、秋月型を今になって見出してさ。惚れ直したぜ!」
「やれやれ、これで本当に卒業できるのかね?」