「というページがあるのだけど」
「うん」
「君も何か意見があるのではないかい?」
「そうだね。たとえば以下のような表現があるのだけどさ」
前に広告代理店の方の講演を聞きましたが、元来アニメだというだけで視聴者の年齢層が限定されるので、公共性の高い放送に向かないんだそうです。それを諸条件整えて可能にしてきただけで、だからまず再放送からアニメがなくなっても、おかしくはないんですよね。
「これが何か?」
「むしろ、現在の不況期に入ってからむしろ再放送は増えていると思うわけだ。だから、まず再放送からアニメがなくなっているという印象とは少し違う」
「どういうことだろう?」
「ケロロ軍曹の深夜版のAパートは土曜版の再放送。他に、銀魂も今は再放送。見てないけど、スティッチも再放送があるみたいだ。他に、フェアリーテイルも日曜の午前だったかに一時再放送をしてた。見てないけど。他に、夕方のアニメを深夜にもう1回流す行為も最近増えた気がする。あにゃまる探偵 キルミンずぅとか。見てないけど」
「それで君はどう思うの?」
「子供の頃、再放送の枠というのある程度決まっていた。長期休暇の午前中とか、一般的な時期だと午後5~6時台とか。新作は7時台がほとんどだった」
「でも、今はその時間にも新作やってるよね」
「東京12チャンネル(今は地デジ7チャンネル)が午後6時だったか5時55分に、月~金すべての新作アニメをぶつけてきたあたりから風向きが変わった気がする」
「どう変わったの?」
「新作の粗製濫造が始まって、再放送はどんどん新作に食われたという印象だ。逆に午後7時台のアニメはめっきり減った。ゴールデンタイムからすべり落ちた感じだ」
「話が微妙に食い違うね」
「気にするな。こちらも印象をいい加減に語っているだけだ」
「ははは」
「だからさ。『諸条件整えて可能にしてきた』人たちが再放送ではなく新作を放送するために時間を使うようになって、必然的に再放送は滅んだのだと思う」
「ビデオの普及とかも原因の1つじゃないかな?」
「それもあるだろう。旧作ならビデオでいつでも見られるからもう見ない層も増えたのかもしれないしね」
「だから新作シフトか」
「問題はだな。それだけの新作に本当に需要があったのか、ということだ」
「需要があるから作ったのじゃないの?」
「スクール商法でスタッフ量産しちゃったので、需要に関係なくアニメも量産したのではないか、という印象がある」
「そうか。需要の有無に関係なく食うために作らなくてはならないのか」
「もともとユークの兵器生産は過剰だったんだ。じゃない、もともとアニメ作りに必要とされる人数などそれほど多くはない。これは、社会の非生産部門に要する人数の割合の問題と言ってもいい」
「それはスケールがでかい話だね」
「でも、やはり永遠には続かない。この世に永遠なんて無いんだ。盛者必衰なんだよ」
「そうか」
「この問題は無時間性の病理と呼んでいる問題と絡むが煩雑になるから割愛する」
「うん」
「というわけで、いくら永遠にアニメを作り続けようとしてもどこかで破綻する。金銭的にね。だからさ、どっちしても適正規模まで縮小するしかない。その際、再放送よりも新作を優先するのは当然だ。再放送しても、1枚いくらで仕事をしている末端のスタッフには金が入らないからね」
「そうか。再放送なら新規に絵を描くわけではないから、そこまでお金がまわらないんだね」
「うん。そうだ。しかし、そうやっても、業界の規模が需要に比して大きすぎるという問題は残る」
「なるほど」
「従って、新作信仰が崩れてくると、一部にはやはり粗製濫造の新作より視聴率が取れると予測できる評価の定まったアニメの再放送がいいという発想を持つ者も出てくるのだろう」
「だから、一部が再放送になってしまうのか」
「再放送の方が安上がりだしな」
「それが不況期には重要だったりしてね」
「って、信じるなよ。部外者が感想を書き飛ばしているだけだ」
「話はそれだけ?」
「強いて言えば、アニメという表現形式の賞味期限そのものが切れかかっていると思う」
「というと?」
「映像表現が多様化して、アニメは特権的な立場を失いつつある。かつてあり得ない世界を描くのはアニメの特権であった。絵で描けば動くからね。特撮だとセットを組まないとならないから、よほどのトリックでも仕込まないとなかなかできなかったし、金も掛かる。しかし、アニメなら絵で描けば一発だ」
「でも、今はCGとかあるよね」
「うん。だから、アニメの特権性はもう無いし、アニメのニーズもむしろ減っているのに、アニメの本数を増やそうというのは無謀なんだ。アニメに出資すれば儲かるという幻想を広めて何とか金をかき集めてはみても、長続きはしない」
だからヤマト §
「それでこの話がヤマトとどう関係するの?」
「だからさ。ヤマト復活編というのはアニメを特権世界から引きづり下ろしてしまった作品なんだよ。かなりの部分がCGで、しかも境界線が分かりにくい。更に、実写版になるともうアニメパートすら無い」
「でも、明らかにアニメより情報量が多いヤマト発進が描けているよね」
「これでいいのだ」
「時代の流れとしては正当な成り行きということだね」
「そうだ。では行くぞバカボン」
「はい、パパ」
オマケ §
「ここにはもう1つ、テレビそのものの賞味期限切れが近いという問題もある」
「アナログ停波ってこと?」
「いや、地デジももうダメだろう。無くなることは無いにせよ、未来の本命ではもういられない」
「これだけ泥棒行為が広まったらねえ」
「せっかくCM入れて放送しても、CMをカットしてすぐネットに流れて、マニアはネットから落として自分でDVD焼いておしまい。CMは見てもらえないし、DVD等の商品も売れない」
「マニア向け商品を売る手段ではもうあり得ないね」
「家事の片手間にテレビを見ているような層に受ける番組が主流になるんだろうな。そういう層は別に熱心に録画してネットで不正コピーを流通させようとか思わないから」
「でもCMの通販でつい電話しちゃいそうな層だよね」
「そうだ」
「それで君はその状況をどう受け止めるの?」
「うーん、あまり関係ないな」
「えー、関係ないの?」
「ヤマト実写版は見たいが、あれは劇場で公開されるものだ。テレビがどうなってもあまり関係ない」
「ほ、他のアニメは?」
「別に、どうでもいいし」
「でもさ。ワンピース最後まで見たいとか思わないの?」
「アニメが終わってもコミックで読めば十分。ってか、アニメは引き延ばしすぎ。ちょっと冗長ですらある。まあリボーンとかNARUTOとかもそうだけど」
「原作付きアニメの存在意義はあまりないってこと?」
「ぜんぜん無いわけではないのだけど、相対的に低くなっているかな」
「アニメ化に積極的賛成とも言えない意見だね」
「音と色が付くけど、その代わりに原作の繊細さが集団作業のアニメの中で消えていくなら、良いことばかりとも言えないな。特に、アニメ側の独自解釈、独自展開がほとんど封じられた状況ではね。付加価値も少ない」
「原作と食い違う設定を入れると後で苦労するから嫌がるってことだね」
「完結している作品なら設定をいくらでも変えられるが、未完結の作品だと書かれていない未来の展開が決定的に食い違ってしまうこともある」
「ファンも、全く同じであることを要求するケースがあるようだね」
「馬鹿げた話だ。アニメには別のカラーが出て当たり前だ。それどころか、アニメーターの個性すら出てきて同じアニメでも絵が違うのが当然だ」
「そこまで味わってこそのアニメファンということだね」
「でも、そういう意味でのアニメファンはおそらく絶滅危惧種だ」
「じゃあ、この先どうなるの?」
「アニメとテレビがたとえ滅んでもCG作品にも声優は必要だから、声優ファンは残るのだろう」
「なるほど、驚くほど彼らに危機感がないのは、生き残れるからなのだね」
「でも、実際にはアニメ映画でも声優が採用されない頻度が増えている」
「宮崎アニメ?」
「いや、それほど極端ではないが、他のアニメでも同じ傾向が出ている。クレシン映画の花嫁(希望)軍団で職業声優が半数以下とかね」
「なるほど」
「本当なら声優の卵と声優ファンは安泰ではないかもしれない。まああくまで仮定の話だけど」