「前人未踏の29万6千光年の旅をなめるなよ」
「え?」
「そう書いたあとで、はたと気づいた」
「というと?」
「ヤマトの本質はそこにあるのではないか」
「前人未踏ってこと?」
「特別に美味いスープもといワープを手に入れた最初の地球船であるヤマトは、体験する全てが人類初になるんだ」
「そうだね」
「出会う相手もみんな未知。コミュニケーションを上手く取って切り抜けねばならない」
「うん」
「でも、ガ○ダムになるともう違う」
「既知の宇宙の中の出来事ということだね」
「連邦軍人とジオン軍人はもはや交換可能なんだ。バーニィご一行の嘘がばれたのは、南半球では季節が逆になるという事実を踏まえなかった嘘がばれたのであって、ジオン軍人であることがばれたわけではない」
「そうか。人間の問題ではなく、単なる所属の問題に過ぎないわけか」
「だからジオンのスパイだったミハルは何の違和感もなくミサイルをジオン相手に撃てるわけだ」
「イデオンになると相手は未知だね」
「しかし、あくまでソロシップが向かうのは既知宇宙なんだ」
「地球に逃げ戻るってことだね」
「拒絶されるけどね」
「うん、もう戻れない。太陽の牙だぐら~む♪」
「いや、後半は要らないから。ダグラム関係ないから」
「すまん。もう戻れないと言ったら、つい」
「やはりそういう意味でヤマトは異質だ。ヤマトは前人未踏なのだ」
「復活編では既知宇宙しか航海しないね」
「でも、移民船団を届けるというのは、それまで誰も成功しなかった前人未踏の快挙なのだ」
オマケ §
「だからさ。前人未踏ってのは反逆なんだ」
「なぜ?」
「要求された秩序というのは、囲われた柵の中で命令通りに過ごせという話だ」
「そうか。柵の中は既に誰かが行ったことがある世界ということか」
「そうだ、それが秩序だ。未知を含む完全な秩序はあり得ない。予測不能の事態を含んだら絶対のルールは作りようがないからだ」
「じゃあ、柵の外に行くことは全て反逆?」
「そうだろう。国家だって、役人だって、そういう根性があるときもある。そういう冒険をやらないと前に進めない時もある」
「じゃあ、前人未踏を否定して、既知世界で過ごすってことは?」
「柵の中で大人しく飼い殺しにされるってことだ」
「悲惨だね」
「でも、今の日本はまさにそういう方向に進んでいるだろうね」
「救えないの?」
「結局、1970年代にヤマト否定の風潮が出てきた時からのマイナス指向だからな。もう手遅れかもしれんぞ」
「1970年代から既に始まった没落ってことだね」