「この文章は、SPACE BATTLESHIP ヤマト初日翌日に書いているぞ」
「うん」
「じゃ、行くぞ。落ち着いた後の感想だ。ただしノベライズを含め、既に書いた感想は繰り返さないぞ。(忘れてダブって書いた部分は除く)」
- 波動エンジンはデザインがまるで違うのに、2つのリングが回転するのだ。回転方向は1つ逆になるけど
- 南部はやっぱりメガネ君
- 佐渡と徳川と古代が酒を飲むシーン。アニメならまずあり得ない。佐渡と徳川の声優は同じだから。せいぜい「何をさわいどるんじゃ」「うるさいぞ」が限界。実写だと俳優が違うからずっと成立させやすい
- 不意打ちでヤマトの全兵装使用不能! しかも、「久しぶりだねヤマトの諸君。また会えて光栄の至り」とデスラーが出てくる
- 最後に敵地に乗り込むとき、古代が斎藤に言うのは「生還は期しがたい」
- テレザートを目の前にエンジンを切って流れに身を任せるのは宇宙気流の変種だ。必死に耐えて一気に反撃して殲滅
- 「お次はトンネル潜りだ」「ほいきた!」(※)
「気付いた点を列挙しただけみたいだけどな。でもネタバレ対応なのね」
「※は要説明だからちゃんと説明するぞ」
「説明頼むよ」
「お次はトンネル潜りだ」「ほいきた!」※ §
「こんな台詞ヤマトにあったっけ?」
「無い」
「じゃあ何?」
「宇宙からのメッセージ。1970年代後期のヤマトブームあるいはSF映画ブームが産み落とした映画の1本だ。惑星大戦争の失敗を踏まえて世界的な規模での邦画特撮の反撃を意図して作られた最終必殺兵器だ。不発に終わったけど。おいら大好き」
「どういうこと?」
「小型宇宙機が惑星に垂直降下してそのまま岩のトンネルに入っていくシチュエーションは、ヤマトにはたぶん無い」
「そうだね」
「レンズマンでも垂直に降下していくシチュエーションがあった気がするが、岩のトンネルに入るわけではない。あまり似ていない」
「ということは?」
「以下のようなことが言えるのかもしれない」
- SPACE BATTLESHIPヤマトはポスト・ヤマト文化の一部まで取り込んでいる
- 邦画特撮の世界への挑戦という意味では実はヤマトというより宇宙からのメッセージの直径の子孫である。その遺伝子も間接的に受け継いでいる
「でも、本当に宇宙からのメッセージなんて意識してる?」
「同じ世代の同族なら当然見てるだろう」
「同族?」
「いやね。戦国自衛隊(旧映画)にあったと記憶するんだよ。同族じゃ、って台詞が。タイムスリップした自衛隊員の顔を見て、昔の武士が言うんだよ」
「ははは」
「いや、冗談抜きでさ。山崎貴監督とかこのへんの話題まで通じてしまう可能性があるなと思う。思うと思わず言っちゃうじゃない」
「同族じゃ、って?」
「実はさ。この映画、カリオストロの城と公開日が同じなんだ。どっちも1980年の正月映画で1979年12月15日封切り。おいら、どっちを見に行くか最後まで悩んで戦国自衛隊を選んだ。ちなみに、カリオストロの城は当時としては超不人気アニメだったが、おいらは注目していた」
「それ自慢?」
「もちろんさ。と言いたいが、実際はカリオストロの城じゃなくて戦国自衛隊を見に行ったから自慢にもならん。子供には時間はあっても金がないんだ」
「それで?」
「でも、小説でもなくリメイクでもないこの戦国自衛隊の映画の話ができる人がどれほどいるかというと怪しい。カリ城ならうじゃうじゃいるけどね」
「なるほど。その多数派層を突破して一歩先まで行ける可能性を感じたわけだね」
「たとえ戦国自衛隊は見てなくても、マイナーなSF映画の話をしたとき、それ見たことがあるというリアクションが返ってきそうな予感がある。えっ、あの映画知ってるんですか?って驚きはありそうな気がする」
分かったぞ §
「ここまで書いて突然分かった」
「何が?」
「SPACE BATTLESHIPヤマトというのは、メカより人間が主役なんだ。異常状態に投げ込まれた人間が何をするのかというドラマなんだ。そこでメカは主要な役割を担わない。モビルスーツが重要な役割を担ってしまうガ○ダムとはそこが違う」
「うん」
「でもさ。この時代の映画っていうのも、同じなんだよ」
「ええっ?」
「宇宙からのメッセージでも、凄い特撮でガバナス戦艦かっこいい(少数派の意見)と言ってもさ。実はガバナス戦艦なんてストーリー上どうでもいい脇役なんだよ。それどころかガバナス要塞なんて登場そのものがカットされている」
「じゃあ、何が主役なの?」
「人生に挫折した8人にリアベの実が届き、再起するところがいい訳だよ。夢が戻ってきたんだ」
「なるほど」
「戦国自衛隊でもさ。決戦前夜に後家さんの家に忍んでいくと敵の兵士も目的は同じでジャンケンして順番を決めるとかさ。でも決戦になると敵同士で殺し合うんだよ。戦場で出会ってしまうんだよ」
「ってことは?」
「実はさ。SPACE BATTLESHIPヤマトってのは挫折した古代進のところに通信カプセルというリアベの実が落ちてくる話なんだよ」
「ええっ?」
「ああそうか。最初はさ。ここで、挫折した古代進のところにヤマトというリアベの実が落ちてくる話なんだよ、って書こうと思った」
「うん」
「でもさ。落ちてくるのは通信カプセルだと思って書き換えたが予想以上にぴたりとはまった」
「どういうこと?」
「SPACE BATTLESHIPヤマトにサーシャはいない。サーシャの宇宙船もない。落ちてくるのは通信カプセルだけ。手に持てる程度の黒い塊。これはリアベの実なんだ」
「そうか。リアベの戦士に選ばれた古代進がヤマトに乗って戦闘班長になり、艦長代理にまで上り詰めるのは必然か」
「だからさ、従卒ロボットの遺体を打ち上げてうちの司令官おかしくなったんじゃないかと言われるジェネラル・ガルダこそが古代進なんだよ。だからさ。古代進はベバ2号という従卒ロボットを従えている必要があるが、それがアナライザーなんだ。しかもガルダなら、10代の若者のやる役じゃない」
「なるほど。宇宙からのメッセージではビッグ・モローだね」
「ああ、分かったぞ」
「何が?」
「可能性を本物の希望に変えようってのは、要するにドン・キホーテになぞらえて敵地に降下するガルダと同じなんだと。さあ行くぞ、サンチョ・パンサ」
「ええっ?」
「求めるものがそこにあるかなんて分からない。むしろ無い可能性も大きい。あっても得られない可能性は大きい。でも突っ込んでいく態度がドン・キホーテになぞらえる態度なんだよ」
余談 §
「実はさ。キネマ旬報のヤマト特集でもヤマトを表現するために宇宙からのメッセージが引用されている。今さらロクセイアでもないってね」
「意識されているのは偶然じゃないってことだね」
あとがき §
「なんかヤマトを一歩踏み越えちゃったね」
「山崎貴監督や、脚本主演等の主要スタッフが戦国自衛隊を見ているかどうかは知らない。でも、おそらく宇宙からのメッセージは見てる。なんかそんな気がしてきた」
「そうか」
「宇宙からのメッセージってのは、強突張りの婆を捕まえて記憶を覗くと美しい地球の思い出があったから、地球侵略するという話だけど、これのどこに力点を置くかという問題なんだ。ここで、地球侵略に力点を置いてしまうとアニメ劇場版ヤマトになるが、醜い婆さんの美しい思い出に力点を置くとSPACE BATTLESHIPヤマトになるんだろう。たぶんな」
「そうか」
「もちろん、それは好ましい正しい方向性だと思う」
オマケ §
「というわけで、SPACE BATTLESHIPヤマトの続編が見えてきたぞ」
「ええっ?」
「せっかく撮った特撮フィルムを有効活用したTVシリーズだ。題してSPACE BATTLESHIPヤマト銀河大戦」
「どんな内容?」
「世界セールスを意識してアメリカでも人気の忍者の要素を取り入れる」
「でも古代はもう死んじゃったよ」
「いいんだ。里を守るために死んだ偉大な男の息子が主役ってことで」
「息子でどうするんだよ」
「だからさ。残されたガミラスが息子の身体に封印されているんだよ」
「それで?」
「凄い力を発揮できるけど、里のみんなからは嫌われて孤立するんだ」
「それで終わるの?」
「いやいや。任務を共にする仲間もできて、里で頼られるヒーローになるんだ」
「もしかして、仲間ってサで始まるクールな男か?」
「良く分かったな。真田サスケだ」
「でも里を抜けちゃうんだね?」
「そうだ。斎藤と一緒に古代と分かれて勝手に敵の中枢を爆破しに行っちゃう」
「いい加減にしなさい」
オマケからのメッセージ §
「あとから気付いたけどさ」
「なに?」
「ジェネラル・ガルダって、1回軍隊をやめてるんだよ。やめても従卒ロボットだけ連れて行くんだよ。で、リアベの実が来て現役に復帰するんだ」
「1回軍隊をやめてから復帰するSPACE BATTLESHIPヤマトの古代と同じだね」
「しかも、やめてもアナライザーは連れて行くわけだね」
The Omake Starfighter §
「今はもう微妙なんだが、むかし、いちばん好きなアメリカ映画は『スター・ファイター』(The Last Starfighter)だった」
「低予算のマイナー映画だね」
「でも、宇宙船をCGで描いた最初期の映画だよ」
「それがどうしたの?」
「でもさ。実は宇宙SF映画なのに、地に足が付いた濃厚な人間ドラマでもあるんだ。トレーラーに住んでいる貧乏少年が主人公でゲームぐらいしか取り柄がない。アーケードのゲームをクリアしてしまうと、本物の宇宙人のスカウトが来る。スカウトが乗ってくるただの自動車が変形して宇宙に飛んでいくんだ」
「へえ」
「しかも、スカウトも本来なら招集できないはずの地球人を自分の利益のために連れてきてしまうから主人公は地球に戻される。スカウトも綺麗な男じゃない。でも味方がやられてピンチだから再招集されて再び宇宙に行く」
「なんかそれ、どことなくSPACE BATTLESHIPヤマトと似てない?」
「表面的には似てないが骨格レベルで似ている。CGの宇宙船と濃厚な人間ドラマ。主人公はスラムで希望のない酷い暮らしをしていているが、再び宇宙に出るチャンスがある。しかも、味方がやられて後がないタイミングで出番が来る。しかもSPACE BATTLESHIPヤマトの独自設定だ。アニメの設定じゃない」
「どういうことだろう?」
「山崎貴監督、日本映画ならヤマトかもしれないが、アメリカのSF映画だったらこれが好きだったという可能性もあるぞ。ずばりこの映画を好きではないかも知れないが、趣味の傾向は凄く近いかも知れないぞ。そうでなきゃ、ミニチュアよりCGなんて路線で宇宙に飛んでいく映画を作るかって」
「それが結論?」
「いいや。だから、SPACE BATTLESHIPヤマトはおいらにとって、とても好ましい映画に見えるのかも知れないぞ、ってことが結論」
「大当たりどころか超大当たりだね」
「ヤマトだからいいんじゃない。いやそれもいいけど。それ以上にヤマトの向こうに広がる夢が実はけっこう近いような気がするのだな」
「それは凄いね」
「以下は余談。実はあらためてWikiPediaを見るまで知らなかったのだが、『2007年に、本作の作中に登場するアーケードゲーム版「スター・ファイター」をほぼ忠実に再現した、ファン製作によるWindows用ゲームがフリーウェアとして発表された』のだそうだ」
「なんと。アメリカのファンも熱いね」
感想 §
「ヤマトを突き抜けて宇宙からのメッセージとスターファイターの世界に行ってしまった。これは凄いことだ」
「どうして?」
「だってどちらも特に好きな映画なんだぜ」
「スターウォーズでもスタートレックでもないのね」
「そうさ。おいらが好きなアメリカ特撮は映画ならスター・ファイター。TVならアメリカン・ヒーロー(The Greatest American Hero)だ。よく憶えておけ」
「星トレックを蹴散らすデンエンチョウフ号を応援できるわけだね」
「未知との挿入はたすまでな」
感想のオマケ §
「なんだ。感想を書いて終わるのじゃなかったのかい?」
「いや、とんでもないことに気付いてしまった」
「なに?」
「アメリカン・ヒーローの主人公はラルフ・ヒンクリー。演じるのはウィリアム・カット」
「それで?」
「吹き替えの声優は富山敬」
「ええっ? 古代進!?」
「というわけで、話が一回りしてヤマトに戻ってきました。ははは」
感想のオマケのオマケ §
「まだあるのかよ」
「うっかり見落としていた」
「なに?」
「SPACE BATTLESHIPヤマトの脚本は並外れて凄いヤマトファンが書いていると推定した」
「うん」
「監督もかなりのヤマトファンらしい」
「それで?」
「実は2人は夫婦だ」
「ま、まさか……」
「つまり推定が正しければ、ヤマトファンのカップルなんだよ!」
「ひぇ~」
「とんでもないオチが付いて終わるな、今回は」
「まさに」
「もちろん、ヤマトファンのカップルなんていくらでもいるが、社会的に承認された映画監督が2人揃って、夫婦でカミングアウトとは尋常じゃないぞ」