「山崎努の演技は凄い」
「どういうこと?」
「『この船を私にください』のあとだ」
「うん」
「『絶望ではなく希望を持ったまま』と言って言葉を切る」
「うん」
「普通なら、そこで終わる。なぜかと言えば、その後に続く台詞は厳しすぎるからだ」
「人類は滅亡するってことだね」
「それは簡単に口にできることじゃないよ」
「そうか」
「でもさ。山崎努は言ってしまうんだよ。『死んでいくことができます』って」
「とても言いにくいことなのにね」
「それをずばっと言ってしまうんだ」
「そうか」
「だからさ。藤堂は沖田に協力してヤマトを沖田にあげちゃうんだよ」
オマケ §
「SPACE BATTLESHIP ヤマト序盤の最大の泣かせどころはどこかといえば、やはり古代守の死だろう」
「そうか。でも、お涙頂戴のキャラの死は、けっこう批判される対象でもあるよ」
「そうじゃないんだ」
「えっ?」
「ここで泣けるのは、死んだら泣けるだろうという話ではない」
「どういうこと?」
「ここは、沖田視点で話が進行するんだ。だから、古代守は沖田艦のスクリーンに登場する」
「うん」
「そして、死んで撤退を支援する決意を述べる」
「そうだね」
「ある意味で、そこまでは予測の範囲内と言えば言えるんだ」
「ええっ?」
「ああいう沖田艦とか古代艦が最先端VFXで撃ち合う映像は、実際の映像は予測できないが、水準は予測できたんだ」
「なるほど」
「でもさ。序盤で予測できなかったことが2つある」
「どれだい?」
「1は森雪の目で始まることで、これはすぐ乱戦に入るから特に大きな印象は残さない」
「うん」
「もう1つは、スクリーンの古代守が喋った後、スクリーン下部にある窓に本当に沖田艦を守るために立ちふさがる古代艦が横から視界に入ってくるのだ」
「言葉だけじゃない、という態度がシームレスに見えるわけだね」
「ここは、ノベライズを読んでも分からない映像のインパクトだ。ここはやられたね」
「そうか」
「しかも、その後で撤退していく沖田艦になって余韻も残る」
「コスモタイガーも付いていくけどね」
「だからさ。ここでのコスモタイガーってのは、いちいち命令されないで自立的に行動する戦闘機隊であり、それも本当は泣かせどころなんだよ」
「ええっ?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトでさ。都市帝国戦で気流から脱出したコスモタイガー隊はそのままヤマトのエスコートに付いているのだが、イーターIIが出てくるといちいち命令されなくても飛び出して迎撃する。実はここも泣かせどころなんだ。自分で考えて自分で決断して行動する人間がコスモタイガーに乗っているってことだ。同志であり仲間であるのだ。けして古代のワンマン戦艦じゃない」
「ええっ!?」
「だから、残存コスモタイガーを引き連れて撤退していく沖田艦というのは、それも泣かせる絵なんだよ」
「そうなんだ」
「しかも、アニメ版ではあり得ない絵なんだよ。ここに戦闘機隊はいないから」
「なるほど」
「しかし、ここでのインパクトはやはり古代守だ」
「そうか、コスモタイガーも含めて古代守が守った命ってことだな」
「だからアニメ版にも無かった、沖田艦の窓から見える古代守艦の絵は、凄く存在感が大きい。しかも、見る側の予想を超えた。ノベライズを読んで予習をしていても、更にそれを超えた。そのうえ、理屈の上で連動しているわけではなく、映像的に連動している」
「そうか」
「だから、序盤最大の泣かせどころはやはり古代守だと思うぞ」
「それ以前に泣いてたようだがな」
「ああ。ヤマトのテーマがいきなり掛かって戦闘シーンってのはそれだけで泣けるけど、そこは誰でも泣けるところだとは思わないよ」