「余談を書く」
「うん」
「昨日、戦隊の映画を見たが、その際、売店はチェックした」
「現在、ヤマトの上映は?」
「TOHOシネマズ府中で1日2回上映。スクリーンも規模が小さいプレミアスクリーンだ。もっとも、プレミアスクリーンの方が内装がいいので、これをデメリットにカウントできるかは微妙だ」
「なるほど」
「というわけで、売店の状況だ」
「さすがにもうヤマトコーナーは無いだろう」
「その通りだ。もうヤマトグッズは置いてない」
「やはりね。もう1月も終わりだし、12月1日から上映した映画のグッズはさすがにもう残らないよね」
「ところが、どっこい。ヤマトグッズは無いな奇妙なことに気付いた」
「えっ?」
「木村拓哉表紙の"T"とか、木村拓哉表紙のキネ旬ヤマト特集(既にバックナンバーだ)と、もう1つ映画雑誌(ヤマト特集あり)を並べて面出しして売っているコーナーがあった。けっこう目立つ場所だ」
「それってどういうこと?」
「とりあえず、ヤマトグッズ買って満足する客が一通り見てしまい、まだ来るのはマニアってことなんだろう」
「木村拓哉ファンとか、木村拓哉表紙の映画雑誌で満足する層ってことだね」
「そうだ」
本題 §
「じゃ、本題行くぞ」
「霊能力者沖田十三って、タイトル意味分からないよ」
「(人名)の嘘と書くなら、枕詞は霊能力者だ。決まってるだろ?」
「は?」
「いやね。『霊能力者小田霧響子の嘘』というコミックがあってね、けっこう好きで何冊か読んだことがあるんだ」
「どんな話?」
「名探偵の推理ものだ」
「ええっ? だって霊能力者なんだろ?」
「嘘なんだよ」
「ええっ!?」
「だからさ。これは霊能力なんて無いという話なんだよ。ちゃんと推理をして犯人を追い詰めるけど、相手を心理的に追い詰める手段として霊能力者という立場が使われるわけだ。あなたの悪事は私の霊能力で暴いたって」
「でも、本当は霊能力じゃなくて推理で暴いたわけだね」
「そうだ。では本題に入ろう」
「うん」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトと宇宙戦艦ヤマトのストーリー上の最大の違いは、やはり沖田十三の嘘にあると見ていいだろう」
「都合よく便利な機械をくれると自分から言い出す便利な女神なんていないわけだね」
「そうだ。スターシャなんて待っていない。実際に待っているのは彗星帝国に幽閉されたテレサで、テレサは反物質世界の人間だから便利な道具なんて持って無い。それどころか服すら持って無い」
「それで?」
「問題は、この嘘をどう解釈するかだ」
「うん」
「そんな嘘をつく沖田艦長は沖田艦長じゃない、というのは簡単だ」
「そうか」
「では、ここで問題だ」
「なに?」
「ヤマト世界最大の嘘つきは誰だろう?」
「はて、誰だろう? 地球に偽装した黒色星団の人たちかな?」
「そこは範囲外としよう。あくまでさらばまでとしよう」
「じゃ誰だろう?」
「スターシャは、イスカンダルがここにあると言ったが、あえてガミラスの所在を教えていない。嘘は言っていないが誤認する方向に仕向けている」
「確かにそうだけど、嘘つきとまでは言えないよ」
「でもさ。石津嵐版になると、行ってみたら放射能除去装置なんてありませんということになる」
「そうか」
「それどころか。スターシャという人物すらいない」
「なるほど。ということは?」
「石津嵐版のスターシャこそが最大の嘘つきだろう」
「なるほど」
「ではここで問おう。ヤマトには嘘という要素がもともと含まれていたが、その担い手であるスターシャはSPACE BATTLESHIP ヤマトに出てこない。ならば誰がその嘘を担うべきだろうか」
「そうか分かったぞ。嘘という要素が弾き出されそうになったが、やっぱりヤマトに嘘は必要だからそれを沖田艦長が背負った訳か」
「そうだ。だから、嘘は沖田艦長の属性ではないが、ヤマトに必要な属性なんだ」
「なるほど。嘘をつく沖田艦長なんて沖田艦長じゃないと言うのは簡単だが、嘘のないヤマトはクリープを入れないコーヒーなんだね」
オマケ §
「ただし、嘘は映画に必須の条件であり、ヤマトであるなしに関わらず必要という見方もできる」
「えっ? 嘘が必須?」
「そうだ。映画は予測可能であってはならない」
「予測可能な映画は見なくてもいい映画ってことだね」
「だから、映画で予測可能な話を正直に語るのは愚策だ」
「確かにそりゃそうだけど」
「嘘で悪ければ、観客に確実にミスリードさせる説明を語らねばならない、と言ってもいい」
「アニメのヤマトだと最初からガミラスはあそこにあると観客に説明されているよね」
「うん。でも、イスカンダルが死の星というのは意外であるはずだ。そこは漠然と理想郷の代表者が話しているように聞こえたはずだ。まさかスターシャ以外墓の下とは誰も思うまい」
「ってか、劇場版第1作の最初のスターシャ死亡編ではスターシャすら墓の下だよ」