「どうでもいいが、この話を続けるぞ」
「というと?」
「アルカディア号の評価という作業が残ったからだ」
「ええっ? ヤマトじゃない」
「そうだ。ヤマトじゃないが、松本ヤマトを評価するには必要なことだ」
アルカディア問題 §
「アルカディア号は艦首正面に砲がない。あるのはラムだ」
「海賊が飲む酒」
「それはラムだ」
「ラムじゃダメなの?」
「ラムは航空機の武装じゃない。艦船の武装だ」
「そうか」
「そうすると、宇宙艦を航空機として解釈する構図が崩れてしまう」
「なるほど、それは微妙だ」
「そこで注目したいのは、アルカディア号の構成要素だ」
「戦艦+航空機+帆船ってことだね」
「そうだ。そこで、航空機はどこにある?」
「翼とエンジンだ」
「そうだ。後部にまとまっている」
「先頭は戦艦のイメージだね」
「だから、艦船の武装であるラムが海賊らしいとしてそこにあると思えばそれなりに筋が通る」
「そうか」
「それともう1つ」
「なんだい?」
「アルカディア号はぬえの手が入っているという意味で、松本先生のイメージとは少しずれているという可能性もある」
「スタジオぬえか」
「それともう1つ」
「まだあるのか」
「アルカディア号の艦首は、実は初期と映画999以降とでデザインが違う。どうすれば良いか、判断が揺れていたという可能性もあり得る」
「凄く微妙だね」
「つまり、アルカディア号はアニメの都合が優先された結果として、松本先生の趣味がストレートに反映されていない可能性がある。特に艦首部分だね」
「そこはヤマトの方がストレートかもしれない、ということだね」
重要性とは何か §
「結局、この問題は松本派西崎派という区別を超えて大きな問題として残る」
「なぜ?」
「松本先生が関与しないヤマトであっても、やはり艦首に大きな穴があって波動砲が付いているからだ」
「そのデザインの原点を模索する行為に、派閥は関係無いってことだね」
オマケ・エメラルダス号問題 §
「さて、もう1つエメラルダス号も忘れてはならない」
「そうか」
「では、エメラルダス号とはデザイン的にどうなのだろう?」
「飛行船がモチーフだね」
「そこでだ。飛行船とはそのものずばり、大型航空機の一種とは言えないかね?」
「あ……」
「翼で揚力を発生させる飛行機ばかり考えていると連想しにくいが、飛行船だって空を飛ぶ機械の一種だ」
「なるほど。宇宙艦イコール大型航空機解釈を持ち出すとエメラルダス号はストレートに解釈できるわけだけ」
オマケ2 §
「だから、アニメの都合に囚われすぎた松本アニメでは、アルカディア号が鉄郎を助けにやってくる必要があったが、開き直った後でそんな展開は要らなくなり、映画1000年女王では雨森始が零戦で飛び立ってアルカディア号はもう出てこない」
「時代設定的に出てこられない、というのもあるけどね」
「ファントム・F・ハーロックの本を持った一式陸攻搭乗員も出てこないってことだ」
