「ついにGW映画の季節が来た」
「それで?」
「震災が直撃してガタガタになった春休み映画の季節は終わったのだ」
「それでクレしん?」
「まだ上映してないタイトルもあるが、今日の時点で気になったのはコナン、クレしん、ガリバーである。でも特にクレしんはどうても見ておきたかった」
なぜクレしん §
「なぜクレしん?」
「客の入りはコナンの方が上かも知れないが、中身はこっちの方が渋い……と思う」
「なるほど」
「たとえ少数派になろうとクレしんの映画は見たい」
「他人の感性なんてしったことではない君らしいね」
「それから、ポスターがモノトーンで凄く格好良かったのが印象的だった」
「そうか」
「あと事前の宣伝。当初はしんちゃんが親を騙していた内容だったが、上映が近づいて流れた版は女スパイに騙されるしんちゃんになっていた。子供が騙されてショックを受ける映画なら見てみたい」
「君らしい皮肉な趣味だ」
ガラガラ §
「スクリーンに入ると、誰もいなかった。劇場係員のお姉さんはおいら1人のために、会場の説明をしてくれたようなものだ」
「そうか」
「あとから客は1人来た。2人でスクリーンを独占状態だった」
「なんと」
「おいらの理想は何か分かるかい?」
「なんだい?」
「ガラガラのスクリーンで左右にも前にも客がおらず、映画独り占め。しかも映画が凄く面白くて、それを見ないみんなに『勿体ない』と優越感を抱ける状況」
「それに近い体験ができたわけだね」
映画本編 §
「映画本編はどうたった?」
「例によって凄くアホらしい中身と、恐ろしく深刻な話が同居していた。というか、お尻とおならという、これだけアホらしい話題で、こんなに大まじめな危機を演出できるとは驚きだ」
「面白かったの?」
「最後まで目が離せない映画であった」
「どんな風に面白かったの?」
「7歳の少女スパイ戦闘アクション映画として」
「しんちゃんじゃないのか」
「実はそうなのだ。この映画はしんちゃんの映画ではない。実はゲストヒロインである少女スパイのレモンの映画なのだ」
「えっ?」
「レモンが、しんちゃんとふれ合うことで変化していくことが主テーマなのだ」
「ええっ?」
「つまりしんちゃんは主役ではあるが、主人公ではないのだ」
「まさか」
「この大胆さが好き」
野原一家ファイアー §
「この映画は、比較的後期のクレしん映画の基本パターンである『アクション仮面が実在しない』世界観にある。もちろん、しんちゃんにスパイの資質はないし、もともとスパイだったという話も無い。野原一家は事件に巻き込まれた普通の家庭でしかない」
「それでも野原一家はファイアーするのだね?」
「する。でも、自家用車で戦国時代の軍団に突っ込む行為に毛が生えた程度のことしかしない」
「でも野原一家は事件に巻き込まれるわけだね?」
「実にくだらない理由でな。けして良く分からない理由で戦国時代にタイムスリップしたり、特別な理由はない。そういう理由付けはとても上手い」
「そうか」
「そういう意味では、家族の映画という側面が大きい。野原一家もレモン一家も大きな役割を持つ」
「そうなの?」
「レモンは親に対する反発という側面も持つ。しかし、母親の説得には応じないのに、父親の説得には応じてしまう等、なかなか微妙な解釈の余地もある」
「そうか」
「そして、いちばん良かったのは娘の裏切りに対して身を挺して娘をかばってしまう父親だな。両親も裏切った娘をたすけてしまうのだ。両親だって、本当は子供が可愛いのだ」
アクション仮面 §
「アクション仮面の偽物が顔出しで出てくるシーンは良かった。こういう子供の夢を壊すような赤裸々な映画、大好きだぜ」
「そんな身も蓋もない」
「それを乗り越えて子供は成長するんだ」
「おいおい」
「ちなみに。しんのすけはアクション仮面のシールを集めてアクション仮面の1枚の絵を完成させようとするが、実はこの絵が完成することはない。非常に意味深な演出だ」
オマケ §
「レモンの家政婦がいい味をだしている名キャラだな」
「メイドじゃないの?」
「メイドと呼ばないところが気骨があっていいところだ。可愛くも無いしね」
「そうか」
「あと、主翼の上にエンジン2機を乗せたジェット輸送機も良かったねえ」
「そんなものまで描写されているのか」
「この映画のもう1つの特徴は、突然便利なものが宙から出てこない点だ。アイテムは全て物理的に準備される」
「たとえば?」
「背中に背負って飛ぶ道具も、あらかじめ準備して地面に隠しておく等だ」
「そのあたりは、カリ城に近いわけだね」
来年は20周年 §
「来年はクレしん映画20周年らしい」
「そうか」
「最後に内容は未定だが来年の映画制作は決定と出た」
「未定かよ」