「松本零士音楽大全(The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999)だけど、凄いことに気付いてしまった」
「それはなんだい?」
「これは10枚組である。ヤマトは1枚目と2枚目である」
「それで?」
「1枚目の最初にヤマトのテーマ(主題歌)が入る」
「順当な選択だね」
「でも、出だしに機械音入りのお葬式バージョンなんだよ」
「えっ?」
「松本先生が好きじゃないはずのお葬式バージョン(機械音入り)なんだよ」
「ええっ?」
「実はこの1枚目にヤマトのテーマは5つも入ってる。スローバージョンと称するお葬式バージョン3つと音楽前奏入りバージョン。別人歌唱バージョンだ。2枚目の冒頭に2番まである通常バージョンが入っていて、もう1つスローバージョン。ヤマト'83が1曲。つまり2枚目に3つ。合計2枚で8つ。どこまで同じテーマをバージョン違いで繰り返すんだ」
「むむむ」
「だから、構成として本当に松本アニメの音楽集大成を作ろうとはしているのだが、松本先生バンザイなんだろうか、と思ってしまうのだ」
「どうしてそうなるの?」
「理由は良く分かる。『もうみんなCD持ってるでしょ?』という連中に向けたコレクターズアイテムだ。だから、レアな音源ほど収録される傾向がある。かなり広まった伴奏付きバージョンよりお葬式バージョンが入り口に来るのもある意味で当然だろう」
「それで?」
「つまりだな。おいらは前も言ったがお葬式バージョンの方が好きだ。静かに入って盛り上がって終わる方がドラマチックでいい」
「ぎゃふん」
子供の頃は §
「子供の頃は、ヤマトのOPは3種類あると思っていた。厳密には4種類だな」
「4種類ってどういう解釈?」
「イントロに音楽入り、機械音入り、無音。4つめは七色星団決戦のエンディング版」
「それだけ区別してれば普通じゃ無いよ」
「しかし、実際にはもっと細かい差異があったみたいだ。マニアが認識しているバージョン違いはもっと多い」
「それは凄いよね」
「だからさ。OP1つでこれだけ楽しめるアニメなんてそうはないぜ」
「パタリロの進化するアイキャッチみたいだね。ば~ん!」
「ドクターバンよりバンコランかよ」
「いや、ヤマトの前番組は蛮場番だよ」
「ぎゃふん」
子供の頃は2 §
「子供の頃は、空を飛べたよ。草に寝転び心の翼を広げ、どこへだって行けたぼくだった」
「それってどういう光景?」
「もちろん、ヤマトが主翼を広げるのさ。イスカンダルにだって行けるさ」
「なんかちがう」
「どっちを向いても宇宙!」
「それってただの迷子」
「相原だったら大丈夫。リレー衛星に流れ着く!」
子供の頃はIII §
「子供の頃は、船のイメージは基本的に横浜の氷川丸と、横須賀の三笠から受けていたな」
「本物か」
「だから、ヤマトのイメージも分かるね。ああいう世界なんだよ。サイズは別として」
「なるほど」
「きっと、そこが頭で考えてる人とは違う」
「頭で考えてる人はどうなっちゃうの?」
「ヤマトとガンダムの差が無くなってしまう。せめてあの白いピエロみたいなロボさえなければなあ、という感想が分からないかもしれない」
「君は本物の船は見たことあっても、本物のガンダムは見たこと無いってことだね」
「そういう意味では本物のガンダムは誰も見たことが無い。本物の巨大ロボもな。でも本物の船は見ることができる」
「その差はでかいね」
「多感な幼少期に実際に見て強い印象を受けた人にとってはな」