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2011年08月19日
川俣晶の縁側過去形 本の虫ネギま!を読むtotal 1622 count

35巻・記号と中景の問題再び

Written By: 川俣 晶連絡先

「コクリコ坂の人気はこっちが驚くほど高い」

「こらこら。ここはネギま!35巻の感想を書いているところだろう」

「いやいや。結局根っこは同じだと気付いた」

「えっ?」

「宮崎吾朗1967年 1月21日産まれ、赤松健1968年 7月5日産まれでめっちゃ世代が近いって話もあるのだが、もっと話は先に進める」

「どこから話を始める気だい?」

「記号と写実という話から始めようか」

「なんだいそれは」

「まず宮崎駿ってのは、表現が記号的なのだ。写実そっくりと思わせる記号を得意とする。しかし、とてもリアルに感じられるだけで基本は記号なのだ。だから、3DCGの使い方はあまり上手くない。3DCGというのは、立体の空間があって写実的な空間の模倣だからだ。ポニョでCGを捨てて手描きで勝負したのは正解だろう」

「その話がどう関係するんだよ」

「だからさ。記号としての描写を行うと中景が欠落するという話をコクリコ関連でかつて行ったわけだ」

「簡単に説明してくれよ」

「近景と遠景の間に、本来なら世界が詰まっているはずなのだ。それを近景と遠景が連続したアナログな世界として描こうとすると、近景と遠景の間にある中景が必然的に不可避となる」

「でも、どうして中景が欠落するのだ?」

「アニメはずっと背景+セル画というシステムを使ってきたから、中景を担うものが無いんだ」

「でも、ネギま!はアニメじゃなくてコミックだよ」

「実は同じなんだ」

「えっ?」

「コミックも、実は背景を別に処理する。背景専門のアシスタントとかが存在して分業する。名のある作家はキャラだけ描くということもある」

「そうか。作家本人はキャラだけ描いて、背景をアシに丸投げするとやっぱり中景が欠落するんだ」

「そうだ」

「じゃあ、ネギま!の話とはどうリンクするんだ?」

「いい質問だ。ここで良いネギま!と、悪いネギま!がある。その表現の差は何だろう」

「中身の話はいろいろ聞いた気がするけど表現? 何だろう?」

「宮崎駿の子供として産まれながらも、アニメとはあまり縁が無いランドスケープ・アーキテクトという経歴を経てきた宮崎吾朗には中景を欠落させないが、ゲームプログラミングを経て漫画家になった赤松健も発想はシミュレーション的でやはり中景を欠落させない。3DCGで背景をいろいろ作るということは、実は背景がシミュレーション的になる。その結果として、どちらも空間の設計が立体的になるわけだ」

「それで?」

「だからさ。そういうセンスが無い奴が安易に絵を描こうとすると、単純に女の子の胸の膨らみとお尻の膨らみが両方見えるような絵を平気で描けるのだが、これは空間に置くとかなりおかしなことになる。胸の膨らみは身体の前にあるのに、お尻は後ろにあるのだ」

「腰を捻ればそういうポーズは取れるのじゃ無いか?」

「記号的に認識すればそうだが、空間の中に置くとそのようなポーズを取る必然性がなかなか出てこないのだ」

「えっ?」

「だからさ。良いネギま!の良いパンチラは、空間設計の中で見える必然性が存在する。たとえば、奧に敵がいて全力で突っ込んでいくと、背後にあるカメラにパンツが見えてしまうのはある意味で必然だ。緊張感と奥行きのある構図とパンチラが共存している」

「じゃあ悪いネギま!は?」

「空間の設計が存在せず記号的に描いてしまう世界だな。言い換えれば、それが見える必然性を表現的に煮詰めていない」

「なるほど」

「問題は受け手の認識にもある」

「えっ?」

「コクリコ坂なら、実はジブリ的な表現が期待されている面があるが、それは記号的なんだ。しかし、そこから逸脱してしまうのだ。ネギま!も同じで、突き詰めるとオタク的な記号表現からはみ出してしまうのだ」

「はみ出してもいいじゃないか」

「ジブリはまだいい。熱烈にオタクから支持されてないからな。でも、ネギま!はオタク層からの支持もそこそこあるので話がねじれる」

「どういうことだい?」

「オタク的な記号表現が常識である世界に住んでいると、記号的に受容されがちなのだが、実はネギま!周辺にはそんな人たちが山のようにいる」

「彼らに迎合したら記号になるってこと?」

「そうなんだが、話はそれほど単純では無い。それがネギま!の特徴だ」

「どういうこと?」

「ネギま!に関しては、実はそういう世界にすんでいないファン層も厚い。そういうファン層は、記号的なお約束には動かない。というか、そもそもお約束を知らない以上、動けない」

「えっ?」

「だからさ。ネギま!ビジネスと言ったとき、ネギま!周辺には単純なオタク向けビジネスとして捉えてしまう者もけっこう多いが、実際はそれでビジネスは収斂しない。実は膨大な非オタク層のファン層を取りこぼしてしまうからだ。そのあたりの葛藤が試行錯誤として作品の表現に表出しているのだろうな」

「もっと分かりやすく言ってくれよ」

「だからさ。記号というのはお約束なんだ。お約束は知らなければ意味を持たない。しかし、写実的表現はもっと間口が広い。見たら分かる世界だからだ。意味そのものが描かれたものの中にある。だから、もっと幅広く客層を取り込める」

「だからコクリコ坂に客が入るわけだね」

「ネギま!も同種の萌えマンガより客層が厚いわけだ」

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「コクリコ坂の人気はこっちが驚くほど高い」

「こらこら。ここはネギま!35巻の感想を書いているところだろう」

「いやいや。結局根っこは同じだと気付いた」

「えっ?」

「宮崎吾朗1967年 1月21日産まれ、赤松健1968年 7月5日産まれでめっちゃ世代が近いって話もあるのだが、もっと話は先に進める」

「どこから話を始める気だい?」

「記号と写実という話から始めようか」

「なんだいそれは」

「まず宮崎駿ってのは、表現が記号的なのだ。写実そっくりと思わせる記号を得意とする。しかし、とてもリアルに感じられるだけで基本は記号なのだ。だから、3DCGの使い方はあまり上手くない。3DCGというのは、立体の空間があって写実的な空間の模倣だからだ。ポニョでCGを捨てて手描きで勝負したのは正解だろう」

「その話がどう関係するんだよ」

「だからさ。記号としての描写を行うと中景が欠落するという話をコクリコ関連でかつて行ったわけだ」

「簡単に説明してくれよ」

「近景と遠景の間に、本来なら世界が詰まっているはずなのだ。それを近景と遠景が連続したアナログな世界として描こうとすると、近景と遠景の間にある中景が必然的に不可避となる」

「でも、どうして中景が欠落するのだ?」

「アニメはずっと背景+セル画というシステムを使ってきたから、中景を担うものが無いんだ」

「でも、ネギま!はアニメじゃなくてコミックだよ」

「実は同じなんだ」

「えっ?」

「コミックも、実は背景を別に処理する。背景専門のアシスタントとかが存在して分業する。名のある作家はキャラだけ描くということもある」

「そうか。作家本人はキャラだけ描いて、背景をアシに丸投げするとやっぱり中景が欠落するんだ」

「そうだ」

「じゃあ、ネギま!の話とはどうリンクするんだ?」

「いい質問だ。ここで良いネギま!と、悪いネギま!がある。その表現の差は何だろう」

「中身の話はいろいろ聞いた気がするけど表現? 何だろう?」

「宮崎駿の子供として産まれながらも、アニメとはあまり縁が無いランドスケープ・アーキテクトという経歴を経てきた宮崎吾朗には中景を欠落させないが、ゲームプログラミングを経て漫画家になった赤松健も発想はシミュレーション的でやはり中景を欠落させない。3DCGで背景をいろいろ作るということは、実は背景がシミュレーション的になる。その結果として、どちらも空間の設計が立体的になるわけだ」

「それで?」

「だからさ。そういうセンスが無い奴が安易に絵を描こうとすると、単純に女の子の胸の膨らみとお尻の膨らみが両方見えるような絵を平気で描けるのだが、これは空間に置くとかなりおかしなことになる。胸の膨らみは身体の前にあるのに、お尻は後ろにあるのだ」

「腰を捻ればそういうポーズは取れるのじゃ無いか?」

「記号的に認識すればそうだが、空間の中に置くとそのようなポーズを取る必然性がなかなか出てこないのだ」

「えっ?」

「だからさ。良いネギま!の良いパンチラは、空間設計の中で見える必然性が存在する。たとえば、奧に敵がいて全力で突っ込んでいくと、背後にあるカメラにパンツが見えてしまうのはある意味で必然だ。緊張感と奥行きのある構図とパンチラが共存している」

「じゃあ悪いネギま!は?」

「空間の設計が存在せず記号的に描いてしまう世界だな。言い換えれば、それが見える必然性を表現的に煮詰めていない」

「なるほど」

「問題は受け手の認識にもある」

「えっ?」

「コクリコ坂なら、実はジブリ的な表現が期待されている面があるが、それは記号的なんだ。しかし、そこから逸脱してしまうのだ。ネギま!も同じで、突き詰めるとオタク的な記号表現からはみ出してしまうのだ」

「はみ出してもいいじゃないか」

「ジブリはまだいい。熱烈にオタクから支持されてないからな。でも、ネギま!はオタク層からの支持もそこそこあるので話がねじれる」

「どういうことだい?」

「オタク的な記号表現が常識である世界に住んでいると、記号的に受容されがちなのだが、実はネギま!周辺にはそんな人たちが山のようにいる」

「彼らに迎合したら記号になるってこと?」

「そうなんだが、話はそれほど単純では無い。それがネギま!の特徴だ」

「どういうこと?」

「ネギま!に関しては、実はそういう世界にすんでいないファン層も厚い。そういうファン層は、記号的なお約束には動かない。というか、そもそもお約束を知らない以上、動けない」

「えっ?」

「だからさ。ネギま!ビジネスと言ったとき、ネギま!周辺には単純なオタク向けビジネスとして捉えてしまう者もけっこう多いが、実際はそれでビジネスは収斂しない。実は膨大な非オタク層のファン層を取りこぼしてしまうからだ。そのあたりの葛藤が試行錯誤として作品の表現に表出しているのだろうな」

「もっと分かりやすく言ってくれよ」

「だからさ。記号というのはお約束なんだ。お約束は知らなければ意味を持たない。しかし、写実的表現はもっと間口が広い。見たら分かる世界だからだ。意味そのものが描かれたものの中にある。だから、もっと幅広く客層を取り込める」

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