「今頃まだ気づくことがあるよ。うかつ」
「うかつすぎ」
「実はゼロテスターの話をしようと思う」
「ヤマトじゃないじゃん」
「まあ聞け」
「なんだよ」
「テスター2号は要塞艦に改造される」
「そうだね」
「でも、ずっと『ようさいかん』ではなく『ようさいか』だと思っていた。なぜだか分かるかい?」
「テレビの音質が悪かったから?」
「そうじゃない。サブタイトルは『2号機要塞化計画』だからだ」
「要塞化か」
「そもそも録音する習慣ができる前だし、ゼロテスターは録音する対象に入っていなかった。ゼロテスターの主題歌は録音してあるが、おそらく最終回に近い時期だろう。この時点ではまだまだだ」
「悩ましいね」
「境界に近い時期だからな」
「そうか。それで要塞化と覚えてしまったのか」
「だからずっと意識しなかったけど、要塞艦って表現はゼロテスター的ではないんだ」
「どうして?」
「お手本がサンダーバードである以上、もっと表現がスマートなんだよ。ゼロテスターっていうのは」
「なるほど」
「艦というのは旧世代の分からず屋が乗るものであって、4号を運んでくれて意外で嬉しいな、という存在なんだ」
「そうか」
「でも、ここでテスター2号は艦になってしまった。なぜだっ!」
「坊やだから?」
「そうじゃない。実は改めて数えて気づいた。第53話『2号機要塞化計画』は10月上旬頃の放送だ」
「1973年?」
「放送末期だから1974年だ」
「1974年10月上旬って……」
「そうだ。ヤマトの放送開始時期だ」
「まさか」
「つまりさ。ゼロテスター側もヤマトを有力なライバル視して宇宙戦艦ヤマトを迎撃するためにテスター2号を要塞艦にしてぶつけてきたと考えられる」
「ひぇ~ でもその意図は盛大にすべったよ」
「そうだ。テスター2号を改造して派手にバンバン撃って相手をやっつける子供っぽい話でヤマトを迎撃したが、実際のヤマト第1話の宇宙戦艦ヤマトは一発も撃たないし、撃った沖田艦も無力だった。そして主人公は決戦の場にすらいない」
「放送前だからゼロテスター側の情報不足ってことかな?」
「そこは良く分からない。ぬえは双方に関わっているし、他に富野喜幸だとか安彦良和だとか、双方に関わっていた人は複数いる。まあ、関わっているからと言って、ほいほい情報は流せないだろうけどな」
「そうか」
「それに、脚本家のレベルでは顔ぶれがかぶっていないようだ。これでは骨格レベルで別物になっても仕方が無い」
「そうだね」
「でも考えてみれば表現は意識しているのかもしれない」
「というと?」
「戦艦の真の姿が隠されている、というコンセプトだよ」
「えっ? ヤマトは隠れてないじゃん」
「初期案ではアステロイドに隠されたフネだったのだよ」
「なるほど。テスター2号要塞艦も、船体が開くと中の凶悪な戦艦らしい装備が見える趣向だね」
「でも、それも滑った。ヤマトは常時アステロイドを装着して航行したりはしなかった」
「ああ、すべりまくり」
「古いヤマトの企画書をちらりと見て準備した対抗策だったりしてな」
「うーむ」
「まあ、ガロス七人衆が出てきて、話がグッと子供っぽくなった時点でゼロテスターにはヤマトに対抗できるパワーは無かったのかもしれないけどな」
「なるほどね。1974年10月頃、ヤマトは巨弾ミサイルもどきの超巨大ミサイルでゼロテスターを攻撃したが、ゼロテスターはヤマトもどきのテスター2号要塞艦で迎撃したわけだね」
「4本足の無骨なゼロロボットでアナライザーを迎撃した方がマシだったかも知れない」
「おいおい」
「だって、確かゼロロボットも赤かったし」
「そうか」
「それに、爆発物処理という仕事は同じだ」
「アナライザーが爆発物処理?」
「コントロール機雷を解体したり、ドリルミサイルを逆回転させたり」
「なるほど」
オマケ §
「いずれにせよロボが主役では無い古き良き時代とも言えるけどな」
「今は主人公よりロボが主役」
「そうでもない。今はジャリ向けはカードゲームアニメが主流だからな」
「大人向けは萌え主流?」
「いや、それはオタク向け。大人向けはVFXに流れていくのが最近の流行だ」
オマケ2 §
「ブルーノアになら人工島で対抗できた」
「どうして?」
「人工島は実質的に巨大空母だからさ」
「戦艦じゃないのね」
「でも、緑を乗せた人工物に見えて軍艦島にそっくりと思うなら、人工島は戦艦になぞらえていいのかもしれない」
オマケ0 §
「このページを見ると、実はテスター1号は1つしか絵が無いのに、2号は2回も出てくる。1つは色がちょっと変だけどな」
「まさか」
「やはりゼロテスターの主役メカは2号だ」
「ははは」
「でも。問題はやはり左右に分割されるマーク2にはコクピットが2つあるように見えるけど、パイロットはどっち?ということだろう」
「ははは」
「まあコンVの5号機も同じといえば同じだが」
「ぬえのデザインという点も同じといえば同じね」
「結局、ヤマトが偉いのは無駄な合体変形を排除してこの手の矛盾が出ないことだな」
「ヤマトも他は矛盾でまくりなんだけどね」