「デスラーを語る時、重要なポイントがある」
「それはなんだい?」
「デスラーは残忍である。しかし、その残忍さは誰にでも発揮されるわけではない」
「たとえば?」
「笑った男は落とされたが、タランは丁重にお礼を言ってもらった」
「うん」
「ヒスはバカかねと言われたが、ドメルがひねりにいくと言うと許してしまう」
「そうだね」
「では、どこに境界線があるのだろうか」
「人による好き嫌い?」
「そうでもない。実はドメルの場合、最初は甘く扱ったのに、あとからドメルの作戦に嘴を突っ込んで台無しにしている」
「じゃあ、人でもないね」
「実は1つ気づいたことがある」
「なんだい?」
「シュルツは実はドメルのパターンを先行しているんだ。2人はパターンが反復されている」
「えっ?」
「甘いデスラー→残忍で冷たいデスラーというパターンが同じなのだ。そして、ヤマトを道連れにして死のうとしたことまで同じ」
「なんと」
「ドメルの場合、自分からひねりに行きましょうと申し出て承諾される。シュルツの場合、ミサイルの標的にしましょうと進言して承諾される。だが、クライマックスになるとドメルは基地を破壊することはまかりならんと怒られ、シュルツは基地を失ったあとで戦って死ねと伝えられる」
「ポイントは基地の喪失なのかな」
「それだと穴に落とされた男や、ヒスが解釈できない」
「品の問題なのかな。ガミラスに下品な男は不要だって」
「実はさ。品の問題と基地の問題はワンセットで考えられる」
「どうして?」
「浪費は下品だからさ」
「そうか。基地を消耗することは、デスラーとしては無駄な出費に見え、それは下品な行為なんだ」
「そうだ。無駄な出費とは、豊かさをひけらかすことであり、それは下品なのだ」
ゲールはなぜデスラーから肯定されるか §
「そのような意味で、タランは肯定される。彼はデスラー機雷でヤマトを仕留めようとしたが、それは浪費ではない。機雷は爆発して相手を仕留めるものであり、失われることが前提の安価な兵器だ」
「うん」
「実はその意味でゲールも肯定される」
「どうして?」
「ひおあきら版にあったゲール艦隊が出てこないアニメ版では、ゲールの主たる戦力はバラノドンであった。あれは、現地調達した現住生物でヤマトを潰すという非常にコストパフォーマンスが良い作戦であった。ドメルが馬鹿にして協力しなかったけれど、もしもバラン星のガミラス軍が全面的に協力して第2波攻撃が可能であったら、ヤマトは仕留められたはずだ」
「波動砲はすぐにはもう1回撃てないものね」
「だからさ。ゲールの告げ口をデスラーは拒絶しないで受け入れる」
「なるほど。趣味の悪い部屋さえ綺麗に処分されれば、デスラーがゲールを拒絶する理由は無いわけだね」
没原稿 §
「以下は書き直す前の没原稿だ」
「実はデスラーは残忍ではあるが、浪費家では無い。倹約家である」
「は?」
「であるから、浪費が嫌いだ」
「たとえば?」
「ドメルのバラン星基地の扱いは許せない」
「無駄な浪費ってことだね」
「そこで気づいたのは、実はシュルツも浪費をしたのだ」
「えっ? どこで?」
「ヤマトを誘導するために、艦隊を無駄に派遣したばかりか、超巨大ミサイルも雨あられと撃ってしまった。本来なら1発単位で消費するような高価な兵器なのだろう。まあ、後の方になると1発では効果が無いことが分かっているので、まとめて撃つことが多くなるわけだが」
「それってどういうこと?」
「つまり、デスラーはシュルツに様々な装備を与えたが、その意図は浪費の回避にあったわけだ」
「超巨大ミサイルを冥王星に配備するのも、艦隊を消耗させるよりもそれを使った方が安上がりってことだね」
「であるから、その装備を浪費しすぎるシュルツはデスラーにとって頭が痛い。戦って死ねと言うわけだ」
「デスラーに嫌われたわけだね」
オマケ §
「他にシュルツは爆雷の雨も振らせている。無駄が多い」
「うん」
「冥王星の現住生物は今見るとスライムだな」
「わははは」
「ガミラス基地の潜入した連中。パイプ内のカットに黄色い矢印制服の男がいたり、白地に白い矢印の制服の男がいたりする。きっと加藤の色指定ミスなんだろう」
「今なら考えられないミスだね」