「昨日は今の時代は1980年頃に不気味なほどよく似ている・不正コピー天国等々という話を書いたばかりだ」
「それで?」
「今日は、某DMで紹介されていたこんなページを見たよ」
「これがどうしたんだ?」
「昔はMINIXっていうのがあってね。Cで書くUNIX like OSでね、toyレベルだけどチュートリアル用で解説本もあった」
「えっ。CでUNIX likeでtoyって、これと同じことじゃん」
「コンセプトは同じなんだよ」
「存在することが無意味と言いたいの?」
「そこまでは言わない。目次にはGDTとかIDTとかPagingとか書いてあるから、CPUのメモリ管理機構をきちんと使っていると思われる。これはIntelのCPUだと386以降の機能であり、8086で動いた初期のMINIXにはあるはずのない機能だ」
「Cは時代遅れじゃないの?」
「低レベルの操作を書くにはCしかないと言われると納得する部分はあるけどな」
「そうか」
「しょせん、Cは高級なアセンブラだからな」
「じゃあ、これでオッケーなの?」
「いやいや。UNIX likeって時点で態度が後ろ向きすぎ。そんな賞味期限がとっくに切れた古いOSを模倣してどうするの。toyなら、どうせ互換性も実用性も関係ないんだから、もっと大胆に未来を先取りしていいだろ」
「ぎゃふん」
オマケ §
「MINIXとか言ってLinux無視すんじゃねーよ、と怒ってる信者がいると思うよ」
「ははは。無視なんてしてないさ」
「どういうこと?」
「MINIX/386への不満から生まれたのがLinuxなんだから、初期のMINIXの話にLinuxが絡んでくるわけがないじゃん。まだ生まれてないんだから」
「えっ? そうなの?」
「MINIXの本つまりOSの作り方の教科書の日本語訳の本は自分も持っていたよ。これを見て、『真面目にこれを読んだらOS作れると思って本当に作る奴はいるな』と思ったら、リーナス・トーバルズという人が本気でやってしまったわけだ。だから、彼の行いは新鮮でもなんでもなく、『やはりな』と思うだけだ」
「君はOSを作ろうと思わなかったの?」
「MINIXの本を買うはるか以前の8bitパソコン時代にもう作ってたよ」
「どうしてそれ以降は作っていないの?」
「OSってのはコモンバスだからな。客がいない路線にバスを走らせても意味が無い」
「でも、Linuxにはお客さんがたくさん乗ったよ」
「UNIXのライセンス問題で揺れている時期に電車から降ろされて困っている人が多くいたんだ。彼らがLinuxというバスに乗り換えた」
「そうか。いつでも待っている客が溢れているとは期待できないわけだね」
「しかも、待っている人がいても、彼らが待っているバスでなければ客は乗らない」
「みんな新宿方面に帰りたいのに上野行きのバスを走らせても、乗ってくれないわけだね」
「まあな。だから、常識的にはOSなんて作らないのが正解」
「なら、どうしてWindowsは作られたの? なぜ客は乗ったの?」
「Windowsというバスが走り出したとき客が誰も乗らないガラガラだったんだ」
「うそー」
「風向きが変わったのは、パソコンのメモリ実装量が増えた頃だな。メモリ実装量が1MB2MBと増えていったのに、旧世代のMS-DOSという木炭バスは640KBしか有効活用できなかった。その不満が頂点に達したころにWindows 3.0が出てきてメモリを有効活用できた」
「じゃあ、特定のタイミングで特定の機能を持ったOSを提供しない限りOSなんて作っても無意味?」
「無意味じゃ無い。作った本人の肥やしになれば役立つぞ。ただ普及しないだけだ」
「難しいね」
「OSのようなコモンバスはそういうものだ」