「久しぶりに面白いコミックを見たぞ」
「どこが?」
「中身もそうだが、入手がドラマになるコミックなんて、あまり見ないぞ」
入手のドラマ §
「とりあえず、ジャンプのコミックに挟んであるチラシに変な顔が描いてあって気になった。でも、本屋で見た記憶が無い。ジャンプのコミックなんて、どこも山ほど積んであって当たり前なのにこれはおかしいと思って調べたところ、どこの本屋も売り切れと判明」
「ジャンプで売り切れるコミックは珍しいね」
「というわけで、Amazonでポチった」
「それで待ったわけだね」
「しかし、Amazonからぜんぜん連絡も無いのに本屋に出回り始めた」
「増刷が掛かったのかな?」
「でも本屋で買ったら第1刷だった」
「なぜ?」
「たぶん、返本を再出荷できる状態になったのだろうと思う」
「ひ~」
「本屋で買った後、、慌ててスマホからAmazonの注文をキャンセルした。スマホからやったのは初めてだよ」
「ドラマだね」
感想 §
「実はこの暗殺教室というのは、物語が二重化されているのだ」
「二重化とは?」
「表面的なストーリーと真のストーリーが違う」
「どういう意味?」
「脳噛ネウロも同じなのだ。脳噛ネウロは、ヒロインが魔人に強制されて便利に使われる話に見えるが、実はヒロインは自発的に協力しているのだ。2つの物語が二重に存在する。それと同じで、暗殺教室は『地球を守るために知恵と工夫と勇気で正体不明の先生を殺さねばならない高校生の暮らす』という表面的なストーリーとは別に、実はもう1つのストーリーが存在する」
「それは何?」
「落ちこぼれクラスを生き生きとさせる理想的な教師とは何か、というストーリーだ」
「殺せんせーが、理想的な教師? 変な生き物だよ?」
「だからさ。理想的な教師は既に人間が担えないキャラクターなのだ。人間が担うことは共感が十分に担えない。変な生き物であって初めてそのような存在になれるわけだ。その痛烈な皮肉が面白いところだね」
「それってどういうことさ」
「強い、優秀だとうぬぼれた生徒をガツンとやって、生徒自身の屈折した気分をスカッとさせるのも役目だろうが、それがスムーズにできるのは、もはや変な生き物のみってことなのだろう。説得力のあるイメージ的に」
「うーむ」
「もう1つは、殺せんせーには弱点も隙もあってキャラクターとして可愛いこと。それは良い教師の重要な資質だ。人間だから教師だろうと隙はあるし弱点はある。大人になることは無敵になることではない。しかしながら子供は勝てない。隙があるのに勝てない。子供はもっと隙が多いからだ。それを知らしめることも良い教師の重要な仕事だ」
「でも、それを担えるのは変な生き物しかあり得ないイメージが広まってしまった時代なのだね」
オマケ §
「このコミック、本来なら3年E組は正義のヒーローなのだ」
「地球を破壊する変な生き物を倒すのは彼らしかいないわけだね」
「ところが、彼らがヒーローであるというニュアンスは全く無い」
「えー」
「そこがいいよな。子供がヒーローになっちゃ話が薄っぺらくなる」