「スケールアヴィエーション2013年1月号に空中戦艦大和の出番はあるか?」
「こたえはイエスだ」
「スケールアヴィエーション2013年1月号にヴァンシップの出番はあるか?」
「こたえはイエスだ」
「どっちなんだよ」
「両方だ」
「記事が2つあるってこと?」
「そうではない。空中戦艦大和搭載機のヴァンシップが出てくるのだ」
「ちょっと待てよ。世界観が合わないだろう?」
「遠い未来に、発掘された遺物をつなぎ合わせて解釈している未来の誰かには、そんなことは判らないのだよ」
「えー」
「ともかく、1つの感覚的な一致点があるだろうと思って買ったら3つもあった。こまかいのを入れるともっとだ」
「まさか」
「そのまさかだ。驚くほど自分の代弁者になっていた」
「ひ~」
「順番に説明する」
人よ大きくあれ §
「人がいることで模型は生き生きとする。だから、人がいない空中戦艦大和よりも、人がいるモニターはもっといい」
「まさか」
「だから自分はヤマトの次にいかなる1/1000の宇宙艦船キットも買わずに1/72ヴァンシップを予約した。そして、それが間違いでは無いことが証明された」
「どういうことだよ」
「戦艦大和より、PTボートってことだ」
「意味判らないよ」
スケールの倒錯 §
「1/72のキットに1/48のフィギュア。この構造は実は狭い線路系の鉄道模型つまりナローゲージ世界で典型的にあったパターンと同じ」
「まさか」
「1/150の機関車を改造して1/80とか1/87の人が乗る運転台を付ける」
「それって無理があるだろう?」
「もともと実物の線路が狭いから、普通の線路の模型として見ると縮尺が1段階上がるんだよ」
「ひ~」
「だからさ。こういうスケールの倒錯は実はいつか来た世界なのだ。実際に自分でやった世界だ」
「それだけ?」
「いいや。それは鉄道模型の話。普通のプラモの世界でも可能と証明されたのは面白い」
「それでおしまい?」
「いいや。これには、小さいメカでも人を大きくする効能がある。模型に人の息吹を吹き込むには好ましい」
記号としての翼 §
「こちらででっちあげ中の空中空母加賀百万石には、飛ぶという記号性を表現するために形ばかりの小さな翼が付いている」
「関係ない話だ」
「いや、このモニターにも小さな翼が付いている。だから飛ぶということが良く分かる。船の船体の中央部に小さな翼が付いている形状が似通っていることは驚くばかり」
「驚くべき偶然の一致だね」
「だからね。スケールモデルは翼が大きくなりすぎて模型として作ると扱いにくいのだ。それゆえに、デフォルメして小さくした翼はある意味で模型表現としては正しいと思う。これはヴァンシップにも当てはまる」
「単に似ているだけで無く理屈が似ているのだね」
「もちろん、飛ぶ理由は別に存在していて良い。でも、ただ模型を見る人はそんな説明を読んでくれない」
戦車兵員輸送車 §
「昔ね。子供の頃にね。1/76のヘッツァーを改造して車体の後の部分を水平に改造してカーゴスペースにしてね。そこに椅子を置いて戦車兵員輸送車だぁ~と言ったことがあるの。モニターは戦車部品のブリッジの後ろがカーゴスペースで、その昔を思い出した」
「戦車兵員輸送車って何か本物があるの?」
「何も無い、子供の思いつき。ただの遊び。でもモニターはちゃんと作品になっている。そこは全く違う」
「ひ~」
シンプルであれ §
「いわゆるミキシングビルドで良くないと思うのは、部品をゴテゴテ付けすぎてシルエットが曖昧になってしまうこと……だと感じる」
「ダメなの?」
「結果としてシルエットが凡庸になってしまっているケースも多い」
「ひ~」
「もちろん、ゴテゴテしている部分、ごちゃごちゃしている部分に部品を多く使うのは良い。でも、それは『そういう部分』だけの話。残りは、テーマ性を明確にするためにシンプルにした方がいい」
「それをこの記事から知ったの?」
「いや。空中空母加賀百万石の建造中に気づいた。あれさ。一度は翼にタンクを付けたの。でもさ。外しちゃったの。翼の翼らしさが判らなくなって意味が無いから」
「へー」
「だから空中空母加賀百万石って、ポイントだけ部品をこまかく付けているけど、他はほとんど付けていないシンプルな作りなのだ」
「それで?」
「モニターも同じような作りだったよ。工作の程度は比較にもならないが、一部を除きごてごて部品が付いていないすっきりした作りは方法論が全く同じ」
「それを見た君の感想は?」
「のけぞった。加賀百万石は、たまたま手元にあったジャンクパーツででっちあげたもので、他の誰かの意図を先取りしようなんて意図はまるでなかった」
ヤマトファンがヴァンシップの模型を買う理由 §
「ヤマトファンの自分がハセガワのヴァンシップの模型を買う理由は明確ではなかった」
「理由はあるのだろう?」
「そうだ。人が見える大きさ、デザインは圧倒的に良いものだと思ったから予約した」
「でも、ヤマトファンが買う理由にはならないわけだね?」
「そうだ。しかし、この記事によって、ヤマト世界の境界領域にある曖昧な世界にヴァンシップは存在することが明確になった。事実としてはヤマト世界にヴァンシップは存在していないが、存在しているという幻想を抱きうる根拠が提示されたのだ」
「難しいよ」
「だからさ。ジェーン航空機年鑑にはたまに存在しない航空機が載っていたりするわけ」
「なぜ?」
「戦争中に敵国の情報は断片的にしか入らないから」
「へー」
「でも、ジェーン航空機年鑑は世界中の軍事関係者が使ってる資料なのだ」
「それで?」
「ヤマト世界のヴァンシップは、ジェーン航空機年鑑に載ってしまった実在しない機体と同程度のリアリティを持った存在として認知しうる。今月の記事はそういうものなのだ」
「やはり良く分からないや」
「そういう良く分からない世界の話だよ」
オマケ §
「最初に行った本屋になくて焦った。思わずTwitterに『ワレ、SAシヲハッケンデキズ。サクテキヲゾッコウス』と打電したくなったがそこは我慢した」
「なんで?」
「恥ずかしいだろ」
「ひ~」
「仕事の移動中、品川のエキナカの本屋に2冊だけあったので1冊買っておしまい」
オマケ2 §
「それにしても、モニターの錆びた赤い表現はいいなあ」
「他の記事はどうだい?」
「ちらちら見た範囲で面白かった。あとできちんと読んでからまとめる」
「そうか」
「ただ次号は零戦22型という選択には参った」
「22型?」
「22型がいちばん良いというのは、実は昔、ワンフェスでSWEETのおじさんから散々聞いていたからだ。SWEETが1/144の22型を発売した頃だね。部屋のどこかにSWEETの22型はあるはずだ」
「本当は22型が良いのだ、と言われても君としては『とっくに知ってるよ』なのだね?」
「個人的には52型の方がいいけどな」
「ひ~、あまのじゃく来たよ」
オマケIII §
「実は、裏表紙のハセガワの広告のたまごヒコーキSu-33は正しいような気がしてきた」
「なぜ?」
「人が大きく、デフォルメされた小さな翼が付いている」
「君の意見に近いわけだね」