2013年03月10日
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現代的な精神の普遍的な構造

Written By: 川俣 晶連絡先

「ただのメモなので中身は気にするな」

「なんだよ」

「ここ最近の流行に、以下のような同じパターンが見出せることに気付いた」

  • 進歩していると標榜するが実際は後退している
  • 後退とは過去への縮退である
  • 過去に向かって縮退するが、その過去とは都合良く改変された過去である
  • 従って、リアルな過去の体験者の語る過去とは一致せず、すべての人間から同意を得られない
  • それにも関わらず多数派の同意を得られるので、強行が可能になる。結果として軋轢が残る

「もっと具体的に教えてくれよ」

「たとえば、素晴らしい発明はすべてジョブズの手柄になる。それ以前に存在した製品は全て抹殺される。抹殺しないとジョブズの独創性が嘘になるからね」

「他には?」

「日本の歴史は、9割が戦国時代になる」

「えー」

「だから、歴史が好きですと言うと、すぐに『好きな戦国武将は誰ですか?』となるケースもある」

「実際は戦国時代に興味があるか、戦国武将に興味があるか質問した上で、興味があれば誰が好きかを問いかけるところだろう?」

「そう。しかも、戦国武将に興味があっても、現在のキャラクター化した誰に興味があるとは限らない」

「そうだよね」

「だからさ。彼らが考える歴史とは、本当の歴史じゃないの。名もない過去の平民に興味がある、なんて人間が入り込む余地はないの。数十人の戦国武将が小さな部室でやってるクラブ活動レベルなの」

「えー」

「この水路は本来どこから始まってどこにつながっていたのか、なんて考える余地もないの。伊達政宗が美形でパーリーだぜと言いながら暴走族のように馬で走っていればそれでいいわけ」

「ひ~」

「ソフトの権利意識も実は後退しているわけ」

「一時期は、形がないものにも権利を認める機運があったよね」

「でも、今はない。過去に後退しているからだ。しかし、ただ単に過去に後退しているわけではない」

「虚構の過去に後退しているわけだね?」

「そうだ。自分達に都合良く作り替えられた過去に戻っていくから、状況はかなり悪くなっている」

「たとえば?」

「著作権の保護団体って一般論で言えば、あまりにも無断使用が横行したので出来た経緯があるのに、金集めのための守銭奴というレッテルが貼られている」

「あれは確かにやり過ぎだね。アーティストに金を払わなくてもネットで何でも見えるってやったら、それこそプロのアーティストは死滅するよ」

「結果としてアマは大喜び。安く使える彼らの出番が増えるけれど、もちろん食えるほどは儲からない。下手をすれば無給。もっと下手をすれば金を取られる」

「ひ~」

「ネットが出版社を駆逐すると言っても、実はネットが出版社を置き換えられるほどの力を持っているとも言いがたい」

「出版社がなくなると情報の量と質が落ちることも有り得るわけだね」

「そうだ。しかし、それは進歩だと宣伝される」

「なぜ?」

「彼らの進歩とは縮退そのものだからだ」

「ひ~」

オマケ §

「違うと言うのなら、きちんと説明をしてくれ。ただし、他人の受け売りなら要らない」

「君が待っているのは、納得の行く説明ってことだね」

「そうそう。こちらの言い分が違うのなら、納得の行く説明を付けて違うと言えば良い。でも、そういう説明に出会うことはまずない。問題はまさにそこにある」

「自説が正しいと主張したいわけではないのだね?」

「そうそう。納得したいだけなの。納得できるのなら自分の説である必要は何も無いの」

「どうすれば納得できるの?」

「少なくともこれまで生きてきた過去の人生で見た光景と矛盾しない説明だな。単に過去を知らないで知ったかぶりをされると『昔、こういう事件があったろう』とこっちが教える側にまわらねばならない。それは納得の行く説明とはほど遠い」

「難儀だね」

「そうだ。寒い時代だよ」

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