「狭義の戦争とは武力の行使による戦闘であり、宣戦布告によって開始されるものであるな」
「じゃあ広義の戦争とは?」
「抗議抗議たまには優しい言葉も聞けないのかねえスターシャ」
「それは抗議。広義だ」
「広義の戦争とは、宣戦布告以前から行われるロジスティクス戦、情報戦などを含む。物資や軍隊の移動、情報工作は宣戦布告の有無に関わらず実行できることに注意が必要だ。2国間が交戦状態では無いからと言って、平和とは限らない」
「何が言いたい」
「では戦争における情報戦とは何か」
「敵の情報を知り、敵を騙す手段?」
「それもあるがそれだけではない。戦争における情報戦は主に3つの対象に向けて行われる」
「敵国は分かるが、他の2つは分からない」
「国際世論の支持を得るために、第3国への工作は欠かせない。正しい戦争であるという認識を共有できれば援助がいろいろと得られる」
「じゃあ、自国民って何だよ」
「民主主義国家において、国民の支持を欠いた戦争は成立しない。強引にやろうとしても、政権があっさり倒れて終わるだけだ。だから支持を得ることは不可欠なのだ」
「何でだよ。敵じゃ無くて味方だろ?」
「支持は作るものだからだよ」
「は?」
「普通に考えれば戦争ほど下らないものはなく、過半数の支持はまず得られない。だから情報工作して支持を人工的に作らねばならない」
「それって自国民に対する裏切りじゃないか!」
「そうだ。そこだっ!」
「どこどこ?」
「つまりね。戦争には自国民に対する裏切りが常に含まるのだ」
「ひ~」
「実際に太平洋戦争の日本にだってあったことだ。今や大本営発表は嘘の代名詞だ」
「だから何が言いたい」
「つまりね。なぜヤマト2199のデスラーの演説原稿を生粋のガミラス人では無いセレステラが書いているかだ」
「ガミラス人に対する裏切りをガミラス人自身が担うのは難しいわけだね」
「そうだ。従って、ガミラス人に対する裏切りを良心の呵責なく実行できるのは、最初からガミラス人を皆殺しにするつもりのデスラーと、お気に入りのクローンだけを愛でるギムレーと、ガミラス人ではなくデスラー個人に心酔したセレステラだけだ」
「そうか」
「だが、そうであるからこそ、セレステラは死ななければならない。ヤマトを捕獲してガミラスに帰還するつもりのデスラーは『ちょっと血迷っただけだ。同じガミラス人だよ。ごめん』と言って帰るつもりだが、セレステラはそうではないことを知っている。彼女が生きていることは、デスラーのガミラス帰還を妨げる重要な障害になるわけだ」
「あんなにデスラーラブラブなのに?」
「そうだ。だからこそ道具としては重宝したが、状況が変わった今となっては邪魔なだけだ。情報戦に関与しすぎた」
「分かった。デスラーに撃たれるだけでなく、側近にまでやたら撃たれるのはそのためだね」
「そうだ。デスラーの立場が危うくなれば、側近の立場も危うい。セレステラが邪魔であることは同じなのだ」
オマケ2199 §
「一般人はみんな情報操作される対象だから、無策で進むと島になって『嘘だ嘘だ』と言うしかない」
「じゃあさ。どうすればいいわけ?」
「健全な疑う心を持てば良い」
「それって今どきのネット民が最も不得意とする問題じゃないか?」
「それは知らん」
「じゃあなにをすればいいわけ?」
「武器は置いて、話を聞く気を持っている相手と話をする」
「それはどういうこと?」
「メルダの前にコスモガンを置けば良いのだよ」
「つまり敵の前で武装解除せよ?」
「それは違う。EX187に乗っていた親衛隊のエリートみたいに、最初から殺す気満々の相手の前で丸腰になっても死ぬだけだ。相手は選ぼう」
「つまり、相手がメルダだからいいわけだね」
「そうそう。相手を良く見ないといけない」
「ヤマトはどうするべきだったんだ?」
「ディッツ相手では話がまとまらない。ある意味で当然。でもメルダとかフラーケンが相手なら話がまとまった可能性がある」
「デスラーなら?」
「実は2199のデスラーには明確な目的意識があるので、その目的意識を理解して協力できるなら共同戦線の可能性もあり得るが、ただの凶悪な侵略者としか思っていないと自動的に敵になる」