「これは本当に映画なのかと言う疑問もあるが、一応映画館で見たので映画として扱おう」
「ひ～」
「では感想を語ろう」
「どうぞ」
「ガラガラでびっくりした」
「はっ?」
「いや、ガラガラだったから。いくら府中というロケーションとは言え、いくら公開から数日が経過しているとは言え、事前の期待感からすれば結構意外だ」
「期待感とは誰から受けた期待感?」
「オタクあるいはパトファンだな」
「君はファンではないのかい?」
「違うな」
分析 §
「もうちょっとまともに分析してくれよ」
「そうだな。これはまたしても客層を見誤った内容だと思う」
「客層とはなんだい?」
「もともとパトレイバーには2つの系統があって、押井系とゆうき系だ。押井系はどんどん間抜けになっていくが、ゆうき系はロボットものとしての方向性を強めていく。結局世間が支持したのは後者だ。押井パトが6本続いた後で、7本目が非押井路線で作られたのはそういうことだろう。もっとも押井パトのニーズは無いわけではないから、完全に消えるわけではなく細々と続いたわけだ」
「ふーん。それでこの映画は何なの?」
「押井パトだよ。この『ロケットぱーんち! (ごーん)』的な結末を見れば分かる通りだ」
「では、ゆうき系パトの支持者から見放されたってこと?」
「実はそれだけではない。明らかに実物大パトレイバーがチャチで嘘っぽく見えるのだよ。実は押井ファンはそんなもの見たくないだろうと思う」
「ちょちょちょ、ちょっと待て。実物大パトレイバーは目玉だろう?」
「あれで興奮するのは15歳以下さ」
「なんだって?」
「つまりだな。実物大パトレイバーを作ってみても、押井系のファンからはおそらく『要らないもの』なんだよ。出すならコンビニや上海亭の方がいい」
「ひ～」
「かといって、ロボットアニメらしいパトレイバーを見たい層からすればコンビニや上海亭が要らないものだろう。チャーハン炒めている料理人を見せ場として見せるぐらいなら、ロボットを活躍させろと思うだろうな」
「じゃあ結局なんだよ」
「これは、どの客層も満足しない内容だろう」
「君はどうなんだよ」
「あー、別に無理して劇場に通うこともないなと思った」
「君の目当てはなんだい?」
「本物の装甲車を使用した指揮車だけど、実に出番が少ない。ちゃちなパトレイバーばかり大写しになって、ほとんど見られない。なら別にいいや」
「いいのかよ」
「そもそも、パトレイバーにはあまり思い入れはないしな」
「本当に誰にとっても適合しない映画なのだね」
「そうだな。ネットを検索してと『押井ファンならいいだろうが、俺は嫌だ』という感想を見たが、押井ファンだってこれを好むか怪しいものだな」
「では、好き嫌いを離れて映像作品としてはどうだい?」
「ちゃんと作ってあるよ。まあテレビスケールの話の大きさでしかないけどね。映画のスケールじゃない」
「じゃあ、一言で要約するとなんだい?」
「ヤマト2199の時と同じで、客が見えていない。誰が客で、その客は何を好むのか。何をすればビジネスが成立するのか。その辺の流れを見失って企画が上滑りしている感がある。頭のいい人が天才的頭脳の頭の中だけで作り出した完璧な計画ってやつだろう」
「ヤマト2199は成功しているのではないの?」
「ヤマト2199は失敗しているがそれでも儲かっているらしいので、結果オーライだろう。しかし、未だに、女性キャラのグッズだけが溢れて男性キャラのグッズが少ないという不満がくすぶっているよ」
「じゃあ実写パトはどうなっちゃうの?」
「まだ正義を信じられる15歳以下のみんなが見に行けばいいと思うよ。おいらは巨大ロボのリアリティを全く信じられないので、別に見たいとも思わない」
「どういうことだよ」
「つまりだな。おまえら、いい加減、夢から覚めろよ、と言いたいけれど、言っちゃうと客が入らないのでメッセージは貫徹できない。結果として、中途半端な宙ぶらりんになっているのだろうな」
