「ああ、いいんじゃないか?」
「なぜ?」
「公知を判定するための資料集めをしているようだ」
「それがなぜいいの?」
「今の時代、昔からよくあるものでも【新しい】【斬新】【新発明】とはやし立てる風潮があるらね。多数派が知らなかったら、マスコミが【過去にない】と騒げばみんな信じる。そして、過去は抹殺される。少数派が何を言っても、もう動かなくなる。屁理屈、誤魔化しと言われるだけだ。だから【それ昔からあるアイデアだよな】って思える革新的なアイデアがネットでは日常さ」
「過去の改変だね」
「そうそう。徒党を組んで過去を無かったことにする。多数派で押し切れば嘘も事実として社会から承認されてしまう」
「それで問題の核心は何?」
「過去にあったと思えばあまり目新しくないから避ける。避ければ手間が掛かる。しかし、避けないで新しいと叫んでしまい、まわりを説得できてしまえば楽に【目新しいアイデア】を手にできる。楽なものだ。わざわざ手間を掛けた方がバカを見る」
「でもさ、意匠の問題だけを扱っているなら、全ての問題は解決しないのでは?」
「そうだろう。でも、たとえ意匠の問題だけでも【過去を蒸し返して新しいとはやし立てる風潮】が抑止されればいいと思うぞ」
「それはリバイバル反対ってこと?」
「違うよ。たとえば70年代のリバイバルは、70年代文化の肯定なんだ。昔あったと明確に言っている。それならいい。そうでななく、昔よくあった意匠を持ってきただけなのに、新しいと言ったら問題だと言うのだ」
「古くて良いものは肯定するが、それを新しいと言ったら嘘になるわけだね」