「どうもいろいろ調べているうちに、調布方面からいきなり舞い戻ってきた」
「それはなんだい?」
「以下のページを発見してしまったからだ」
「それで?」
「要点を抜き出すとこうなる」
鎌倉街道の脇を入ったこところに気象通信の高井戸送信所があった。風二九六五四部隊稗田隊。技術将校1人、兵隊5人だけで、三井グランドには受信所があった。隊員たちは接収した民間アパート「進帆荘」にいたが、下高井戸4丁目付近の民家にも焼夷弾が落とされ、次々に燃え出した。当時は家も少なかったので通信隊の少年兵の消火作業で消しとめられたと、隊の一員だった木村七郎さんの話だ。
「問題はどこだい?」
「風二九六五四部隊とは何か。そして、そもそも高井戸送信所はどこか」
「三井グランドじゃないの?」
「それは受信所。送信所ではない」
「進帆荘が手がかり?」
「その名前のアパートは現存しないようだ。ネットを検索しても出てこない」
「じゃあ、鎌倉街道と下高井戸4丁目だけが頼りだね」
「まず風(番号)部隊とは、防諜名らしい。通信や輸送などで使われた名称らしい」
「民間には防諜名を告げていたわけだね」
「本当の名前は別に存在していた可能性がある」
「なるほど」
「それから、位置関係だが、【鎌倉街道の脇を入ったこところ】では全く手がかりにならない。火事の応援に行くのに鎌倉街道を渡るのも簡単だから、4丁目ではなく5丁目でも同じことだ。極端な話、浜田山でも良い」
「確かに」
「ただし、goo地図の昭和22年を見ると、建物がある場所はかなり限定的なので、ある程度候補の絞り込みは可能ではないかと思う」
「そうか。進帆荘が不明でも、アパートと呼べるほど大きい建物は一握りしかないから、絞り込みは可能なのだね」
「だが、それはこれ以降に解決すべき次の問題だ」