「星巡る方舟は【共感駆動】であるという仮説はあり得るな」
「どうあり得るの?」
「既に起承承承であることは示したが、これは共感駆動であると言い直しても同じことだ」
「言い直すとどうなの?」
「つまりだね。あの映画は共感できた人しか分からない」
「というと?」
「理屈がないんだ」
「理屈がないとはたとえば?」
「イスカンダルからの帰路、ヤマトはイスカンダルで受け取った機材を積んでいるので、極力戦闘を回避しなければならない」
「沈まなければそれでいい、という往路とは立場が違うわけだね」
「そうだ。往路の第1砲塔大破は許される。でも帰路のコスモクリーナー大破は許容できない。一発当たってもまぐれ当たりで壊れる可能性があるので自発的な戦闘の可能性はあり得ない」
「それで?」
「でも、方舟では誰もそこを気にしないで戦闘に入っちゃうんだよね」
「それが【理屈がない】ってことか」
「そう。あれはね。みんなが一致団結して野蛮な暴力と戦う話であって、そこに共感できた人はあれで納得する。しかし、地球を救うことが目的だと思って見ていて共感できなかった人は弾き出される。そういう構造になっている」
「なるほど。肯定的な評価と否定的な評価がくっきり分かれる状況の1つの解釈だね」