「玉川上水下高井戸分水に関しては、終戦直後の航空写真を調べることでかなり正確に流路を特定可能になった。開始点と終了点があまり明確ではない……という問題はあるものの、開始点と終了点さえ明確になれば終わりにしても良いぐらいの気持ちになっていた」
「これまでのあらすじだね」
「ところが、原形天然河川(仮称古下高井戸川)を想定しはじめてから徐々に流れが変わり始めた」
「どう変わったんだい?」
「過去の下高井戸分水像は、玉川上水からの分水点から水路が始まり、そのまま流れていき、最終的に神田川の本流か支流に合流して終わるという直線的なものだ」
「今は?」
「現在の下高井戸分水像は、以下のようなものだな」
- 下高井戸分水のほとんどの部分は地形から見て天然河川由来である
- 天然河川の上流部は玉川上水の更に南まで続いていた可能性がある (玉川上水の建設はこれを切った)
- 神田川に流れ落ちる第2流路の可能性が浮上した (分水はあくまで玉川上水の水をどれだけ分けるかだけが問題にされ、その先はどうなっているかあまり明確ではない)
- 下高井戸分水あるいは古下高井戸川の水源として、玉川上水の分水以外が複数浮上してきた (まだそれらは断定できる段階ではないが)
「つまりどういうことだい?」
「当たり前のことだが見落としていた。天然河川なら水源が1つきりとは限らない。複数の水源を持っていることが一般的。ならば仮称古下高井戸川もそう。そうすると、古下高井戸川が下高井戸分水になったとき、一部の水源は玉川上水で切られてしまい水源としての機能を失ってしまうが、切られなかった水源は依然として下高井戸分水に水を供給していた可能性がある」
まとめ §
「昔調べた昭和60年代の報告書では、玉川上水から神田川に伸びるシンプルな一本の線として下高井戸分水は描かれていた。しかし、それはあくまで現況調査であって、もともとそうだったとは限らない」
「それで?」
「しかし、あの一本線のイメージに引っ張られた可能性はある」
「悔しいね」
「玉川上水の分水の中でも最も短いと言われる下高井戸分水で、主要な分水として語られることもないのだが、追求していくと何かとんでもない龍が潜んでいるかもしれない。そんな気がしてきたぞ」
「エキサイティングな題材ってことだね」