「クラスメートのE君とは、幼稚園、小学校、中学校と一緒だったが、彼の家は桜上水駅近くのクリーニング店であった。彼には非常にいろいろなものを見せてもらった。何と、宇宙戦艦ヤマト放送開始前に学習雑誌に載ったヤマトを見せてもらったこともある」
「そんな個人的な話は関係ない」
「そうだ。本題はここからだ」
「まだ話題があるのかよ」
「実は、1959年の住宅地図を見ると、ここには【大野クリーニング】というクリーニング店が存在していたらしいのだ」
「どんな店?」
「それは一切分からない」
「じゃあ話はそこでおしまい?」
「いや、実は東京ユニオン調査中に面白い資料が転がり出てきた」
「それはなんだい?」
「【昭和39年度版杉並区商業名鑑】という」
「それで?」
「実はそこに【大野クリーニング社】の名称がはっきりと書かれていた。代表者氏名【大野賢二】下高井戸1-129。電話番号は略する。業種は【クリーニング】」
「なるほど。1959年~1964年(昭和39年)頃には確かに存在していたわけだね」
「だが、それだけでは無かった。実はそのページの上を見て驚いた」
「何だよ」
「【桜上水商店会睦会会長 大野賢二】と書いてあるのだ」
「商店街の大物じゃないか」
「だからね。もしかしたら、当時のことを覚えている人がいて、何かの拍子に話を聞けるかもしれない。そんな気がする」
位置の問題 §
「この【大野クリーニング】の所在地は、現在の商店街のメインストリートではないが、荒玉水道沿いではある。そこに大物が店を構える意味はあったものと思う。しかし、そもそも荒玉水道は比較的新しい道なので昔は無かった。大野家は土地に長く住んでいる一族ではないだろう……というのが当面の推定だ」
「まだ推定なんだね」
「詳細は一切分からないからな」
オマケ §
「桜上水の商店会に、燃料商とか貸本業もいる。1964年(昭和39年)とはまだそういう時代だったのだな」
「結構凄いね」