2018年07月13日
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夜間戦闘機月光の12型21型23型問題暫定まとめ

Written By: 川俣 晶連絡先

前提 §

夜間戦闘機月光の12型、21型、23型は嘘型番で存在しないという説がある。おそらく正しい。では、これらの嘘型番はどこから来たのか。

参考資料 §

  • 丸 Graphic Quaterly 1972年7月号 第9号 写真集・日本の戦闘機 潮書房 1972/7/15
  • 日本海軍軍用機集 平成6年6月1日 グリーンアロー出版社
  • 世界の傑作機 海軍夜間戦闘機「月光」 平成8年3月5日 文林堂

個別資料における記述 §

  • 写真集・日本の戦闘機では、写真の説明に21型23型が出現している。しかし、機体上部に三門の20ミリ機銃があるタイプに対して、「武装強化型があったのかもしれない」しており、そもそもバリエーションを把握しきれていない
  • 日本海軍軍用機集では、月光の項目で12型21型23型に言及している。型番が煩雑だったので生産が終了しているにも関わらず大戦末期に整理した……という説明が書かれている。この整理後に12型21型23型の呼称が出現したという解釈である
  • 世界の傑作機では、12型21型23型は幽霊数字という解釈である。典拠及び不自然さについて指摘している。幽霊数字は、昭和30年前半頃に出現したとしている

 特に興味深いのは平成6年の日本海軍軍用機集で12型21型23型が存在すると明記された僅か2年後の世界の傑作機で存在しないと言い切られているところだ。この2年間でいったい何が起きたのだろうか。ここまでドラマチックな変化は何か大きな典拠の出現によって起きたのだろうか?

なぜこの問題が気になるのか §

 この問題が気になる理由は、ミリタリー関係の資料を見ると12型21型23型は存在しない……で止まっていて、「いつ」「なぜ」「誰が」それを産み出したのかを明らかにしていないように見えたからである。歴史的な視野からすれば、偽史の始まりの解明は重要である。

考察1・それは嘘型番なのか? §

 12型21型23型について虚偽とする論拠は以下のようなものだ。

  • 12型21型23型について言及した当時の資料は存在しない
  • 22型が存在しないのはおかしい
  • 発動機が変更されていないのに数字の2桁目が変化するのはおかしい
  • 大戦末期には大規模な改番は実施されておらず、月光だけ実行されたと考えるのは不自然である

 それに対して、12型21型23型が存在すると考える論拠は以下のようなものだ。日本海軍軍用機集の説明を元に筆者が少し考えてみた。

  • 試作戦闘機、偵察機、偵察機改造の戦闘機、純粋な戦闘機と紆余曲折の多い機体である上に、個別機体のバリエーションも多く、改番して整理したいという気持ちは理解できる
  • 大戦末期の情報は不徹底であったり、情報が残らないことも多い

 実は、状況を考えると必ずしも否定しきれない……という要素が若干残ってしまった。おそらく12型21型23型は存在しない……と思いつつ結論は留保したい。

考察2・丸編集部は信用できるのか §

 実は古い丸には間違いが多い。たとえば、同時期の写真集零戦を少し見たが、零戦は正しくはレイ戦と読む……と言い切っていて疑問が残る。丸編集部が確認の上出版したならば、何か合理的な典拠があるはずだ……とは言えないのかも知れない。

 逆に、丸は他者出版物の典拠になった可能性がある。

考察3・12型21型23型の典拠は何か? §

 これはこの先の研究課題だ。

 以下の2点に関して、ゆとりがあるときに取り組みたいと思う。

  • 12型21型23型の初出はいつどのような書籍に誰が書いたのか
  • それ以前の書籍で月光はどのように紹介されていたのか

 少なくとも初出は1972/7/15以前である。世界の傑作機の記述を是とすれば昭和30年代前半には遡ることができるはずだ。初出はそれより前という可能性もある。

 もし、初出が昭和30年代前半とすれば、それ以前に書籍が出版されていた可能性があり、それらで月光が紹介されていた可能性がある。しかし、昭和20年代の出版物は残っていないことが多く、調査は難しい。

 ちなみに、都立図書館サイトの串刺し検索で調べた限り、タイトルに夜間戦闘機「月光」が入った最古の本はこれらしい。

夜間戦闘機「月光」 : B-29を撃墜せよ 渡辺洋二 著--サンケイ--1982.9

 これでは新しすぎる。これ以前に月光に言及した書籍を探さねばならない。しかし、これはかなり難しい。どこかに検索可能な電子テキスト版の丸総目次は無いものか。

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