「1970年代に、SF映画ブームというものがあって、この時に壮大な宇宙を描くにはオーケストラが良いというクラシック回帰の傾向があった」
「具体的にはどの作品が相当するの?」
「アメリカではスターウォーズ(今でいう4)、日本では宇宙戦艦ヤマトが有名であった」
「その傾向とはアニメ特撮界の話?」
「いや。もっと広範囲でFMラジオのクラシック番組がSF映画特集をやるぐらい。はるかに大きいムーブメントであった」
「では、宇宙戦艦ヤマトはクラシック音楽だったの? オーケストラだったの?」
「いや。実は画期的なレコードとして知られる交響組曲宇宙戦艦ヤマトはオーケストラといいうよりもビッグバンドだった。ポピュラー系の楽器も入ってくる小規模編成のグループによる演奏であった。宇宙戦艦ヤマトの音楽がオーケストラに傾斜していくのはこの後のことになる」
「ふむふむ。それで?」
「交響組曲宇宙戦艦ヤマトの特徴は以下の通りだ」
- 元作品を離れて音楽だけで商品を成立させた
- 伝統的な楽器も新しい世代の楽器も混在させた
- スキャットや合唱などを取り入れて、いわゆる「歌謡曲、主題歌」ではない声の活用が大きかった
- 美しいギターなど、しっとりと聞かせるメロディーもある
- 恐る恐る提示してみると、客層の圧倒的支持。客との共謀関係が無いと成立しない
「で、それがACE COMBATとどう関係する」
「結局、ACE COMBAT/Sの特徴とまるまるかぶると言うことに気づいた」
「つまり、ACE COMBAT/Sこそが21世紀に蘇った交響組曲宇宙戦艦ヤマトってことだね」
「そういう風に思った。そして、それは好ましいことであると思った」
「なぜ宇宙戦艦ヤマトは自ら交響組曲宇宙戦艦ヤマト的な世界を提示できていないんだい?」
「宇宙戦艦ヤマトの音楽はそれ自身が非常にレベルの高い本物に進化してしまった。雲の上の何か凄いものに変化してしまった。それは交響組曲宇宙戦艦さらばヤマトの頃から既に起きていた変化だ。それはそれで凄い音楽ではあるが、既に商品なんだ」
「交響組曲宇宙戦艦ヤマトは商品ではなかったと?」
「そう。真っ赤なスカーフなど原形が残らないぐらい凄いアレンジが入っているし、スターシャなんか完全なオリジナル曲。商品と言うよりも作り手の思い入れの塊を投げつけてくるようなもの」
「では、ACE COMBAT/Sも商品ではなかったと?」
「あれは商品というには、いろいろ足りないものがある。あれは作り手側の思い入れの暴走と、暴走の結果成立したフィールドに立つアーティストと、それを受け止めるファン層があって成立したものだ」
「それが【客との共謀関係が無いと成立しない】ということだね」
「そう。あれは商品としての満足度の問題ではない。商品という枠から既にはみ出したものなのだ」
「商品未満の何か……ということだね」
「であるからこそ、現場の熱気がもの凄い。あれは本当に歴史の転換点だろう」
「歴史が大きくかわるとき 、ラーズグリーズはその姿を現すってことだね」
「まあ事実として、PS4に再び現れたわけだがね。初回でACE COMBAT 7買った人には」
「なるほど」
「しかし、それはさておき意図せずにして歴史の転換点に立ち会えたらしいことは興味深い」
「意図したわけではなく、たまたま抽選に当たっただけってことだね」
「まさに偶然」