昭和16年の杉並中学の卒業写真集を手に入れましたので簡単にまとめます。


具体的にどの学校か §
現在の中央大学附属中学校・高等学校のことだと思われます。今は小金井にありますが、当時は杉並にあったと思います。
2601とは何か §
表紙の2601は皇紀2601年で、昭和16年に当たります。
対米開戦直前の写真集と考えて良いと思います。
構成 §
【】内は書き込まれた文字
- 扉 【卒業記念第二十八回2601杉並中学校】 (左右逆向き、旧字)
- 校旗、校舎写真
- 【岩本校長】、教師一同写真
- 【昭和十五年度査閲】 (軍隊風写真)
- 写真4枚 続きと思われる 腹這になって銃を構える生徒達の写真もあり
- 写真4枚 続きと思われる 最後の写真は【講評】
- 【大島旅行】 【懐しい船路】 写真4枚 船旅の旅行の記録写真と思われる
- 【旅行】 写真4枚 続きと思われる
- 【学友】 みみずくの絵
- 【野球部】 写真3枚
- 【籠球部】 写真1枚 【園芸部】 写真1枚
- 【剣道部】 写真1枚 【卓球部】 写真1枚
- 【ハイキング部】 写真3枚
- 【相撲部】 写真3枚
- 【芸術部】 写真1枚 【弁論部】 写真1枚
- 不明集合写真1枚 エンサイクロペディア・ブリタニカ数冊の写真1枚
- 【思い出】 写真10枚 車内で寝ている軍人含む
- 寄せ書き写真1枚 木と鳥の写真1枚
- 生徒各自の顔写真6ページ
- 住所録
ここから読み取れること §
ここから読み取れることは以下の通り。
- 男子のみである
- 軍人が学校に来て、おままごとのような軍事教練を行っていたと思われる。模擬銃を持って全員で伏せさせたり、隊列を組ませたりしていたと思われる。最後に軍人の講評もあったようだ。軍人は学校に頻繁に来ていたような思われる。(しかし、おままごと軍事教練は特別なイベントの出来事で日常では無かったと思われる)
- 1ページに2部活の割合だが、希に1ページに1部活のものがある。野球部、相撲部、ハイキング部である。過去に戦時中の相撲も掲載する野球雑誌の付録のハイキング冊子を入手したこともあるので、おそらくこの3つがこの当時注目されるスポーツだったと考えて良いだろう。
- ハイキング部は山の写真も掲載しており、ハイキングと登山の境界は曖昧だと思われる
感想 §
こういう写真集には日常の写真はあまり乗らない。旅行やイベントなどの特別な写真が主題となる。であるから、軍人の写真や軍事教練的な写真が乗るのは、それが特別感のあるものだったからだろうと推定する。要するに学校からみんなで行くスキー教室のようなものだろう。スキー板をレンタルするように模擬銃を貸与されて、それでスキーの練習をしていて雪上に転ぶように地面に伏せて模擬銃を構えたのではないだろうか。
もう1つ収穫だったのは、【ハイキング部】が存在し、かつ、扱いが大きかったことも発見だ。戦時下のハイキング研究の一助になった。また、相撲と野球の扱いの大きさも特筆すべきものだった。戦時下で野球は用語を奪われていくか野球人気は戦前から高かったのだ。しかし、ジャイアンツとプロ野球人気は戦後のことになることは、紅梅キャラメルの研究で分かっている。紅梅キャラメルが売れた理由は【巨人選手のカードが入っているから】ではなく、【カードを集めるともらえる景品】にあったからだ。
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