一つ気付いたのでメモ。
【萌えの語源は恐竜惑星の鷲沢萌】という説があります。発信源はオタク学入門 (岡田斗司夫) とされます。
この説は2つの理由により否定されています。(当時のスタッフもファンも否定しています)
- 恐竜惑星の萌に鷲沢という性は設定されていない
- 恐竜惑星のファン層が【萌え】という言葉を多用したことが、パソコン通信の過去ログなどで確認できない
しかしながら、【萌えの語源は恐竜惑星の鷲沢萌】説は非常に多くの媒体が広めてしまい、何度否定しても蘇るゾンビのような解釈として長らく君臨していました。
なぜ大手のメディアまで確認できない説を無批判に流布したのか。
おそらく、以下の点が理由ではないかと推測します。
- 岡田斗司夫はオタクのキング、オタキングとしてオタク達から尊敬を集めていると思われた (実際はただの自称)
- 東京大学教養学部「オタク文化論」ゼミ講師という肩書きから記述には最高学府による学問的な裏付けがあるように錯覚された
実はこのことは以下のように一般化できます。
- 自信たっぷりに自称すればどれほど中味がなくてもそのような人物と受け止めてくれる人はけっこう多い
- 東大などの肩書きがあれば、それだけで一定の信用を得られる
- 以上、2つの条件が揃うと偽史を社会に広めるのはわりと簡単
実はこの特徴は昨今の歴史修正主義と相似であることに気付きました。
自信たっぷりに専門家を自称し、大学などの肩書きを背景にマスコミに取り入って広めてしまえば、どんな偽史でも思いのままに広めることができます。
たとえ、文献をちょっと調べただけで露呈するような嘘でも世間の人間はそもそも文献も見ないし裏付け調査もしません。
そして、信じた人が一定数を超えればそれは社会の常識となって、容易には覆せません。
結論 §
オタク学入門は割とトンデモ本であって、中味はけっこうオタク達から馬鹿にされていたが、なぜかこれが正しいオタク史、優れたオタク論として、いつの間にかオタク達にすらフィードバックされてオタク学入門信者のオタク達を産んだ感があるが、歴史修正主義も同様であろう。そんなの嘘に決まってるから放っておこう……と言っているうちに社会に広まって定着している感じであろう。
ただし、それには「根拠」が存在しないので、時間が経過して多くの人の印象が弱まってしまうと消えてしまう性質の定着だろう。