大間抜けなことに、徒歩圏内でこのような特別展が行われていることを昨日まで知りませんでした。
しかも、期日は今日まで。
会場等のフォーマットは、おそらく成功したであろう、以前足を運んだ「伊能図の世界 あるく はかる つくる －伊能忠敬の日本図展－」を踏襲しているようです。
体育館の床一面の伊能図の代わりに、太平洋周辺のランドサット画像がありました。ちょっと本筋と離れるものの、無関係とは言えないところが上手いチョイスでしょう。
「地図と写真で見る日本の空襲」 §
実は、最近の戦艦大和ブームというのは気持ちが悪いと思っています。戦争や戦艦大和の沖縄特攻が美化された悲劇としてもてはやされているようなところがあると思います。悲劇は甘美な快楽であり、それに耽溺する趣味があることは分かるにせよ、我々日本人の祖先が生身の身体で体験したリアルな出来事を、そのような趣味の手段として全日本的に使ってしまうのは、我々自身の判断力を狂わせる高いリスクを持つという意味で、よろしくないと思うわけです。
念のために言えばよろしくないというのは、理屈に合わないとか、かくあるべきという話ではなく、痛いしっぺ返しを食う可能性はいやだなぁ、という話です。しっぺ返しは日本人全員に跳ね返ってくるから、そのときには私も一緒に痛い目に遭うのですよ。
さて、そういう観点でこの特別展を見ていて、地図資料と航空写真をベースに淡々と空襲についての展示が続くのを見て、ちょっと大和ブームに近い感覚を感じました。そこには、苦闘する生身の人間の存在感が希薄でありすぎます。
しかし、戦後、アメリカのカメラマンが撮影した日本の写真とそれに添えられた言葉で納得しました。そこには、確かに人間が写っているし、きれいな悲劇では済まされない問題の深刻さがにじみ出ています。もちろん、それを受け止める感性がなければ何を展示しても無駄ということはあるでしょうが、少なくともバランスを取ろうという意志の存在が感じられたことは好感します。
ちなみに、航空写真もけっこう怖く、インパクトがありました。下方を別のB-29が飛んでいる写真などはかわいい方で、いままさに落下中の爆弾群が写っている写真はかなり怖いです。さらに、爆撃前と爆撃後と対比する写真などは、本当に町がきれいさっぱり消えている要素が分かって、これが自分の家だったらと思うと本当に怖いものがあります。さらに原爆になると、1発で町が丸ごと消えている状況がはっきり見えます。
「豊川海軍工廠展」 §
こちらの方は、銃弾などを生産していた海軍の施設が生まれてから消えるまでの様々な資料が展示されていました。
しかし、愛知県の施設に関する展示をなぜ下高井戸の日大文理学部で行ったのでしょう?
その理由は、実際に見に行って良く分かりました。つまり、日大文理学部(当時は日大予科)の学生がそこに労働にかり出され、空襲で犠牲になっているからなのですね。なるほど、地理的に離れていても、そのような縁があるのかと納得しました。
紙資料、写真の他、実際に製造されていた銃弾なども展示してあったので良く分かりました。
本来は、そちらの地元の方で行われた展示のようで、それがこちらでも行われたようです。こうして近くに来てくれると楽に見られるので良いですね。
