2010年04月14日
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戦争論とヤマト

Written By: トーノZERO連絡先

 一般論で言えば、戦争を行う場合、意図を秘匿することは重要です。相手が待ちかまえていたら損害が増えるからです。これは戦略レベルでも戦術レベルでも同じことです。

 だから、敵より先に発見し、敵より先に攻撃し、撃破してしまうことも重要です。

 事前に宣言してから攻めてくる敵などありはしない、ということです。

 それでは困るので、宣戦布告を必要とする、というような国際法があるわけですが、当然異星人がそれを守るわけがありません。

 従って、多くのヤマトの敵は地球を奇襲します。当然の成り行きです。

奇襲の前段階 §

 まずたいていの場合、戦争とは武器を持った者がその場の思いつきで隣人を襲う行為ではありません。従って、いかなる奇襲もきまぐれではなく、周到な計画性が存在します。それを秘匿するから奇襲になるのであって、気まぐれではありません。

 たとえば復活編では、まず地球抜きで勢力の糾合が行われ、地球抜きで地球を悪と断じた決定を下します。つまり、当事者に秘匿された多数派工作が行われています。ヤマトの勝利とは、この多数派工作の切り崩しなくしてはあり得なかったことも事実です。

その戦争は本当に必要か? §

 実は戦争の中には「そもそもやる必要がなかった」ものが珍しくありません。

 ヤマト世界で言えば、「デスラーとの戦い」は本来不必要だったものです。デスラーは絶対に地球を必要としていたわけではなく、ヤマトはガミラスを死の星にする必要がなかったわけです。デスラーが必要としていたのは移住できる星であり、ヤマトが必要としていたのは放射能除去装置です。

 また、ヤマトIIIのヤマトがガルマンガミラスに捕獲されるまでの戦いは、すべてやる必要がなかったわけです。デスラーにはそういう戦争を行う意思はなく、地球側も移住できる惑星さえあれば良かったからです。

 つまり、最初から意味のない戦争が実際に行われることがあり、それに賛成する意味など無いわけです。

遭遇戦闘 §

 こうして見ていくと、「新たなる旅立ち」の特異性が目立ちます。これは、双方が計画無くして不意に遭遇した戦闘です。

 ここで、双方とも計画や情報を大幅に欠いているために「敵の過大評価」に陥り、戦闘のエスカレートが進みます。

 双方がすぐ出せる最強の兵器であるヤマトとゴルバを持ち出してデスラーまで命を差し出すぐらいのレベルまで進み、スターシャが命まで差し出してしまいますが、本来はそこまで行く事態とは思えません。単純にイスカンダリウムを巡る交渉が始まるぐらいでしょう。その後で、話がこじれて戦闘になるかもしれませんが、それは交渉がまとまらなかった後の話です。まだそこまで行く事態とは思えません。

クソでもくらえ! §

 結局、死んだガミラスを見てクソでも食らえと銃を投げた古代君も、ずっと戦いを続けます。軍艦を下りても海賊対策の武器を持った輸送船に乗っているし。

 つまり、戦争の悲惨さを知っているから戦争をしない、というのも「嘘くさい欺瞞」の一種に過ぎないということでしょう。悲惨であることを知った上で戦争をすることもある、というのが実際のことでしょう。

 であるからそこが苦悩であり、古代君がアマールに介入を決意するまでの「間」ということでしょう。

 ただし、これは避けられるなら避けた方が良い。あくまで避けられない場合に限られる話です。その可能性はゼロではないという話でしかありません。「隣国が軍事力を誇示したから我が国が攻められる可能性がある」と短絡して軍拡に走れと言う意味ではありません。むしろ、それこそが、たいていは「本当はやる必要のない戦争」をやる早道です。

補給線の問題 §

 ガミラスや白色彗星の問題は、地球が遠隔地でありすぎた、という点にあったとも言えます。つまり策源地から遠すぎ、予定外のことに迅速に対応するには不十分であったということです。だから、冥王星の前線基地を失うと戦線を後退せざるをえず、バルゼーが負ければ代わりに出す艦隊も手元にないということです。

 であるから、デスラーはバラン星基地を失うドメルの計画に同意を与えることができなかったわけですね。

独立戦争の問題 §

 戦争とは、当事者の双方にやる気と準備があって初めて成立します。しかし、ここに例外があります。武力で支配されている植民地のような存在は、実は準備無しで独立戦争が成立します。というのは、「支配者の支配下で整備され、訓練された現地人部隊」がそのまま寝返ることで、「反乱軍」が成立してしまうからです。実は、支配者側が双方をお膳立てしてしまうわけです。もちろん、反乱を抑止できる水準にするため、2流の軍隊を作ろうとすることは珍しくありませんが、これはしばしば失敗します。というのは、そういう戦争には外部に支援者が出てきて、劣勢を補ってしまうからです。これは、ボラー支配下のガルマン民族がデスラーの支援で独立を勝ち取った経緯そのものでしょう。単純に、デスラーが戦闘空母一隻で勝ち続けたという話ではなく、デスラーが開放した惑星のガルマン人がボラーの兵器を持って後に続いた可能性は十分にあり得ます。しかし、再整備されたガルマン・ガミラス軍はガミラス色が強くなってしまいます。

まとめ §

 というわけで、ヤマトを引き合いに出すだけでけっこうマジな戦争論ができてしまったりするわけですねぇ。うんうん。戦術面ではけっこう粗が目立つのですが、戦略規模になるとけっこういい話になってきます。

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