三代目明智小五郎に至る嗜好の系譜で以下ように書きました。
「だからポリマーが主役でホラマーは1回限りのネタってのがアニメの世界だとすれば、どうしても正統派のヒーローが主役に座り、ホラマー型はマイナーな脇役になる。しかし、一歩アニメの世界を抜け出せば、ホラマー型が主役に座れる世界もごろごろあるってことだ」
「なるほど。それが三代目明智小五郎ってことだね」
実はこの話題はダイレクトにヤマトに絡まります。
というのは、ヤマトは「ヒーロー不在」だからです。
たとえば、マジンガーZなら、ロボットに乗り込んで敵を倒して問題を解決する特定の人物が存在します。
しかし、ヤマトには存在しません。命令者と複数の遂行者がいて、作業を分担しないとヤマトは動きません。
だから、ヤマトのポジションとは、この「個人としてのヒーローの否定」そのものにつながり、同じ嗜好の系譜上にあると言えます。
オマケ §
「だからさ。ロボットアニメとヤマトの差はここにあるんだよ」
「というと?」
「全員が揃うと合体できて戦えてしまうのがロボットだとすると、ヤマトはそうではない」
「揃うだけじゃダメなの?」
「うん。まず沖田が命令して、徳川がエンジンを始動して島が操縦桿を引いてやっと古代はショックカノンを撃てるわけだ」
「なるほど」
「いくら、古代が粋がってガミラスめ、と憤って見せても彼だけでは戦えない」
「他の人の仕事に依存しないと、1発も撃てないわけだね」
「だから思い通りにならない他人に憤って喧嘩もするけれど、そこで成長していくわけだ」
「島も徳川に馬鹿野郎と言ってしまうしね」
「うん。島も徳川に依存しているんだ。エンジンが動かないといくら操縦桿を引いてもヤマトは動かない」
オマケ2 §
「ある意味で、ポリマーにホラマーのエピソードがあることは画期的だし、ヤマトにアナライザーや佐渡先生がいることもやはり画期的なんだと思う。でも、それはアニメを基準にした場合の話だ」
「というと?」
「加納一郎のユーモア小説や、松本零士の男おいどん系主人公など、別の世界に行けば彼らは主役になれる」
「そうか」
「でも、それでもアニメという基準で言えばきれい事ではない本音キャラが存在することはやはり画期的で大胆で素晴らしいことなんだ。おかげで、ヤマトが子供だましの嘘の話にならずに済んでいる」
「そうだね」
「ただ、アニメが成熟してくると、昭和アホ草紙あかぬけ一番!のような怪作も出てくる」
「ミラクルパワーを貰って正義のヒーローに変身しても覗きに使おうとする主人公だね」
「でもやはり異端だ」
「特撮で言うとシャンゼリオンだが、やはりこれも異端だね」
「闇の種を食べた速水克彦の肉体は、戦士として生まれ変わった。そして、梅干を食べることにより、その戦士としてのパワーが発現するのだ。闇の種に含有されていたダークグレタミン酸は、梅干に含まれる塩分と結合して、速水克彦の血液の中をかけ巡る。そして、血液の中で練られていた血の第一物質が、速水克彦の脂肪分によって分解され、タイロミンとデジタミンに分かれるのだ。一方デターミンとは、リンパ液に結合して、カチルダ酸とノバ粘液と、サルマドルとマグールトドータミンを作り出す。この際、ノバ粘液は太陽によって分解され消滅するが、その残滓がカチルダ酸に結びついて、核カチルダ酸に変化するのだ。そして、核カチルダ酸とサルマドンによって生成されたカスタノタンパク質により、速水克彦はザ・ブレイダーであった記憶をなくすのであった」
「いや、それシャンゼリオンじゃなくてブレイダーだから」
「てへ」
「知っているか。アギトがライダー版シャンゼと言われることもあるけど、やはりシャンゼは強烈だった」
「次の都知事選では黒岩省吾って書くよ」
「だからさ。そこから逆に考えてみよう」
「というと?」
「シャンゼリオン大好き、という状況から逆照射すると、実は人間くさい話が好きってことになって、どんどん変身とか合体とかヒーローから離れてしまうわけだ」
「なるほど」
「だから、マジンガーZには行かないでヤマトに行ってしまうわけだ」
「実写だと戦隊に行かずにBD7の少年探偵団とか10-4 10-10に行ってしまうわけだね」
「なるほど」
「コミックのいちばん古いマジンガーZになると、神にも悪魔にもなれる力の象徴としてのマジンガーZなのでむしろ評価が高いんだけどね」