「というわけで、アリエッティ見たよ」
「これヤマトの感想じゃないの?」
「ヤマトの感想だ」
「意味わかんないよ」
「だからさ。アリエッティとヤマト復活編は似ていると思ったのだよ」
「ええっ? 緑も美しい綺麗なジブリアニメと、宇宙でドンパチするアニメが似ているだって?」
「だからさ。両方とも滅びの作品なんだよ。安住の地を追われる、というテーマが似ているんだよ」
「えっ?」
「公開時期には約半年の差があるけど、映画は作るために時間が掛かるから、この違いは誤差みたいなものだろう。とすれば、同じ日本の社会に対して、滅びを突きつけることに意味があると思ったのだろう」
「でも、右翼っぽい感じと、左翼っぽい感じで水と油っぽい気もするけど」
「反社会的という意味では同じだ。豚は政府に逆らうが、古代君もやはり政府に逆らうタイプだ。そもそも、アマール内戦に介入してSUSと戦ってしまうのも、政府の指示に逆らう行為だしね」
「というか、そういう込み入った事情だと認識していなかったのじゃないか?」
「そうだ。命令を受けていざ行ってみると言われた状況とまるで違うから、独自に行動するしかない。よくある話だ」
「それを反社会的というのかい?」
「あくまで指示を待つ指示待ち人間になればそうでもない。しかし、自分で判断して理想に殉じるのは反社会的だ」
「豚もそうか」
「ハウルもな」
「王様の呼び出しも蹴ったしな」
「だからさ。方法論はまるで違うけど、今の日本社会は何かおかしいという疑問があって、何かをしなくてはいけないという気持ちがあって、滅び、安住の地を追われるという要素に意図せずして結実しているのだろうと思うのだ。他に、企画そのものは古いという要素も似てるし」
「それで?」
「でも僅かでもヤマト復活編の方が早いから、見た側の感想としてはアリエッティって復活編みたい、と思ってしまう」
「それから?」
「しかし、滅びの臭いをかぎ取っていない人たちも多いので、やはりヤマトとジブリは同じ少数派の仲間にカテゴライズしても良いのではないか」
「それは大胆だね」
「でも、今の世の中の多数派に、くだらないぜと異論を叩き付けたい気持ちは同じだろう」
「君もそうだね」
「うん。こんなくだらない世の中に誰がした、と文句を言いたいが、そもそもくだらない世の中になったという認識が多数派には無いので糾弾も肩すかしさ」
「ははは。だからアドリア海の秘密基地で赤い飛行機飛ばすような生活してるのか」
「地球を救った大英雄なのに、娘から文句言われつつ家族を放り出して輸送船で地味な仕事をしてるようなものさ」