「とつぜん閃いた」
「何?」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトの場合、コスモゼロのゼロは零戦のゼロじゃない。零式水上観測機だったのだ」
「ええっ? それはどうして?」
「正確に言えば、コスモタイガーも含めて、ということだ」
「どういうこと?」
「SPACE BATTLESHIP ヤマト世界の地球艦載機の任務は、基本的にターゲッティングで、たまに空戦だ」
「うん」
「ターゲッティングとは戦艦の主砲を命中させる仕事だとすれば、これは第2次大戦前夜の状況に当てはめると着弾観測にあたる」
「そのための艦載機が零式水上観測機ってことだね」
「しかも、零観の場合、敵機が邪魔しに来た場合を想定してある程度の空戦能力も与えられている」
「そうか。たまに空戦をすることも含めて零式水上観観測機と役割がだぶるのか」
「それだけじゃないぞ」
「なに?」
「戦艦大和が実際に搭載していた。零式三座水上偵察機と並んでね」
「な。なるほど」
「元ネタへの忠実度という意味では、零戦がヤマトに乗っていると考えるよりも、零観がヤマトに乗っていると考える方が自然だ」
「うーむ。奥が深い」
「そこから逆算して考えてみよう」
「うん」
「着弾観測とは落下した砲弾が遠いか近いか右か左かを報告する仕事だ」
「そうだね」
「でも、それじゃヤマト世界には通用しない」
「なぜ?」
「沖田艦は初弾で敵に命中させる必要があるからだ」
「そうか。当てたのに効果なしという演出のためだね」
「であるから、命中させるための艦載機の仕事は撃つ前に移動しなければならない」
「そうか。そこで出てくる代わりの仕事がターゲッティングか」
「そして、その役割はいわゆるロックオンとは違うものだ」
「そこに、ロックオンではないターゲッティングという仕事が生まれる必然性があるわけだね」
「考えていくと、かなり深いぞ、この映画の中身は」
オマケ §
「ついでに、趣旨は違うがヤマトがコスモゼロとコスモタイガーの2機種を載せる理由も分かる」
「なぜ?」
「戦艦大和も2機種載せてたんだよ。零式水上観測機と零式三座水上偵察機」
「なるほど……」
オマケ2枚羽 §
「しかし、ここで問題にされた零観。知らない人はどんな凄い機体だろうと思ったことだろう」
「零戦と比較されてるものね」
「まさか、複葉の下駄履きとは思うまい」
「ははは。操縦席むき出しだしね」
「でも制式採用されたのは皇紀2600年=昭和15年=西暦1940年で同じ世代の新鋭機なのだ」
「なのになぜ複葉なの?」
「任務を考えてごらん。長時間敵艦隊上空に滞空して着弾観測を行うとしても、敵艦隊はせいぜい30ノットつまり、時速数十キロ程度しか出ない」
「スピードは要らないってことだね」
「低速で長時間滞空し、敵機に絡まれたら小回りの利く機動性で空戦して蹴散らすという任務の性格からすれば、零戦と違って複葉で問題ない」
「零戦の任務は違うの?」
「零戦の任務は高速の爆撃機に随行して護衛することだから、速度の基準は敵艦隊ではなく味方爆撃機で、基準が大幅に違う」
「でも、爆撃機って重くて遅いのじゃないの?」
「とんでもない。一時期は爆撃機が戦闘で追いつけないほど高速になって、戦闘機無用論まで飛び出したこともあるんだぜ。零戦とはその後の、やっぱり戦闘機は必要だよねという時代に生まれたのだ」
「だから、スピードと航続距離が必須になって、スマートな機体になったわけだね」
「もっとも、ヨーロッパの機体と比較すると翼が大きすぎてあまりスマートとも言えない。翼が小さくなった32型以降でやっと洗練されてくる感じだ」
オマケIII §
「あとで気付いた」
「なに?」
「アニメのコスモゼロは定員1~2名だが基本は1名だ」
「うん」
「ところが、SPACE BATTLESHIP ヤマトのコスモゼロはアナライザーを数に入れると2名が基本となる」
「ええっ?」
「そして、零戦なら1人だが零観なら2名だ」
「そこでも、類似性があるわけだね」
「更に言えば、ホバリングモードの存在。これは低速で滞空できる複葉機の特徴と見ることができるのかもしれない」
「そこまで行くと良く分からないけどね」
「そういう意味では最初から良く分からないけどね」