てさんよりメッセージを頂きました。
先日、友人と呑んでいる時、YAMATOが話題になりました。
それは、旧軍、自衛隊には、軍歌があるのに、YAMATO世代には、軍歌が無い。と言う事でした。
その事で3時間位呑みました。
この視点って、議論された事無いのでは?思いメールしました。
さて、問題は以下の4点です。
- 軍歌とはそもそも何か
- ヤマトに軍歌はあるか
- ヤマトファンに軍歌はあるか
- ヤマト世代に軍歌はあるか
軍歌とはそもそも何か §
WikiPediaより
軍歌(ぐんか)とは、広義の意味では主に軍隊内で士気を高めるために作られた歌のこと。歴史的な出来事を扱ったものから、戦死した犠牲者を悼むことを目的とするものまで内容は様々である。
この定義によると、厳密には軍に分類されない自衛隊に軍歌は無いことになります。この点は同ページでは以下のように記述されています。
憲法上で軍隊の保有が禁止されている事から、公式には自衛隊は軍隊ではないとされるため、戦後新たに自衛隊で作られた歌も軍歌ではなく、正式には隊歌と呼ばれる。
つまり、ほぼ軍歌相当であろうとも軍歌扱いはされないことになります。グレーゾーンです。
ヤマトに軍歌はあるか §
この問題は2つに分けられます。
- 既存の軍歌をフィルム内で使用しているか
- ヤマト世界固有の軍歌はあり得るか
前者は、軍艦マーチを使用した例がありますが、大激論を巻き起こしており、このような用法に肯定的な関係者と否定的な関係者が拮抗したことを意味します。しかし、議論に意味があったのかと言えば、再放送では軍艦マーチ入りも流されて特に問題になっておらず、あまり意味が無かったと言えます。
しかし、軍歌忌避という傾向はヤマトには顕著にあり、歌をみんなで歌うシーンはほぼ存在しないと思います。それどころか、軍歌ではない北上夜曲までボーカル無し。軍艦マーチもボーカル無し。
実は歌そのものが忌避されているとも言えます。(主題歌は忌避されていないが、明瞭に分離されている)
軍歌の定義からすると、地球防衛軍には軍歌があってもおかしくないことになります。しかし、「歌の忌避」という特徴から出番は無いと思われます。
ヤマトファンに軍歌はあるか §
軍歌の定義からすると、ヤマトファンの集団は(たとえ万一軍人を含んでいたとしても)軍隊ではないので、この集団の軍歌は存在しないことになります。
ヤマト世代に軍歌はあるか §
ヤマトファンであることを横に置いて世代的な視点で見ると、アニメ内における歌の変遷は以下のようになりそうです。
- 初期のアニメにおいては、ミュージカル的に映画内で歌うシーンが定番的に存在した
- 劇中で歌うシーンが消える (ヤマトもファーストガンダムも該当する)
- 太陽の牙ダグラムであたりで軍歌を歌う描写が登場する (主題歌ではない挿入歌で、作中の登場人物達が歌う歌が存在する)。マクロス、モスピーダ、メガゾーン23になると、完全にアニメに作中の歌が戻ってくる
実際、たとえばマクロスのミンメイの「私の彼はパイロット」などは、実質的に軍歌相当でしょう。メガゾーン23のTOMORROW BLUESもそう。
つまり、以下のようにまとめられます。
- 前期(60年代ぐらい) 従軍経験者が多く現役で生きていて、軍歌も現役であった世代。歌も歌われた
- 中期(70年代ぐらい) 軍歌も歌も乏しい時代 (歌唱低迷期)
- 後期(80年代ぐらい) 虚構の軍歌が存在する時代
まとめ §
というわけで、やはりヤマト世代には軍歌は無さそうな感じですねえ。それどころか、歌すらも忌避されている感じです。たとえば、ヤマト完結編は大量の挿入歌があるにも関わらず、終盤にまとめてミュージックビデオ風に使われます。
特にヤマトでは、勇壮な主題歌をバックに派手に戦う主役という『よくある演出』もありません。
だから、マクロス的な「歌を兵器に使う」という発想は実は「再発見」でしかないわけですね。けして画期的な発明ではないわけです。(だからフラッシュバック2012のバックは実写映像が入ってくる。作品の本質そのものが過去のリピートだから)
オマケ §
むむ。そうか。だからその潮流の揺れ戻しで、ハーロックの挿入歌として「さすらいの舟唄」とか「おれたちゃ宇宙の海賊さ スペースウルフ小唄」のような軍歌っぽいテイストの歌が入ってくるし、999の劇場版も劇中でリューズが歌ってみんなが泣くわけだ。
オマケ2 §
「しかし、更に考えると怖くなるぞ」
「なぜ怖くなるの?」
「実は、『言葉で説明するのは野暮だ』という思想が背景にありそうな気がするからだ」
「えっ?」
「だから、ボーカルは抜かれる。軍艦マーチが良い悪いの議論はあるが、そもそもボーカル抜きだ」
「批判されたからボーカルを抜いたわけではないってことだね」
「ということは、実は歌がアニメに戻ってくる理由は、野暮と分かっていても語らないと分かって貰えないという現実もあったからではないか」
「そうなの?」
「実際は語ってすら分かって貰えなかったと思うがな」
「悲惨だ」
「しょせんアニメは記号。実体験じゃないので、通じないときには徹底的に通じないものさ」
「記号か」
「さてそこで問題は、宮崎駿のような男までなぜ映画の中でさくらんぼの実る頃をジーナに歌わせたのかだ」
「分かりやすくするため?」
「そうじゃない。歴史的な歌を持ち込むことで、実はバックグラウンドの知識の有無で印象が変わってしまうように凝ったトラップが仕込まれていたのだ」
「ひぇ~」
「こういう逆転を入れるのも一種の『野暮さ回避』なんだろうな」
「その野暮さが行き着き先ってなんだよ」
「萌えアニメと称するアニメの粗悪な模造品の氾濫さ」
「ええっ?」
「客に伝わらないなら、アニメの方を客の身の丈に合わせてしまえという貧困な発想だろう」
「ぎゃふん」
オマケIII §
「でも音楽センスは宮崎駿より、高畑勲の方がいい」
「たとえば?」
「名探偵ホームズの劇場版で、大英帝国の軍艦の砲撃シーンで軍艦マーチを流してしまう」
「ははは、話題が軍艦マーチに戻ったね」
「というわけで、今日はオシマイ」
「軍艦マーチしか出てこないね」
「そりゃそうだ。ヤマトで軍歌と言ったらそれしか思い浮かばない」