「青山のカフェクルー、今日開店だ」
「どうだった?」
「話せば長い」
「そんなに話題豊富なのか?」
「まあな」
「先に結論だけ教えてくれよ」
「まさにヤマト秘密基地だ」
「そんなにマニアックなの?」
「いや。そうじゃない。偽装作戦なんだよ。サンダーバード風に言えば」
「は?」
「だから、青山にあっておかしくないオシャレなカフェなんだよ」
「なのに濃いの?」
「そうだ」
「意味が分からないな。詳しく頼む」
訪問 §
「地下鉄の青山一丁目で降りて、5番出口から出た。この辺のはずだが……と歩いていて、ふと振り返ると『カフェオープン』の文字が。しかし、どこにもヤマトの文字も見えないし、クルーの文字も見えない。とても綺麗でオシャレでヤマト関係とは思えない普通の店であった」
「なんだ、別の店もオープンだったのか。奇遇だね」
「と思って中をよく見ると、店内に巨大なヤマトがちらりと見えた……」
「えっ?」
「これみよがしにヤマトとかクルーとかそんな言葉は出てこないが、ここがクルーカフェであったのだ」
「まさか」
「近づいたら、エナジオの花輪が飾られていた」
「エナジオか! でも、よく見ないと分からない訳だね?」
「うん。実際、以下のような特徴があり、偽装は完璧さ」
- 表通りから離れていないが少し奧に入っている。表通りからは直接見えない
- 見ても普通の店のように見える。うっかりすると見過ごして通り過ぎてしまう
- 普通の人が単に『装飾がヤマトである』普通のカフェだと思って入っても違和感が無い
「3点目が分からないな。巨大なヤマトがあっても、普通の人が入るだろうか?」
「鉄道マニアの店主が鉄道グッズや鉄道模型を展示した飲食店もある。そういうノリだとしても違和感が無い」
「なるほど……」
「だからさ。普通の人もおそらく客として期待できる」
「それってどういうこと?」
「つまりさ。ゴレンジャーの秘密基地はスナックゴンなんだよ。そのノリと同じ」
「キレンジャーがカレーを大盛で頼む店が実は……というわけだね」
メニュー §
「メニューはどうだい?」
「ランチタイムだったようで、メニューは3つほどのセットがあった」
「そうか」
「内容はパスタだな」
「なるほど。とても普通だね」
「値段もやや高いとはいえ、青山という立地を考えれば高すぎるわけでも無い」
「普通ってことだね」
内装 §
「内装は?」
「展示物を除き、内装は普通のオシャレな店だ。入って恥ずかしいことはない」
「別に宇宙っぽいとか、未来っぽいわけではないのだね」
「そうだ」
「で、展示物は?」
「絵と模型だな」
「模型は5mヤマト?」
「小さい模型の展示もあった。それから絵は、復活編の古代の絵だとか、額に入ったヤマト関係の絵とかだな」
「なるほど」
5mヤマト §
「それで5mヤマトは?」
「おそらく、復活編のヤマトだな」
「なぜ復活編のヤマトだと分かる?」
「側面に錨のマークがある。それから、個人的に思う復活編のヤマトの特徴はパルスレーザーが大きめに感じられることだ。模型もやや大きめに思えた。あくまで個人的な感覚だけどな」
「そうか」
「あと、艦尾が少し痩せすぎという気もしたが、そのへんは感覚の問題かもしれない」
「なぜ?」
「ヤマトは前と後ろを強調したパースの絵があるので、艦首艦尾は実際よりも大きく印象が残っている可能性がある」
「なるほど」
「それから1つだけチョンボ」
「なんだい?」
「第3艦橋がグレーだった」
「ぎゃふん」
「でも昔ながらのヤマトファンならめげない」
「どうして?」
「艦首だけ赤い塗りミスのカットとか実際のフィルムにあったからだ」
「ぎゃふん」
「実際に色を塗ったのはヤマトファンでも何でもない人だね」
「そこは残念だね」
「今からでも遅くはない。第3艦橋は赤く塗れ!」
「そんなどっかの海洋っぽい模型店の偉い人みたいなことを言って」
「ヤマトは疑似海洋ものだから、それで丁度いい」
「ぎゃふん」
2011/09/22追記。復活編の第3艦橋はグレーなので、これで正しいという指摘をKeNJIさまより頂きました。
その他の模型 §
「他には、メカコレの艦隊とか、いくつものヤマト模型などが展示してあった。一部は、ホビージャパンの作例とかだったようだ」
「そうか」
「しかし、メカコレは凄かった」
「どうして?」
「見ていると、メカコレになってないはずのブルーノアとか、スーパーアンドロメダまで一緒に並んでいるんだよ」
「えっ?」
「よく見ると説明にメカコレ+フルスクラッチと書いてある」
「フルスクラッチで作ったのか!」
「よくやるよ」
その他 §
「実は隣の席の客が怒っていた。あまり注意して見ていなかったのだが、どうも、自分より先に待っていたのに料理がいつまでも出ずに怒ってしまったようだ」
「えっ?」
「こっちは、あまりに素早く料理が出たので喜んで食べてしまったが、もしかしたらスタッフが間違えてこっち持ってきてしまったのかも知れない。もしそうなら悪いことをした。まあ、ウェイターの問題でおいらのせいではないのだが」
「店が間違えたってこと?」
「開店初日だ。システムに不備がある可能性もある。まあ、その辺はきちんと謝っていたのでよしとしよう」
「でもさ。君も隣の人より先に料理が来ておかしいとは思わなかったの?」
「実は、5mヤマトが真横から見える席に座って、そっちにずっと夢中で隣の席のことなど見ていなかったのだ」
「ぎゃふん」
まとめ §
「じゃあ、まとめるか」
「何をまとめるんだよ」
「この店は店内全部がヤマトという感じではない」
「普通のオシャレな青山の飲食店ってことだね」
「ポイントとなる装飾アイテムがヤマト関係であるというだけだ」
「5mヤマトとかメカコレの展示だね」
「それも押しつけがましくは無い。5mヤマトは存在感があるが、そこに置いてあるだけで客を圧迫するような存在でもない」
「昔ヤマト見たことあるんだ。ちょっと入って見ようか、という客でも普通に入れるわけだね」
「ヤマト見たことある客の連れのヤマト見たことない若者も、それほど違和感は無いわけだ」
「つまり、トレーシー島に偶然入り込んだ一般人がいても、彼はそこが国際救助隊の重要拠点だと気づかないで出て行けるわけだね」
「まあ、そういうことだ」
「よもや、ここがヤマトクルーの反撃のための拠点だとは思わせないわけだね」
「そうだ。横で何かひそひそ話しているのがヤマトクルーの小集団でもそんなことは気づかせない。そういう店だ」
「で、反撃って何に反撃するの?」
「……さあ」