「やっと予告通りに続けるぞ」
「先に書いたのはこっちなのにね」
「それを言うな」
本文 §
「1つ気づいてしまったのだ」
「何を?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトとコクリコ坂からは似ているのかもしれない」
「船が出てくるアニメだから?」
「それなら、ヤマトシリーズ全部が該当するわい」
「さらば限定……。降参だ。さらばと手を振るムードじゃないよ」
「まずコクリコ坂の方から見ていこう」
「それはなんだい?」
「吾朗監督が徹底的にレイアウトにこだわった」
ロマンアルバムp102より
レイアウトに関してはまず背景原図を吾朗さんがチェックして、その上で勝也さんが背景原図に合わせたパースでキャラクターを確認していました。
「なぜ?」
「ジブリのアニメーターは優秀だが、パターンにはまってぬるいレイアウトを描いていた。アニメでは通用してもその先では通用しない絵だ」
「えー」
「おっと、ダジャレだね」
「違うわい。でも、どういうこと?」
「だから、アニメにはアニメの描き方の型というものがある。対象を記号として描き落とすパターンだな。それに当てはめれば、いろいろなものを描ける。名作アニメだろうと、ロボットアニメだろうとな」
「そうか。そのパターンを踏襲する限りいくら題材が変化しても絵のインパクトは変わらないわけだね」
「そうだ。むしろ同じなら飽きられるのでインパクトは下がると思った方がいいな」
「それで、さらばは?」
「ここで湖川さんが怒っている」
animator interview 湖川友謙(4)古代の歯の裏とバッフ・クラン人の目より
湖川 (中略)僕がやった人物も酷かったですよ。実は、僕は『ヤマト』を終わったら辞めようと思ってたんですよ。思い出として『ヤマト』をやって、辞めようと思ってたんです。だけど、あんまり酷かったものだから……。だって、あれはアニメ界のベテラン勢揃いみたいな感じだったんです。だけど、開けてみたら、初作監でドキドキなんてものじゃなかったですからね。
小黒 (笑)。
湖川 「ふざけんじゃないよ」とか思って。こいつらがどこがベテランだとか思って、むかついてましたからね。
小黒 今の発言は、載せても大丈夫ですか。
湖川 ああ、いいですよ。(自分が不満だった事は)みんなが承知なんで。いや、ほんとにむかついてやってましたよ。思い出にしたいというのと別に、僕はベテランの人たちから何か刺激を受けて、もっとアニメを頑張りたいと思うのではないかという期待も、どこかにあったわけですからね。だけど、それどころじゃない、それと全く逆になっちゃいましたから。で、何ができるか分かんないけれども、俺がちょっとアニメを教えてやろうと思ったんです。それでビーボオーを設立したんですから。馬鹿ですね。
小黒 それがビーボオー設立の直接のきっかけなんですね。
湖川 『さらば』がきっかけですね。
「たぶん、吾朗監督もジブリのベテラン相手に『こいつらのどこがベテランだとか思って、むかついて』背景原図をチェックして信用できる腹心にキャラをチェックさせていたのだろうと思う」
「分かったぞ。つまり、さらばと手を振るムードじゃないんだ」
「そうだ。だからさ、今回フィーバーヤマト復活編のおかげで複数の劇場版ヤマトを見た結果分かった。さらばだけ絵が別格なんだ。絵の描き方の方法論そのものが違うんだ」
「えー」
「確かに永遠にもゴージャスだよ。イカルスの破片の数や動きも凄いし、サーシャの作画も力が入っている。中間補給基地攻撃も凄い。しかし、さらばの映像はそれとは全く異質の違う世界なんだ」
「もっといい?」
「いい悪いじゃ無い。もっと異質なんだ」
「うーむ」
「そういう意味で、コクリコ坂もジブリ映画としては絵が異質なんだ」
「アニメのレイアウトじゃないってことだね」
「そうだ」
「でもそれは重要?」
「そうだ。今やアニメの敵はライバルアニメじゃない。VFXを使用したアニメの実写化なのだ。アニメの絵はこんなもの、という常識が通用する相手じゃない」
「アニメも生き残りたければ、常識を突き破って先に行かねばならないわけだね」
「ああそうだ。実際おいらも、今いちばん見たいテレビ番組は妖怪人間ベムの実写リメイクと、実写ドラマそのものの南極大陸だからな。アニメ界にも危機感はあると思うのだが、なかなか常識は脱却できないようだ」
「アニメのヤマトはどう?」
「復活編は常識破壊に成功したと思う。問題意識の無い奴が『こんなのヤマトじゃない』と言うぐらいの場所に行けた」
「『こんなのヤマトじゃない』はこの場合、勲章ってことだね」
「誇っていいぞ」
「2199は?」
「これからの問題だな」