「1つ気づいた」
「何?」
「当初、小林と上条は仲が悪い。いきなり第1艦橋でいがみあう」
「そうだね」
「ところが、仲が悪いのに会議では一緒になって桜井を『商船学校』と呼んでいじめる」
「えー」
「小林と上条は仲良くなったわけではない。でも、桜井をいじめるときだけは息がピッタリ」
「それってどういうこと?」
「外敵が出現すると結束する、というよくあるパターンだろう」
「桜井は外敵なの?」
「桜井は古代の部下であって、軍人じゃないからな」
「輸送船ゆきから連れてきた古代の子飼いであって、艦長直属で立場が特別ってことだね」
「そこが軍人としては面白くないんだろう」
「大村も立場は桜井と同じじゃない?」
「大村には『生意気を言うな』と怒られると言い返せない怖さがある。年の功だな」
「年長の大村には言い返せないので、若い桜井いじめか」
「あと、桜井は最初から真帆とかなり連携して仕事をしているから、やっかまれている可能性もある。最初に女の園のECIに入って仕事をしていたし」
「そうだね」
「その上、アマールに実際に行ったことがあるのは桜井だけだ」
「結局、小林の代理でヤマトを操縦して男を見せるまでは、打ち解けないわけだね」
「同じ船で同じ釜の飯を食って一緒に戦った以上、既に戦友だからな」
「桜井は別に武器を撃ったわけじゃないよ」
「直接撃つ撃たないは問題じゃない。戦場から逃げないで職務を全うしたことに意味がある」
オマケ §
「逆に考えると、アマールは、人類の移住先として発見された星ではなく、それ以前から地球人に知られていた星ということになる」
「そうだね」
「しかも、練習航海で行く先ということは、それほど危険ではない安全が確認された場所ということになる」
「でも、実際はSUSに牛耳られて危ない場所じゃん」
「そうだ。実は大ウルップ星間連合と地球の境界線に位置していて、非常に危うい舵取りをしていたことが推測される」
「それってどういう意味?」
「たとえば、A国の官吏が来ると迎え入れて尊重し、B国の官吏が来ると迎え入れて尊重するような土地もあったわけだ。帰属は曖昧だが、立場が弱い土地はそういう態度を取らねばならないこともある」
「アマールはずるいって言い方もできるんじゃ?」
「そうだね。人類の移住先とするにはあまりにもリスキーだけど、その情報は伏せられていたのだ。優柔不断で流されやすいイリア女王が、状況に流されすぎて引き返せないところに流されてしまったのだろう」
「でも、最後は戦いを決意したよ」
「アマール内部でのSUSへの不満は高まっていたのだろう。イリア女王の考えとは別にね。そこで、イリア女王の失策でSUSに付け入る隙を与えてしまった。その結果、不満が爆発したわけだね」
「でもさ。不満ってエトスもそうじゃない?」
「厳密に言えば、おそらく程度の差こそあれ、大ウルップ星間連合のSUS以外の全所属国家がSUSと手を切りたがっていたと思う。実際、SUSが味方殺しをしたあと、残った同盟国の艦隊も帰ってしまうわけだし」
「大義名分が立つなら、どの国も帰りたいわけだね」
「味方殺しは、事実上の同盟破棄だ。大義名分が立つ」
「そうか」
「そこから考えれば、SUSと地球を両天秤にかけたアマールの方針も理解可能だ。SUSと縁を切る契機を与えてくれる可能性を地球に見たのだろう」
オマケ2 §
「しかし、ヤマトと共に戦おうと叫んだアマール市民が多数派であったとは思えない。大多数は、SUSの報復を引き起こした地球を憎んでいたのでは無いか、と思える」
「でも女王はヤマトと共に戦うことを決意してしまったよ」
「王宮に集まった小数の国民の叫びに流されてしまったのだ」
オマケ88 §
「優柔不断なイリア王女など、騙して傭兵部隊に売ってしまえ。王族だから、飛行機ぐらい操縦できるだろう。航空傭兵に騙して仕立ててしまえ」
「オチが見えた」
「なんだって?」
「イリア88」