「最初に質問する」
「うん」
「戦艦大和を二晩で作るなんてムチャだ」
「自分もそう思った」
「ならどうして」
「小林誠さんに、二日で作れと煽られてやったら本当にできた」
「それで?」
「その時にいろいろと工程を簡素化する作業のアイデアが出てきたので、それを検証するためにもう一隻作ったら、無理なく二晩でできた」
「だから本にしたわけだね」
「そうだ」
「ポイントは何?」
「無理をしないことだ」
「早く作ることじゃないの?」
「そうだ。無理をしない工法の確立が実はメインテーマで、スピードはあとから付いてきた」
「たとえば?」
「たとえば、小さい部品は取り付けに難儀したり紛失したりしやすい。ならば大きいまま扱えばいいじゃないか、というアイデアがある」
「ちょっとまて! 同じキットなら部品のサイズは同じだろう!」
「それに対処するのがアイデアだよ。そういうノウハウが書いてある」
「プロから、そんなの当たり前だ、という意見が付いたらどうする?」
「当たり前かもしれないよ」
「じゃあ、この本は何なんだよ」
「プロが書いた2000円の入門書と200円のお手軽素人本は一緒にできないよ」
まとめ §
「じゃあ、この本は誰に買って欲しいわけ?」
「艦これブームで軍艦に興味を持ち始めた新人層かな。もし、この本が売れるなら、良いことだ。艦これブームを否定なんかしない」
「もっと分かりやすく言うと?」
「完成時の品質などお構いなしに、ともかくキットを迅速に消費する方法について書いた本だ」
「コンテストに入賞できるぐらい品質を上げたい人はどうするんだよ」
「どのみち素人がいきなり入賞できる作品は作れないので、意識するだけ意味がない。どんな本を読んでも作れない」
「君自身が目指す道はなんだい?」
「いちばん下手なモデラー!」
「は?」
「当然だ。読者は『著者よりもっと上手く作れる』と思ってチャレンジすべきなのだ。上手すぎて真似ができずに手が止まったら意味が無い」
「手が止まったらキットが消化できないわけだね」